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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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精霊のためのお茶をどうぞ

 そこへ団長様が声をかけてきた。


「ユラ」


「はい団長様」


 じわじわとお茶に魔力を注ぎつつ応じる。


「願う内容は決まったのか?」


「……まだどうしていいのか。お茶の用意をしていたら、さっきよりは落ち着いてきましたけれど」


 自分の選択で、世界の行く末が決まる。

 うっかりなお願いにすると、恒久的なものではなくなってしまうのだ。考えても考えても正解がわからない。


「決められないのなら、魔女のスキルを消滅させてもいい。もしくは人の魔力量は二千までと決める方法もある」


 私は目を見開いた。


「確かに魔力量制限があれば、魔女は発生しようがないですよね。でも大勢集めて対抗してきたら、誰もその集団を倒せなくなりそうで」


「問題ない。術師が二十人三十人といても対処の方法がある。精霊も竜も影響されない。火竜には住処を何度も奪われたくないだろうと言えば協力するだろうし」


「……我を利用しようというのか? まぁ、何度も住処を追われるのは噴飯ものだが」


 火竜さんがうなりながら割り込む。

 でもやらないとは言わないので、きっと火竜さんは阻止してくれるだろう。


「何より私には精霊王の剣がある。精霊達を操って来たとしても従え、相手を撃破することはできる。そうして聖域を守っても構わない」


「団長様……」


 魔女になっちゃったから、自分がなんとかするしかないと思っていた私は、責任と言う重石を団長様にひょいと奪われて、ぼうぜんとして……。

 その直後から喜びが湧き上がって、どうしていいのかわからなくなる。


 そう言ってくれることが、ものすごくうれしかった。

 ただ、この魔力量に限界を設ける方法では、団長様が全てを背負うことになってしまう。


「でも団長様には、何か問題があったんじゃないですか? ソラがさっき……」


 ソラに『辛い思いをさせた』『もうすぐ、君も解放されるから』と言われていたはずだ。団長様は人知れず、精霊王の剣に関することで人生を拘束されている部分があったのだと思う。

 せっかく解放されるとソラが言っていたのに、他の問題を背負うことになるのでは。

 しかし団長様は微笑んだ。


「お前が気にすることはない。私にとってはどれも問題にならないだろう。あの精霊王が解放されると言っている事がもし私の思う通りなら、私の望んだ自由は手に入る」


「一体どんな望みなんですか?」


 知らないからこそ、団長様が無理をしているのではないかと気になった。


「この一件が終わったらお前に話す。だから、お前もあの精霊王とどうして関わることになったのか、全て話せ」


「う……」


 交換条件だった! でもソラのことを全て話すって、前世のことも関わるから嫌なんですが!?

 と思ったところで、お茶のポットからふわっと光の粒子が立ち昇る。


「ぴかぴか……んー、これぐらいかな」


 合計で一万ほど注いでみた。


「これで足りる?」


 不安になって尋ねると、少し離れた場所で私を見守っていたソラがうなずく。


「十分だよ。君と僕の間に、火竜と君のような繋がりをつくるためだから」


「繋がりを?」


「僕が飲めばわかるよ」


 どういう効果が出るのかわからないが、とにかくお茶を出すことにする。

 国境の砦でお茶のカップが出せないと言われた時のために用意してた茶器を、池の側にシートを置いて並べてみる。


 五つのカップにお茶を淹れ、そこに砂糖漬けにしたスミレをぽんと加えると、お茶からふわりと漂っていた金の光が、青白い月の光みたいに変わる。

 光の強さも増して、紅茶を淹れたカップが白くぼんやり輝いて見えたほど。

 そしてチェックしてみると、お茶の名前が書かれていた。


《精霊の紅茶:魔力の回路を開く。スキル練度+100》


 精霊達が、まず置かれた四つのカップに寄って来た。


「お花」


「甘いお茶」


 そう言いながら喜ぶのは、ゴブリン姿の精霊達だ。

 彼らがカップの側で踊ると、少しずつ紅茶の量が減っていく。

 それに比例して……。


「は!?」


 精霊の姿がブンっとぶれて二体に。さらに四体に、八体に……と増えて行く。

 増えながら精霊は舞い上がり、泉の上で楽し気に浮いていた。

 よくわからないけど、たぶんこれでいいのだろう。


「ソラ」


 私は紅茶のカップをソラに差し出した。

 ソラは受け取ると、静かに紅茶に口をつける。


 ……ずっとお菓子しか食べなかったソラが、紅茶を飲んでる。


 その光景に、なんだか感慨深いものを感じた。

 そしてソラの喉を紅茶が一口ずつ通り抜けて行く度に、私の中にふわっと温かさが宿っていく気がした。

 ふっと思いついてステータス画面を見れば、ふわりふわりと私のMPが増えていっている。


 十五万、十六、十七……二十万。

 そこで止まったのと同時に、ソラが紅茶を飲み切った。

 その時、ふっとステータスの端で光るチャンネルがあった。


「チャンネルE……?」


 今まで反応しなかったチャンネルEが点灯している。


「それは神を呼ぶときに使うんだ」


 神?

 Eって神様って一体……と思った私は、はっと気づいた。

 そうか。そういうことだ。


 ソラは私が理解したことを察して、続いて説明する。


「でもそのチャンネルは、今すぐ使えない。あの木に僕が、魔力を補充してやらなくてはならないから」


 指さしたのは、泉の中に立つ白い木だ。


「あれは……?」


「木であって木ではないものだよ、ユラ。神とつながっている場所なんだ」


「神と……」


「神と対話をするためには、あの木にもっと魔力が必要なんだ。だから神呼びをする人間は、僕を呼び出さなくてはならない」


「精霊王じゃなければ、あの木に魔力を与えられないのね?」


「そういうことだよ」


 ソラがうなずいたその時――空気が振動した。

 冷たい風が吹き込み、肌が泡立つ。

 団長様とフレイさん、イーヴァルさんが、聖域への道を睨みながら私とソラを庇うように前に出た。


「ああ、来たようだ。もう一人の魔女と、彼が」


「メイア嬢と彼……。メイア嬢を操っているらしい相手?」


 フレイさんがこちらを振り返った。


「彼女は操られている、と?」


「ソラ……精霊王はそう判断しているらしいんです。でもメイア嬢の側にいて、そんな風に操ることができる人なんて、イドリシアの人しかいないので」


 と、そこでフレイさんが「……わかった」と苦渋に満ちた声で告げる。


「おそらくそいつが、イドリシアにタナストラの軍勢を引き込んだんだ。そうでなければ、王宮にいる王族から暗殺していくことなんて不可能だった。でも誰なのかわからなかった。犯人を見た人間は皆死んでいる。そして精霊には口止めがされていた」


「精霊に口止めって、わりと簡単にできちゃうんです?」


 尋ねた私にフレイさんは首を横に振る。


「そんなことができるのは、おそらく精霊王の剣を持つ団長か、ユラさんみたいな魔女ぐらいだ。そうでしょう、精霊王よ」


 ソラがうなずく。


「そうだね。彼は……僕に匹敵するものを作り上げた。だから精霊をも操ることができ、精霊達が何かを伝えることも阻止できた。そして僕も……。だからこそ僕は、秘密裡に行動するために、バグを作るしかなくなった」


「バグって精霊?」


 以前、ゴブリン姿の精霊達が見えるようになった時に、それを考えた。……まるで精霊にバグが起こったみたいだ、と。

 わざとソラがそうしたの?

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