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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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イドリシアに着地

「……なんにせよ、ここへ魔女が来るのなら、タナストラの王宮に居られるよりも片がつけやすいな。国同士の争いに発展することはないだろう。先ほどの攻撃に関連して、すでにタナストラでは彼女が魔女だという認識はされつつあるはず。魔女を討伐したと言えば反論できまい」


 なにせ他国への攻撃をしたのだから、隠してはいられないだろう。


「でもタナストラがかばったりしませんか?」


「精霊教会を動かせばいい。精霊教会がメイア・アルマディールを破門し、魔女として追放されるべき者だと言われたら、タナストラとて無視はできない」


 なにせ精霊教会は、各国で戸籍や郵便関係、討伐者達を支配している他、宗教という形で民衆を味方につけている。精霊教会の発言力は普通の宗教よりも強い。


「あれ。そうすると精霊が殺されたというのも……」


「精霊教会を激怒させる案件になるな。おそらくタナストラ中、そして攻撃された国の精霊教会の司祭達は、魔女がタナストラに味方して精霊を殺したことを把握しただろう。精霊教会の抗議を受けたら、タナストラは知らぬ存ぜぬを通そうとするかもしれない。そして一時隠れるという名目で……イドリシアへ来るかもしれないな」


 そういう形でも、メイア嬢がイドリシアへやって来る可能性は高くなるわけだ。

 でも、早ければ早いほどいい。

 メイア嬢達が魔女らしい破壊活動をする前に、決着をつけたい。


 それにしても、よくプレイヤーがほいほいとタナストラへ入国できたなと思う。

 今朝、もしアーレンダールへの攻撃が行われていたとしたら、ゲームではいよいよタナストラの魔女の討伐依頼が出されることになる。

 その後、プレイヤーはタナストラに入国して、あちこちで魔女やその配下と思われるものと戦うのだ。


 だけどタナストラの方は、魔女を庇いたいだろうに……と思ったところで気づく。

 精霊教会の矛先をそらすためだ。『俺は関係ない』って形をとるため、討伐者達を国境で足止めしたりしなかったのね。

 精霊教会ににらまれては、タナストラも国家運営が厳しくなるから。


 表向きはそうしておいて、微妙に魔女を援助し、タナストラは混乱を引き延ばした。どさくさにまぎれてアーレンダールへ本格侵攻するためだ。

 だからシグル以外の騎士団に所属している討伐者以外は、戦争防止のクエストをこなしたりしていたはず。


 私はそこまでプレイしていなかったから、参加していないけど。

 まぁ、最後は戦争を止めることに成功しても、魔女の暴走でみんな破壊されてしまう。プレイしていたら虚しかっただろうな……。


 でも、今になってしみじみと思う。

 この世界と同じゲームは、どうして作られたんだろうって。


 そもそもどちらが先なんだろう。

 ゲームの方? この世界の流れとゲームの知識がある私やソラが存在するのだから、そう考えてもおかしくはない。けど、他者の知識通りに世界が動くっていうのもおかしい気が……。


 頭が混乱する私を乗せて、団長様の竜が降下を始めた。

 先導するのはフレイさんだ。

 フレイさんの飛びトカゲはふわっと降下して小さな草原に着地したけど、続くフレイさんの隊の人達の飛びトカゲは、空中で足をつけて止まってしまう。

 その後不思議そうに歩き回る。透明なゴム風船の上を歩いているような動きになっていた。

 団長様の竜ヴィルタちゃんも同じように、空中で足場に着地してしまう。


「あ、精霊が」


 空中……といっても飛びトカゲが着地している足元から、ふわっと精霊の姿が浮かび上がって、私の目の前までやってくる。

 ふわふわとした白いドレープの服を着た、ちっちゃなゴブリン姿の精霊だ。


「いらっしゃいませユラ」


「えっ……」


 このゴブリン姿の精霊の声が、なぜ聞こえるの?

 目を丸くする私に、精霊はにこっと笑った。


「王様が待ってる。おいでおいで」


 精霊が手招きすると、団長様の竜が急に羽ばたき出した。足元の空気の床がなくなったようだ。


「あの、他の仲間もお願い!」


「はいよーはいさー」


 精霊がくるりと回転しながら応じてくれたので、私は急いで団長様に伝えた。


「もうみんな降りられるはずです!」


「わかった」


 団長様はヴィルタちゃんを降下させつつ、イーヴァルさん達に下りてくるように手振りで指示した。

 そうして私達は、ようやくイドリシアの地に足をつけることができたのだった。



 さて私達が降り立ったのは小さな草原だけど、周囲は木々が伸びて枝葉で隠してしまい、上空からも何がどうなっているのかわからない場所だった。

 正直、経緯度が一目でわかる機械でもなければ、どこも同じように見える。


「同じような森が広がっているのに、よく場所がわかりましたね」


 着地後、団長様がヴィルタちゃんに指示を与えて空に放している間に、先に飛びトカゲを飛び立たせたフレイさんにそう聞いてしまった。


「ああ、聖地のある場所はより木々の密度が大きいからね。これは精霊の結界の一つなんだよ。空からも隠すためではあるけど、木々に魔力を与えて侵入者を弾くんだ」


 それほどまでに精霊達が結界を厳重にした場所……それが聖域。

 はるか昔、大地に神が降りた場所だと言われている。

 イドリシアの人々は、神が降りた聖域を守るため、ここに国を作った、とフレイさんに聞いた。

 そんなことをするのだから、精霊が元々見えるし会話ができる人達が、イドリシアの先祖だったようだ。中には精霊と結婚した人もいたらしく、それが国王の一族になったのだとか。


 あの小さな精霊とどう結婚するんだ……。

 なんて考えてしまったけど、ソラみたいな大きさの精霊が他にもいたなら可能だろう。でもゴブリン顔……。だけどソラはいい人だしなと考えてしまった後で思い出す。


 ゴブリン姿の精霊は、つい最近になって急に出現し始めたらしいことを。

 だから昔、ソラのような大きさで人によく似た姿の精霊が、人と恋をしたんだろう。


 その後もイドリシアの人々は聖域を守り続けた。そして国が危機に陥る度に、神を召喚して、国を攻撃されないように守っていたらしい。

 ……ただ、今回のイドリシアへの侵略は気づくのが遅れてしまった。


 王宮の王族達が最初に暗殺され、混乱したところへタナストラの軍が攻めてきたのだとか。

 それでも王は、なんとか聖域へたどりついた。


「それで、神を召喚してイドリシアに誰も入れないようにしたんだ」


 フレイさんは、そう説明してくれた。

 話している間に、フレイさんの隊の人々が降下してきた。

 フレイさんの隊の騎士達には、フレイさんがイドリシア人の血を引いていて、多少なりと地理について知っているから先導を務めている、ということになっている。

 なので彼らがこちらへ集合しないうちでなければ、詳しい話を聞けないのでこそこそと話す。


「イドリシアを守るためですか?」


「いいや。おそらくは聖域を守るためだ。神は聖域でしか呼ぶことができない。だけど呼べたなら、様々な願いごとが叶うから。タナストラが他国への侵略を行う手段にさせないため、聖域を閉じたかったんだろう」


 確かに神様にお願いをして叶ってしまったら……。

 それがタナストラの王様に、みんなが『併合して』っていう気分になるとかじゃなく、相手の国に大打撃を与えるような手段だったら危険だ。


「でも願いごとって、どんなものまで可能なんですか? 人を生き返らせることとかはできるんでしょうか?」


「できなくはないと聞いているよ。だけど、必要な魔力量とか人数のことを考えると、割に合わないというか、遺族も申し訳なくてできないだろうね」


 十数人の精霊術師が死をもって神を呼ぶんだもんね……。

 一人を生き返らせるのに、十数人を犠牲にするとか、普通の神経ならできない。


「そういえば、イドリシアの王様は魔力量がすごく多かったのですか?」


「王としては普通じゃないかな。ご自身も精霊術師だったけど。ただ何人かは生き残った精霊術師が一緒にいたんだろうと思うよ。あとは魔力量を補助できる魔石なんかを多数使ったかもしれない。ありったけ使えば、十万ぐらいにはなったんじゃないかな」


「十万……」


 私の予想した必要MPより多い。そしてメイア嬢はそこまでの魔力量はなさそうだけど、どうやって神を呼ぼうとするんだろう?

 火竜さんみたいに、存在値を魔力に変換するの?

 え、それって死んじゃうんじゃない?

 まぁ、今回は神の召喚はしない……というより、呼ぶのを阻止するのが目的なので、詳しく知らなくても大丈夫だろう。


「そういえば精霊王を呼ぶってどうするんです?」


「それも必要な儀式が必要だね。これも魔力量が問われるけど、精霊王を呼ぶだけなら死ぬことはないよ」


 精霊王を呼ぶだけなら……。でもここでも魔力量が問われるんだ。

 そこで私はフレイさんから目をそらしてしまう。


 精霊に王様って呼ばれている人をですね、毎回クッキーやパンケーキなんかで呼んでいたわけなんですよ私。

 やっぱり彼が『そう』だとしたら……呼んだときに驚かれそうというか。団長様には『なぜ黙っていた』と怒られそうな予感が。


「フレイ、ユラ」


 騎士さん達に指示していた団長様がやって来た。


「全員集まった。フレイ、案内を頼む」


「わかりました」


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