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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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作戦会議2

「次はお前についてだな、ユラ」


 団長様が次の話に移った。


「場合によっては、魔女かどうか判定するために精霊教会が出てくるかもしれん。お前について精霊達に尋ね、魔女だと答えることがあれば……」


「あ、それは大丈夫です。魔女って呼ばないでユラと呼んでとお願いして以来、精霊はそれを守ってくれてます」


「それなら問題は、測定石ではありませんか?」


 フレイさんの言葉に、はたと思い出す。

 そうだ。あれを見られてしまうと、異常があからさまにわかってしまう。


「今、測定石がどうなっているのか確認する。出せ」


 団長様に言われて、私は首から下げていた赤い測定石を取り出した。手のひらの上に乗せると、八重咲の椿みたいな形に花開いていき、HPやMPのラインが光で示される。


「どうやって言い訳するんでしょうかね、これは」


 イーヴァルさんが渋い表情をした。

 なにせステータスのラインがおかしなことになってるから。特にMP……魔力量のところが。


「これは隠せないのか? 魔女の力で。できなければお前が死んだとでも嘘をつくしかないが」


「どうやって死んだと嘘をつくんですか?」


 参考までに聞くと、とんでもない言葉が返って来た。


「どこかから似た背格好の死体を見つけてきて、お前の代わりにタナストラの人間に見せるしかない」


「ひぇぇぇぇ」


 団長様に墓荒らしなんてさせられない! ていうか掘り出される人が気の毒すぎるし、本当にあやまってもあやまりきれない!


「それも、精霊に尋ねられたら、違う人物だと教えてしまうのではありませんか?」


「ユラが魔女だと言わないよう頼んで、それが通るのだ。一時的に嘘をつくことを依頼もできるのではないか?」


 イーヴァルさんのツッコミに、団長様は淡々と告げた。


「あの……とりあえずどうにかできないか、まずは火竜さんや精霊さんに相談してみます」


 火竜さんの説得はさておき、精霊さんとの相談は見せられない。後でこっそりやりたい。

 団長様がうなずいた。


「急げ。できればメイア・アルマディールが行動する前に先手を打ちたい。具体的には、数日中にはタナストラの国境へ向かい、駐留する騎士団に無理やり認めさせ、タナストラの王に報告させたい」


「わかりました」


 うなずいた私だったが、もう一つ、今のうちに知らせるべきことがある。

 魔女――メイア嬢はアーレンダールを攻撃したあげくに、タナストラを中心として周辺諸国までも滅ぼしてしまう。

 その危険性について話しておかなければ、メイア嬢と戦う時期を早められない。

 火竜さんのことまでずっと後手だったので、ここは先手を打ちたいのだ。


 しかしどう切り出したらいいものか。『精霊が、魔女はいずれ暴走するって言ってました』とか?

 それじゃ未来が見える精霊がいるのかと思われる。何より精霊に詳しい団長様やフレイさんに、ものすごく不審がられるだろうし……と思っていたら、フレイさんが切り出してくれた。


「団長。ユラの疑惑が晴れた直後に、イドリシアの聖域へ行けませんか? イドリシアの者達の目的は、神の力でタナストラの王都周辺を焼き尽くすことです。その前に止められるのが一番でしょう。それに、今ならまだ彼らの準備も整っていないかもしれない」


「待ち伏せをするということですか?」


 イーヴァルさんの問いに、フレイさんがうなずく。

 私も魔女の行動を止めたいので、ここで誘導しなければと口を開いた。


「あの、魔女ってものすごく魔力が多いわけです。それに神を呼ぶ時には、精霊王の力まで加わるのですよね? そんなに大量の魔力を扱って……暴走とかしないんですか? もしそんなことになったら、被害はタナストラだけでは収まらないかもしれません」


 よもや周辺国まで破壊されるとは言えないので、予想がつくようないい方をしてみた。


「暴走……か」


 急にそんなことを言いだしたからか、団長様が不審そうな表情になる。

 それに対して、フレイさんが援護してくれた。


「故郷のおとぎ話でも、十数人の精霊術師が死をもって神を呼ぶと語り継がれてきました。メイアの魔力がどれほどあったとしても、そんな魔力を動かせば、体にかなりの負担がかかるはず」


 フレイさんの話を聞きつつ、私は想像する。

 六十LVぐらいの魔術師がMP二千だったような。それが十数人って……ええと十五人ぐらいで三万MPってことか。


 しかも命までかけるとなれば、火竜さんが魔力を奪われそうになったあの時みたいに、存在に関する魔力分使うということになるのでは。それなら、一人頭倍の四千MPぐらいはあると考えるべきか。

 フレイさんは深刻な表情で続けた。


「それに、今まではイドリシアで暴れた魔物を倒すため、神を呼ぶことがほとんどでした。タナストラの王都を滅ぼすような大規模なものなら、もっと魔力が必要でしょう。だからこそ魔女を必要として作ったのでしょうが……一気に多大な魔力を使うことになって、力を暴走させないかどうかは、私も自信がありません」


 フレイさんの説明でわかった。

 神呼びの儀式が語り継がれている――過去に何度か行われているのに、今回ばかりは魔女の暴走につながるのは、願いが大きすぎて魔女でも手に余るからじゃないのかな?


 国を守るだけなら、敵の攻撃だけ跳ね返すか、侵入を阻止すればいい。だからそれほど……いや、人が死ぬほどではあるけど、魔女が必要になるほどの魔力はいらなかったのではないだろうか。

 そんなことを考えつつ、私はソラから聞いたことをそこに挟む。


「あの、実は……精霊から助けてほしいと言われています。タナストラが精霊を使った魔術で他国を攻撃していることもそうですが、『イドリシアの精霊を助けて』と言うので、魔女の神呼びに関連しているのかもしれません」


「それは、あのゴブリンみたいな精霊か?」


 私はうなずいてみせた。

 団長様はゴブリン精霊とは話ができない。おかげで私は、彼らから特別な話を聞いたことにできる。ありがとう、ゴブリン顔の精霊さん達。ソラも含めて、どうしてゴブリン姿なのか未だにわからないけども。


 団長様はそれを聞いて、魔女の暴走阻止が重要だと考えてくれたようだ。


「タナストラを破壊するだけにしても、そこに住んでいるだけの民や、精霊までも巻き込むことになるな……。神を呼ぶ前に、聖地という場所に入れないようにするしかないのか?」


 尋ねられたフレイさんは、難しい表情になる。


「戦って、聖地に近づけないようにするしかないかと」


 団長様は、三秒ほど黙ってから口を開いた。


「魔力が暴走するかどうかはわからない。だが、もしタナストラ以外に被害を及ぼさないとして、魔女も無事だったとしても……人を拉致して禁術が成功するまで使いつぶした上、森に捨てるような輩がまともなわけがない。イドリシアを取り戻しても、必要なら周辺国を脅すために、何度でも同じ方法で攻撃するだろう」


 団長様の言葉に、フレイさんもイーヴァルさんも同意する。

 そうだ。あの拉致犯達は自らの目的のために、無関係な人を殺して捨てるような人達だ。私なんてまだ生きてたのに、失敗作だからって殺されそうになったもの。

 故郷を取り戻した後、同じようなことをしないとは言えない。むしろ高確率で、相手を殺してなんとかなるならと手段を選ばず実行しそうだ。


 そもそもタナストラを攻撃するにしても、イドリシアを滅ぼすと決めて実行した人は因果応報すぎるけど、王都に住む平民の人達をも巻きぞえに殺してしまいかねないのは、ちょっと理解できない。

 元日本人としての感覚から考えても恐ろしいし、この異世界で生まれ育ったユラとしても、邪魔者は全て殺してしまえというのは……。

 いくら大変な目に遭ったとはいえ、していいことではない。


 団長様も同じように思ってくれたのだろう。


「タナストラの国境で、ユラと火竜についての誤解を解いた後、どうにかイドリシアまで移動する手段を考えておく」


 そう言ってくれたのだった。

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