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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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作戦会議 1

「おおユラ! 無事だったか!」


「団長が落ち着いているから無事だと信じてたが、顔を見るまでは心配してたぞ!」


 シグル騎士団の城へ到着するなり、竜の姿を見て待ち構えていた騎士さん達に囲まれた。

 騎士さん達が一気に走って来たので、驚いた火竜さんは空へと一人で逃げてしまう。


 私は肩を叩かれたり、頭を撫でられたりしつつ、口々に無事でよかったと言われて、目に涙がにじみそうだった。

 王都を出る時は悲愴な気分だったなと思い出すと、なおさらだ。


「陛下の力添えがあったからな。そう難しいことはなかった」


 近くで他の騎士に尋ねられていた団長様が、しれっとそんな風に答えている。


「しかし問題は残っている。イーヴァル、ユラ、フレイ、一息ついたら執務室に来るように」


 声をかけて、団長様が先にお城の中に戻ってしまった。団長様を出迎えるため外へ出てきていたイーヴァルさんも、一緒だ。


「何があったんだ?」


 周囲の騎士さん達が首をかしげるけれど、私からどうこう言うわけにはいかない。


「とりあえず、荷物片づけますね」


 そう断って、私は久々に自分の部屋に戻った。

 第五棟の中に入ると、お洗濯中のおばさんたちがわっと集まってくれた。


「無事だったんだねぇユラ!」


「牢に入れられるって話を聞いたが、よく戻って来たねぇ」


 頭を撫でられ、ぎゅっと抱きしめられ、もみくちゃにされてようやく、元の生活に戻れるんだなという気持ちが湧いてくる。


 いや――元の生活に戻るわけではないか。

 心の中でそう思う。

 これからすぐに、団長様は魔女の噂を払拭するために、タナストラへ向かってしまうのだ。私はそれについていかなくては。

 穏やかな暮らしに戻るには、まだもう少し時間がかかりそうだ。


 ようやく部屋に戻った私は、荷物を置いてから少し考える。


「すぐに旅立つなら、荷物はほどいてもしようがないよね……」


 必要なものを入れ替えたり、追加する必要はあるけれど。

 今すぐしまっておくべきなのは、陛下からいただいたドレスだろう。

 とにかくしわができないように、クローゼットの中に掛けておいたけど。


「うわ……なんか浮いてる」


 簡素な木のクローゼットに入っているのは、実に庶民的な服だ。その隣に、絹の光沢も美しい色とりどりのドレスが並んでいる……。すごい取り合わせだ。

 こんなドレスを着せてもらっていたのかと思うと、そのドレス姿で団長様と一緒にいたことを考えてしまう。


「……いやいや、まずは魔女のことを片付けないと」


 思いを振り切って、すぐに団長様の執務室に向かうことにした。

 第一棟に入ると、ちょうどフレイさんと行き会った。


「お疲れ様ですフレイさん」


「ユラさんもね。移動からすぐ打ち合わせは辛くないかい?」


 気遣ってくれたフレイさんに「ありがとございます」と返事をする。


「でもあの話については私の今後にも関わりますし、いつアーレンダールへ攻撃が行われるかわからないと思うと、じっと休む気分にはなれなくて」


「そうだね……。またあちらから、君のことで冤罪の種を蒔かれる可能性もある。魔物まで作り出すというのはね……」


 フレイさんは深刻そうな表情になった。

 そう、敵はあっさりと倒せるような存在ではあるものの、魔物をつくり出せるのだ。他にも何をしてくるのかわからない。


(だって王宮での事件なんて、ゲームにはなかったもの)


 まごついていたら、また予想外の事件が起きてしまう。

 私とフレイさんは、団長様の執務室へ入った。

 中にはイーヴァルさんと団長様だけがいた。すでに説明を受けたのだろう、イーヴァルさんはやや厳しい表情をしている。


「まずは二人とも、無事の帰還お疲れ様です。説明はあらかたしていただきました」


 イーヴァルさんの言葉に、団長様がうなずく。


「国内については、貴族達を扇動していた魔物を倒したことで、解決できた。ユラのおかげだ。感謝する」


「いいえ。そもそも私の問題でしたし……」


 メイア嬢達に目をつけられたのも、魔女として告発されたのも、私の問題で。そこに陛下達や団長様が振り回されただけだ。


「それにともなって、タナストラにもお前が魔女ではないと納得させる必要が出てきた」


「メイア・アルマディールが魔女だと告発し返すことができればいいんでしょうが……。そうすると、衆人の前で戦うなりすることになりそうですね」


 イーヴァルさんはそういいながら、渋い表情だ。得策ではないと思いつつ、口に出したんだろう。


「イーヴァルが言ったようなことを実行した場合、アーレンダールが魔女を送り込んだのだ、と言いがかりをつけられそうな気がするのですが」


 フレイさんの懸念に、団長様は「そこは大丈夫だろう」と言う。


「彼女を指名したのはタナストラだ。魔女が騎士団にいると言ったのも。なら、自分達が魔女に騙されただけだ。アーレンダールは何も知らず、タナストラの話を信じて行動しただけで、こちらのせいではないと突っぱねることは可能だ」


「売り物じゃなかったりんごを、気に入ったからよこせと要求して持って帰ったら……虫がいたとしても、自分のせいですよね」


「まぁ、そういうことですね」


 私のたとえに、イーヴァルさんが呆れた顔をしながらも同意してくれた。


「難癖をつけてくるのは間違いないが、自分達がそう主張した以上、戦争の火種にすることはできまい。……だから問題は、火竜とお前についてのことだ」


 団長様が私をみすえる。


「お前が魔女ではない、と証明すること。そして火竜が今は無害だと印象づけることが大事だ」


「火竜については、私に案があります」


 自信にみなぎった表情で手を上げたのはイーヴァルさんだ。

 どんな素敵な案だろうと、私とフレイさんはじっと次の言葉を待つ。団長様がなんでか視線をそらした。


「攻撃を仕掛けようとした火竜は亡くなり、子供だけが残されてしまった作戦です!」


「亡くなる?」


「子供?」


 フレイさんが『無理すぎないか』という困惑の表情になった。

 私もそう思う。あれだけの巨体の火竜さんを、しかも大量の精霊さんに助けられて倒したというのに、死んだと偽れるものだろうか。


 でもイーヴァルさんはその主張を通すつもりらしい。イーヴァルさんは胸を張って説明してくれた。


「よほど冷たい人間ではない限り、小さいものには心引かれるはずです。竜の姿ではあっても、あの小さな姿ならばタナストラの者達も油断し、ほだされるでしょう。そこに親を亡くしたと話せば、同情することで嘘を信じやすくなるはずです」


 私なぞは、火竜さんとの戦闘経験なんかもあるせいで、つい『火竜さんって、実はそんな可愛いばかりじゃないよね』と思ってしまう。だけどミニミニな火竜さんの姿しか見ていない人なら、騙せる?


「かわいそうな話を聞いたら、信じてしまうかも」


 動物の子供、しかも火竜さんに頼んで可愛らしい声で鳴いてもらえば、信じてくれるかもしれない。


「おかしいと思っても、気の毒な相手にそう口に出せる者はなかなかいないだろうね。火竜を遠目にしか見ていないのだから、同一竜だと言い切れる人間もいないかもしれない」


 フレイさんもよくよく考えた末、そういう結論に至ったようだ。


「問題は、火竜さんが納得するかどうかですが」


 火竜さんはプライドが高いから、子ども扱いされたら激怒しそう。


「元の住処へ戻すためだと言えば、協力するのではないか?」


「そうかもしれませんが……。とにかく一度火竜さんとお話し合いをしてみないことには」


 どんなごね方をするのか、私にもはっきりとは予想がつかないので。

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