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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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ヴィルタとの通信

 三日後、樽五つ分の紅茶が出来上がった。

 その間はイーヴァルさんが毎日のようにかごいっぱいの葉を届けてくれていた。

 葉を届けたイーヴァルさんは、熱いからと喫茶店の窓の外で熱風乾燥を頼んでいた火竜さんの姿を見かけ、可愛さに涙していたらしい……。


 そして私、抗議されました。


「あんなに働かせて、もちろん報酬は渡しているんですよね!?」


「火竜さんの報酬……」


 それはきっと、失った魔力ですよね。たっぷりのごはん。


「もちろんボーナスをお出しする予定です」


 私はイーヴァルさんに答えたものの、ちょっと語尾が弱くなる。

 大量に魔力を渡すためには、お城から離れた、騎士とかが巡回しない場所へ行かなければならない。

 そのためには、フレイさんか団長様のどちらかに頼む必要が……。


 私も、ふいうちで殺されたくないですし。

 魔法でとか、事前に「やあやあ我こそは敵Aなり!」とか口上を述べてくれなければ、対応できない可能性が高い。この時は火竜さんだって、お食事真っ最中になるだろうし。


 しかし頼みにくい。

 どっちにも頼みにくいんです!

 幸いなことに、この三日間。フレイさんは毎朝私の状態を確認するだけだ。


 団長様はお忙しいのか、喫茶店にイーヴァルさんとちょっと顔を出してお茶を飲んで行くだけ。

 夜にオルヴェ先生のところへお薬を取りに来ていないけれど、寝不足は大丈夫だったんだろうか……。少し心配だ。

 そして今日は、ヨルンさん達に、五樽の紅茶を引き渡した。


「ありがとうございます! 沢山売ってきますからね、ユラさんもまた生産お願いしますよ!」


 ヨルンさんが腕をぶんぶん振りながらそう言い、


「がんばって売ってくるから!」


 アニタさんも元気よく宣言し、そのままタナストラへ出発。

 やはり旅だからなのか、もう一人付き添う人を連れていたけれど、そちらも同じ年頃の女性だった。

 女性の二人旅で隣国行き、しかも荷物もあるって大丈夫かなと思ったけれど、そこに関してはヨルンさんが太鼓判を押してくれた。


「あれの母親も、アニタ自身も討伐者をしてましてね」


 お、珍しい女性の討伐者をこんなところで発見した!


「アニタの母親も、その仕事の途中で助けたことがきっかけで、父親と結婚したという経緯があるくらいで」


 アニタさんのお母さん、強い……。

 なるほど、火竜さんに物怖じしないのはそのせいもあるのか。

 その話を聞いたおかげで、私はいくぶん安心してアニタさんを見送ることができたのだった。



 紅茶を引き渡すと、一段落したなとほっとする。

 今日は少し休もうと思い、紅茶の作成はやめ、処理が残った葉は涼しい場所に置く。

 片づけを済ませると、次は食事の時間だと察した火竜さんが、空から降りてきた。

 乾燥の用事がなければ、火竜さんは最近空を飛ぶことが多い。


「そろそろ我の魔力の補充時間であろう、魔女よ」


「あ、そうですね。中庭に行きましょうか」


 火球を五つほどあげるだけなのだから、第一棟からの帰り道に中庭に出る。

 そこで私は、少し遅れて建物から出てきたらしい団長様に、呼び止められた。


「ユラ」


「は、はい」


 声を聞き、ものすごく緊張しながら振り返る。

 団長様はいつも通り、冷静そうな表情だった。西日に照らされたご尊顔は、いつもながら麗しい。

 でも紫の瞳でじっと見られることが、こんなにも緊張するようになるとは……。


 いや、最初のころはそこそこ緊張していた。

 追い出されないかなとか。変なことして追い出されないかなとか。

 今の緊張は、前とは少し違う。

 団長様の手の感覚とか、間近に迫った顔とかを思い出して、落ち着かない。


「火竜に餌をやるのだろう。最近は他の者が火竜に餌やりをしたいとうるさいのでな。私の魔力を供給するという形にしたい、少し離れた場所まで付き合え」


「あ……はい」


 団長様は、どうやら火竜さんに少し多めのご飯をあげてはどうかと自ら提案してくれたようだ。

 火竜さんからボーナスをねだられていたこともあって、私はうなずく。

 それからようやく思い出す。


 ええと、火竜さんは飛んでいくのかな。それともヴィルタちゃんに一緒に乗るのかな。だとしても私、団長様に掴まれる状態になるわけで。

 とはいえ今さら反故にもできず、私は緊張状態を引きずったまま、団長様についていくことにした。


 行き先は、ヴィルタちゃん専用になっている竜舎である。

 歩くのは苦にならないのだけど、ちょっと離れたそこまでは徒歩で五分はかかる。

 その間、何をどう話していいのかわからなくなって、私は黙りがちになってしまった。でも団長様は特に何も思った様子もなく、話しかけることもなく放置してくれている。

 それがありがたかった。


 竜舎の側に行けば、そこを担当している騎士団で雇っている男性が、団長様に一礼した。

 そしてヴィルタちゃんは、自分で竜舎からのそのそ出てくる。

 竜舎自体が壁と屋根があるだけで、特に出入りを遮るものはない。たぶんヴィルタちゃんはいつでも自由にしているのだろう。

 団長様の気配を察して出てきたんだろうか。


 私はふっと思い出し、ステータス画面のDチャンネルをオンにしてみる。


《火竜:ぐぬぅ……。こんな若造にまで負ける大きさとは……》


「ぐぬぅ……。こんな若造にまで負ける大きさとは……」


 火竜さんの字幕つき放送になっただけ?

 ふと思いつき、じっとヴィルタちゃんとつながるように念じながら、一回ボタンを切って、魔力を込めるようにしてスイッチを入れ直す。


 私のMPが一秒ごとに一ポイント減って行く。

 これで火竜さんとは、遠距離でも通信がうまくつながったんだけど。


《ヴィルタ:…リュー………》


「お、ヴィルタちゃんのは、最接近するとなんとか電波拾えるぐらいなのかな」


 遠距離にいた火竜さんと、魔力を使わずにお話をしたときみたいな感じ。

 なんでだろうと首をかしげていると、ヴィルタちゃんに鞍をつけていた団長様が私の言葉を聞きつけて言った。


「なんだ、ヴィルタとは話せないのか?」


「断片が少しわかる程度で……。火竜さんに限らず、竜と話せるはずの技のはずなんですけど」


 魔女の能力についての話だから、なんとか普通に話せた。小声でだけど。まだ近くに竜舎担当の人がいるしね。


「ああそれなら、ヴィルタと私が契約しているからかもしれないな」


「契約って……あの?」


 私とか火竜さんがしているやつでしょうか?

 疑問の内容は言葉にしなくても察してくれたようだ。団長様は首を横に振る。


「別だ。竜が気に入った人間とするもので、友情を結ぶのに近い……か? お前のようにではないが、感情や意思のやりとりはできる。言葉というはっきりしたものではないが」


 お話はできないんですね。

 でもなるほど、と思った。団長様だけとの間に回線を繋いでしまっているから、ヴィルタちゃんとの間のチャンネルが、混線してる感じになるのかな?


 さらに魔力を使えばどうにかなるかもしれないけど、今は必要ないだろう。

 私はチャンネルのスイッチを切る。


 そこでちょうど団長様の準備が済んだようだ。

 団長様が手を伸ばし、いそいそとヴィルタちゃんの上に乗った火竜さんを見て、私は団長様の手を掴んだ。

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