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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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三人で情報交換を

「ユラさん、歩けますか?」


「一人で大丈夫なのか?」


 立ち上がったとたん、二人に言われて私は苦笑いしてしまう。

 でも気遣ってくれるのはとてもありがたい。


「ありがとうございます。でも、オルヴェ先生のお薬で少し良くなりましたので」


 私は側にお座りしていた火竜さんを抱き上げ、病床室へ向かった。

 そこは、少し前までメイア嬢が使っていた所だ。

 病床室の中でも少し小さめの部屋で、あれから内装は元に戻され、寝台が四つ、所狭しと置かれている。


 しかし寝台に座ると、せっかく敷いたシーツにしわをつくってしまう。

 それが嫌だなと思ったこともあり、私は火竜さんに離れてもらい、背もたれのある椅子を引っ張ってきて団長様に勧めようとした。


「ユラ、それぐらいなら自分でやる。お前は座っていろ」


 なのに団長様に、腕を引かれ、眼前に迫られて一歩後ろに下がったすきに肩を押され、背もたれのある椅子に座らされてしまった。


「え、あの、上座……」


「問題の中心人物をそこに据えてもかわまんだろう。それに、まだ本調子でもないのだから無理をするな」


 そうしている間に、フレイさんが背もたれのない椅子を目の前に置いてしまう。

 団長様もフレイさんも着席してしまい、火竜さんも私の椅子の背もたれに、鳥みたいにとまってしまった。


「さ、これでいいかいユラさん」


 いいかどうかと言えば、あんまり良くないです。

 ただ団長様は引く気はないって顔で私を見てるし、フレイさんもこれで構わない様子だ。変えて欲しいと言ってもうなずいてくれないだろう。

 変なところでこの二人、気が合うんだな……と思ってしまう。元々、仲は良さそうだったけれど。


「まず、ユラがなぜ体調をくずしたのか聞こう。もちろんお前が話すんだろう? フレイ」


 団長様はそう言って、フレイさんの方を向く。最初からフレイさんが主体で話すと考えていたみたいだ。その通りでございます。


「そもそも今日は、巡回の日だったと思うが、どうしてユラを拾ってくるような状況になった?」


 団長様の言葉で思い出す。あ、やっぱりフレイさん、巡回の日だったんだと。

 ユラ係の解任からこっち、フレイさんの予定が詳しくわからないので、もしかして間違っていたりするかな? と思っていたのだ。

 フレイさんは落ち着いた様子だ。私なら絶対そんな真似できないだろう。団長様も冷静そうだけど、なんかこう、目が怖くって。


「ユラさんは、襲撃を受けたんです。相手は、禁術の実験を行った人間です」


 そうですね? とフレイさんの視線が向けられたので、私はうなずいた。


「服は同じでした。あと、変なことも言っていて……」


 ここからはどう言っていいのか。迷ってフレイさんに視線を返すと、続けてくれた。


「こちらの魔女の障害になるから、ユラさんを始末する、と」


「魔女……か」


 つぶやいた団長様が、私に視線を向ける。

 あ、これって「話したのか?」という意味ですよね? 私はうなずく代わりに、目を閉じて開くという動作をした。

 これで話したことがわかるだろう。

 その間にも、フレイさんは続ける。


「彼らはユラさんのことも、魔女だと断定していました。火竜の魔力を、彼らが他の魔女に移そうとしたのを邪魔したからと……。戦闘の結果、相手は二人とも負傷。一人は冥界術による転移を行うために、自害しました。ユラさんは、敵が自害する姿を見て、精霊融合の術を使われた時のことを思い出して……それで、一時錯乱状態になって呼吸に異常が出ました」


 そこでフレイさんが、団長様に厳しい視線を向けた。


「……ユラさんは、魔女なんですね?」


 団長様は数秒黙った後で、ため息をついた。


「先に聞いておきたい。巡回中だったはずのお前が、なぜユラの側にいられた?」


「それについては弁解させていただきます、団長」


 フレイさんは少し片眉を上げただけで、問いかけに応じた。


「今日の巡回については、直前に隊員だけを向かわせました。普通なら、ユラさんが火竜と一緒に森へ行くだけなら放置しても良かったんですが……。ユラさんが襲撃される可能性があると知って、俺一人で追いかけたんです」


「襲撃の可能性は、どうやってその情報を知った?」


 団長様の質問に、フレイさんは自分の左手を上向けて、二言ほど呪文を唱える。

 そうして浮かび上がるように現れたのは、私にとってもおなじみの、丸っこい鳥みたいな風の精霊だ。

 三人と火竜さんにまで注目された風の精霊は、恥ずかしそうに片羽で口元を隠したかと思うと、ぱたぱたと羽ばたいてすいっと消えてしまった。

 大変なごむ光景だったけれど、団長様には通用しなかった。


「フレイ……お前は精霊を?」


 真剣な表情で言う団長様に、フレイさんは「すみません」と先に謝る。


「ずっと隠していましたが、俺は精霊術を使えるんです。イドリシアの人間だったと言えば……団長はおわかりになるでしょう?」


「そういうことか……」


 団長様は、イドリシアの人なら精霊術を使えると知っていたようだ。そこで私は、団長様がイドリシアについて詳しい理由を思い出す。

 そうだ。メイア嬢のお母さんがイドリシアの王女だからだ。一度は婚約したことで、彼女の事情を知らされた時に、色々な話を聞いたのだと思う。

 一般市民には、イドリシア王国の人の多くが精霊術を扱えるとか、全くわからないので。

 団長様が深いため息をついた。


「お前はタナストラの侵略から逃げて来たのか?」


「そんなところです。騎士の訓練は積んでいたので、流れてきたアーレンダールで伝手がある領地を一、二か所ほど転々としてから、シグルに来ました」


 なるほど、と私は思う。

 イドリシアの王位継承権を持っている人が、どうやってシグル騎士団に入ったのかと思っていたけれど、元々身分があるんだし、伝手があってもおかしくはないものね。


「それで、面倒を見ていたユラのことが不安なままで、見張っていたのか?」


「見張るというより、見守らなくては危険だと思いましたよ、団長」


 フレイさんは笑って言った。


「ユラさんが精霊を呼び出したり、おかしいくらいに魔法を連発しているのを見て、俺でもすぐにわかりました。ユラさんは……例の術の成功例でしょう。今回の襲撃より前に、そのことには気づいていたんです」


 念のためなのだろうけれど、フレイさんが少し伏せた言い方をした。

 そして団長様の方は、これ以上は伏せても仕方ないと判断したようだ。


「確かに、ユラは魔女と……精霊にもそう呼ばれているらしい。フレイ、お前はそれを知っても、口外せずにいたことを信用して話す」


 団長様は両手の指を組んだ。


「ユラは禁術の成功例になった。それを私は前から知っていたが、元々本人が望んでそうなったわけでもないことだ。保護するつもりでいる」


 フレイさんはその言葉にうなずく。


「俺もそのつもりです。何より……責任を感じます。ユラを襲撃した者達は、間違いなくイドリシアの人間だったので」


「……タナストラではなく、か?」


「間違いありません。精霊術を使っていましたし、イドリシア人らしい特徴も言葉に見られました。同郷の人間が、アーレンダールの恩を忘れて、無差別に人をさらって禁術を使っていたとは……」


 うつむくフレイさんの様子に、団長様は信じたようだ。


「イドリシアか。多くはアルマディール領にいたはずだが。一度調査させなくてはならないな」


「団長、その時には決してメイア・アルマディール嬢に情報が渡らないようにしてください」


 そしてフレイさんは衝撃的なことを口にした。


「彼女も、禁術が成功している可能性があるからです」

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