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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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何かあると呼ばれてしまうみたいで

「だって火竜さん。元に戻った後で『やっぱおしえなーい』と言い出したら困るなって思ったんです。だから大きく戻せることを証明してですね、ちゃんと火竜さんの要求である『戻す努力』をしてみせたんですが」


 そう、火竜さんは努力をしろと言ったのだ。

 すなわち努力をしてみせたら、完全に戻せなくても私は約束を守ったことになるはず。


「こしゃくな魔女め……」


「お約束、してくださいましたよね? 破りませんよね?」


 大型犬ぐらいになった火竜さんだけど、この大きさなら、暴れても私一人でなんとかなると思うので、私は強気に出てみた。

 火竜さんはそれもわかっているらしい。

 ぐぬぬ……と悔しそうにうなった後で言った。


「仕方ない……取引に応じよう」


「やった。じゃあお部屋に戻ってじっくりお話を聞かせてください」


 そう言って立ち上がったところで、私は声をかけられた。


「ユラさん、もう外に出ても大丈夫なのかい?」


「あ、フレイさん」


 夕暮れが迫り始める中、フレイさんが第一棟の方から歩いて来る。今日はずっと城の中にいたのか、マントは身に着けていない。


「君が外に出ているって聞いて、心配して来たんだけど……。火竜もなんだか大きくなってるね。大丈夫かい?」


「あ、もう全然大丈夫です!」


「でもみんな心配するから、無茶しないようにね」


 ありがとうございますと言った時、私はフレイさんの向こうで、十数人くらいの騎士さんが私や火竜さんを遠巻きにして見ていることに気づいた。

 あ……火竜がいるってことで、とりあえず警戒した人がフレイさんを呼びに行ったのかも。

 他の人にユラ係はやめたことが伝わっていないのかもしれないけれど、やっぱりフレイさんが私のことをよくわかっているからと。


 あとは……私が火竜さんを縮めたという噂があるから、きっと私一人でもなんとかできるんだろうと思って、遠巻きにしているのかな。ただ実際のことがわからなくて、万が一のために見守ってくれていたのかもしれない。

 騎士団の人達、良い人ばかりだなぁとほっこりする。


「それにしても火竜はどうしたんだい? まさか魔力を与えたのか? それにしてはずいぶん……落ち込んでいるようだけど」


 フレイさんが言う通り、火竜さんはがっくりとうなだれて無言でいた。

 羽ばたく気も起きないらしく、地面に後ろ脚で立っている。

 うーん、そんな姿もかわいい。


「火竜さんと契約した魔女について教えてもらうために、ちょっと取引をしまして……。早く元に戻りたいと言うので、紅茶をあげたんです。ただ……あまり大きくなれなかったのがご不満のようで」


「何がご不満だ……とんでもない魔女め」


 ぐぎゃーと火竜さんが鳴く。もちろんフレイさんは言葉がわからないので、竜が鳴いたな、ぐらいにしか感じないのだろう。


「確かに不満そうだね」


 わかってもらえない火竜さんは、しょぼくれた。


「くそう……言葉が通じれば……」


「無理ですよ火竜さん。私だってこんなにスムーズに話せるようになるとは、思いもしませんでしたし」


 そう語りかけていると、フレイさんが目を細める。


「ユラさん……普通に火竜と話せているんだね」


「紅茶を飲ませたら、よりスムーズになりまして」


 火竜と話せることは言ってあるので、素直にそう話す。


「連れて来たはいいけれど、誰も何を言っているのかわからないのは困るから、ユラさんが火竜の言葉を理解出来て良かったよ」


 フレイさんはそう言って微笑んでくれる。


「さ、君は病み上がりみたいなものだから、もう部屋に戻った方がいい。火竜は……これ、自分でちゃんと歩くかな?」


 火竜さんは今だうなだれている。しかし火竜さんは大きくなりすぎたので、私では運べないし。さりとてここに置き去りにするわけにもいかないし。


「君、動くのが億劫だったら運ぼうか?」


 そう思っていたら、大型犬ほどになった火竜さんにフレイさんがそう話しかけた。

 言葉の意味はわかっている火竜さんは、ぽつりと答える。いや、実際には「むぎゅー」という声だったんだけど。


「好きにするがいい……」


 そう私は言葉を聞き取った。


「好きにしていいそうですよ」


「じゃあ、ここに放置するわけにはいかないからね。暴れないでくれよ」


 フレイさんは再び声をかけてから、火竜さんを横から抱えた。半ば肩に担ぐような形だけれど、火竜さんのお尻はフレイさんの腕の上に乗っている。


「…………」


 意外と火竜さんは、大人しく抱かさっていた。こうしてみると、この大きさでだっこされる火竜さんというのも可愛い感じだ。大きいのに自分で歩くのは嫌―と、だだをこねたみたいに見えるので。

 そのまま私の部屋まで運んでもらった。手狭ではあるけれど、他の場所に置いて、何かやらかされても困るものね。

 けれどフレイさんの肩から降ろされた時に、火竜さんがぽつりと言った。


「……懐かしい匂いがするな、お前」


 フレイさんは首をかしげる。「むきゅ」と短く鳴いただけに聞こえたからだ。そのフレイさんの方は、

火竜に微笑む。


「とりあえず抱っこが嫌じゃなくて良かったよ」


 それから私を寝台に追いたてた。


「さあさあ、ユラさんはもう少し眠るんだ。魔力にあてられたなら、そうとう体がきつかったはずだよ」


「でもさすがに眠るのも飽きて……。それに魔女のことも、火竜さんから聞きたいですし」


「寝ながらでも質問はできるだろう?」


 そう言ってフレイさんに背中を押されてしまう。

 私はつい足を踏ん張ってしまった。

 正直なところ、急に活動したせいなのか、少し疲れは感じていた。だけど横になったらそのまま眠ってしまいそうだから、できれば起きていたい。


「仕方ないね。でもとりあえず座って」


 そう言われて、座るだけならばと寝台に腰かける。

 すると、フレイさんが私の頭を撫でた。


「少しの時間で終わらせるんだよ。あの山にいた、魔女の仲間らしき者は俺が始末したんだ。すぐに何か起こることはないだろう」


「あ……」


 オルヴェ先生から話は聞いていた。私が山から火竜さんを連れて戻っている間に、私以外の魔女の仲間を見つけて、フレイさんが戦ったのだと。


「手掛かりはあるんだ。だから魔女のことも、少しずつ対策を打っていく。一人で背負わなくてもいいからね、ユラさん。もちろん何か有用なこと聞けたら、俺でも団長にでも教えてほしいけどね」


 そう言ってフレイさんが立ち去ってから気づいた。

 なぜか私、疲労感が少し軽くなっていたことに。


「回復魔法かな……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めまして。あえて「メカ」と言わせて頂きます。 作者さんは北海道か東北出身の方でしょうか?若干、方言らしきものが混ざってるので、地方の方は「ん?」て思うかもしれないです。私は道民ですが、ち…
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