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第十二話 「私達の第一回戦 千鶴子の場合」

■ご注意

今回少々ググってみないと判らない用語が多いシーンがあります。

拙い私の語彙力では他の言い回しが思いつかず、ややこしい言葉となっております。


どうしてもお気になった場合は後書きの言葉でイメージ検索してみて下さい。

「大体形になったか」

「ええ。副会長も動作自体は覚えています。体がいま1つばかりついていかないところもありますが」

「やはり後は、基礎体力と反復しかないな」

「ええ」



 放課後、第1体育館。


 6月の体育祭に向け、生徒会イベントの練習真っ最中である。


 私と話しているのはダンス部部長。ソシアルではなく創作ダンスがメインで、うちの学校で全国大会出場経験を持つ数少ない部活の内の1つだ。今回の生徒会イベントにおいて私の協力要請を快諾して頂いた上に、ダンス部練習場として割り当てられている体育館の一角を貸して頂いている。何から何までと大変お世話になっている状態だが、嫌な顔一つしないで協力してくれる姿勢は非常に助かっている。


 無論無報酬という訳ではない…らしい。らしいというのは実体が伴わないからだ。

 学内ネットにこのイベントは動画掲載され、そこに協力部名も出る。で、自分で言うのも何なのだが見栄えが整っている……私と由梨絵とが主役なので、宣伝素材としてはもってこいという事だそうだ。


 ちなみに自分自身についてだが、私の容姿が整っていると判明?、いや自覚してから自身をどう思うかは変わりが無い。実際、最初は美人だと思ってしまったし、妙に視線を集めてしまって意識もしていたが、結局は自分なのだ。男として美人と一緒に過ごしていれば、そりゃドキドキするだろうけれど、自分自身にドキドキする訳は無い。自分に恋するとか、どこの神話だって話で、数日もすれば全く気にならなくなってしまっていた。っていうか恋するなら、さなちゃんとするね。勇が居るから、それは駄目だけど。


 閑話休題。


 ともかく、そういった事で利点があり、且つ、私の薙刀経験による型や足運び等についての技を提供しているので、一応持ちつ持たれつではある。技というほどでもない物だけど、何かしら私の知識が役に立つのであれば、それはそれで嬉しいものであるし、下手に借りを作る訳にも行かないので、今回は十分な体制作りが出来たといえるだろう。そんな風に考えた言葉が素直に口から漏れる。


「本当にこの度のご協力感謝する」

「会長、お気にならず。こちらの部としても良い刺激になっていますから」


 私の言葉に余裕の仕草で応えるダンス部部長。ダンスをやっていると言うだけあって、立ち居振る舞いに華がある人で懐も大きい。そういう人だからこそ部長も務まるのだろうし、それに皆付き従うのだろう。だから他の部員も私達に非常に協力的で、且つ、ダンス部は女子限定なので『私が』ではないが、大いに助かっている。


 うちの体育館は第1、第2とあり、第1は3フロア構成となっている。で、このダンス部が使用しているのは3階。チアリーディング部とダンス部が利用しており、2つの部とも女子限定という事で暗黙的に男子禁制の場なのだ。

 先ほども言った通り私はいいが、約1名、頑なに練習状況を男子の前に晒すのを嫌がったのが居るので助かっているのだ。本番ではどうせ全校生徒の前に出るし、他協力者に男子が居るから今恥ずかしがってどうするんだとは思う。だけど理由は判らんでもないので、こうしてその1名の要望に従って、こうして女子限定フロアの奥まった所を借りている訳である。



「はぁはぁ……少し…休ませて……」



 私の目の前で床に両手を突いて荒い息をしている、その頑なに嫌がった張本人。


 ご想像の通り、私の友人で副会長の由梨絵である。


 まだ開始1時間しか経ってないはずなのだが、既に汗ダラダラでグロッキー状態だ。対して私は平素体を動かしていることもあるので、息は多少上がっているが倒れ伏すほどではない。


「由梨絵、やはり運動も定期的にしておいた方がいいぞ?」


 ここまで差が出るのは、やっぱり根本的な体力が問題なのだろう。そうして苦言を呈するも、流石に苦しそうなのを見かねて壁際にあったスポーツドリンクを持って手渡す。だが由梨絵はそれを奪い取るほどの気力すらないのか、ノロノロと受け取って口をつけた。あまりの力の無い挙動に、無理させ過ぎただろうかとちょっぴり罪悪感が沸く。


 勉強は私とほぼ同ラインの由梨絵だが、唯一の弱点は体育と言うか運動全般なのである。といってもスポーツ自体は嫌いでは無いそうなのだ。だが、まぁ、今までのやり取りである程度理由はお察しいただけるだろうが、彼女の生まれ持ったその体故に苦手となってしまっているのだ。


 端的に言えば「激しく動くと痛いし、見られるから嫌」だそうである。


 どこぞの人が言っていたなぁ。「愛ゆえに人は悲しまねばならぬなら、愛など要らぬ!」と。由梨絵は正に今その状態らしいです。


 ちなみに、さなちゃんにこの話をしたら「そんなに大変なら、私が半分貰ってあげるのに」と包丁を持って無表情のままこちらを振り向かれた。「姉さんも大きいよね。大変?」とニッコリ笑っているのに、全く笑っているように感じられない笑みを浮かべるさなちゃん。夕飯の準備中にする話題ではないと魂に刻みましたよ。

 そりゃさなちゃんは、こうアルファベット的に極めて最初に近いというか同じ文字が並んでいるんだけど、それも含めて全然可愛いから気にすること無いのに。誠に侭ならんものですねぇ。


 まぁ、確かに私も激しく動きすぎると少々痛むことはあるのだが、そこは学習して今ではちゃんとスポブラを着用している。ワ○ールさん、マジぱないです。ってか女性って本当に大変だよなぁと、千鶴子として生き始め、そういうのを気にしなければならなくなってしみじみ思う。男なんてトランクス一丁にTシャツだけで済むんだが、女性は○○の時用とパターンが非常に多いのである。しかも上下で。更にサイズによってはなかなか無いものもあったりで、女性はお金がかかるとは誇張無しに事実なのだ。


 で、由梨絵はその恵まれ過ぎた体故に、固定する為に小さいサイズを無理に着ければ苦しいし、ジャストサイズを着けてても大きいので結局揺れて大変なのだそうだ。世のサイズに中々収まりきらない女なのである。カップだけに。相変わらずおやじ臭い?まぁ気にするな!


 それに、どうしても視線が集まってしまうというのが考え物なのだ。理由が判らないことも無いというのはこの事で、まぁ男は往々にして、それが大きければ、そしてそれが揺れてしまえば目線が向いてしまうもんなんだよねぇ。ただ女の方からすると、視線丸分かりなんだがね。元男の私ですら気が付くんだから、チラ見であろうがガン見であろうが、さり気無くであろうが気が付くのだ。だって目の色違うもん。世の男性諸氏、貴方の視線はバレているぞ。


 そうして要らぬ考えを巡らせながらも、息を荒げている由梨絵が落ち着くのを待つ。四つん這いのまま壁際までずるずると這い進み、体を投げ出すように壁に背を着け座り込む。どうやら落ち着くのはもう少々かかりそうだ。


「そもそも……割り振り時間は5分……でしょう?何で……ぶっ続けで…する必要が…のがあるのよ」


 ゼェゼェと荒く息も絶え絶えに座り込んでいる由梨絵が不満の声を上げる。別に無呼吸運動しろと無理難題を言っている訳ではないし、30分無休憩で練習って運動部なら普通だと思う。それに今回行うイベント内容は体力が必要なのである。


「最初に説明したろう? 息を切らしていたら締まる物も絞まらない。見得を切るには動きを覚えることと、要所要所でピタッと動きを止める体力が重要なんだと」


 そういえばハッキリと言ってなかったが、我が生徒会もこの度の体育祭において、各軍応援合戦に参加する。


 別に生徒会が独立軍として参加する訳ではないので、全生徒の応援というか体育祭を盛り上げる為の一環活動として、という事になる。元は「生徒会は言うだけ」という一部生徒からの不満に対しての行動からだ。何かしらをイベントを盛り上げるよう指示をすれば、文句は出るし二の足を踏むのが大多数だ。だからこうして生徒会が率先して動くことで、「お前らは何もやっていない」といった意見を封殺し、こちらの意見を通し易くする。

 まぁ、ぶっちゃけさなちゃんの為に楽しい学校環境を作るという私の行動において、色々と動きやすいように生徒会の風当たり問題を解決しようとしたに過ぎないんだけどね。


 さなちゃんの為に!は今だ継続中なのだ。


 で、その応援合戦だが、持ち時間は各軍とも10分の割り振りとなっている。ただ生徒会自体の人数は少ないので、今回の計画ではこの5分の間で演舞を行う予定だ。生徒会自体の構成として人数はそれなりに居るが、体育祭では他の運営活動などもあるので割ける人員は限られてくる。なので実際には6名。私と由梨絵がメインを張り、残り4名はエキストラ的なお手伝いを募って行う事になっている。


 そのメインを張る私たち2人は、大人数で行う他応援団に対抗するべく、激しく魅せる動きで人数が少ないという点をカバーする。この辺りはダンス部部長に相談させてもらい色々と検討した結果、『剣扇舞もどき』を行うこととなった。もどきと付くのは、本来『舞』は詩等の吟にあわせ舞うのだが、それでは派手さに欠けてしまうので色々と手を加えるからだ。

 先ずは普通の吟ではなく、インパクトが在って雰囲気を盛り上げるという点に重点を置いた結果、和系打楽器で有名な『鬼太鼓楽団』という楽団の楽曲をベースに剣扇舞もどきを行う事になった。

 無論音楽だけではなく、手に持つ獲物と大振りな動きで勇壮さ、華やかさを演出する振り付けが必要なのでダンス部に。雰囲気に合った服装で派手さの演出が必要ということで漫画研究部に衣装製作をそれぞれ協力してもらっている。

 なぜ漫研かというと縫製部は応援団の方で手一杯だし、なぜか衣装作りが上手いのだから適材適所という訳である。それに体育関係に文科系部が協力できるという事も、幅広い交流の1つになる訳だし、なにより協力部が1点集中になっては不公平感が出る可能性があるという点から、複数の部活による協力は非常に歓迎するべきことなのである。


 で、最初は舞もどき方面に多少なりとて経験のある私1人が演舞を披露する事考えていた。しかし1人よりも2人でのシンクロさせた動きや、剣舞であるなら切結ぶような動きが入る方が絶対に栄えるということで、多数決の結果、私と由梨絵ということになったのだ。


 ということで、現在その『剣扇舞もどき』を練習している訳なのだ。栄えるように見せるには要所要所で美しく見せる所作、つまり手足を伸ばしピタッと止める『見得を切る』所作が必要になる。で、そうするにはやっぱり1に体力、2に体力なのだ。オリンピックの体操で平均台とかの器械体操を思い出してもらうと分かり易いと思う。演技後とかに体を一瞬止めるポーズだ。それがあるからこそ体操の内容も栄える。


 だから、その流れを体に覚えさせる為、ひたすら通し練習を毎日繰り返しているんだが、由梨絵はあまり平素運動をしていないので中々に厳しいらしい。物覚えのいい由梨絵は動作自体を覚えることは速かったのだが、どうしても今のままでは体力が追いつかない。だが体力をつけるには動くしかないので、ともかく動いてもらうしかないのだ。


「流れはほぼ完璧だから、由梨絵に足らないのはそれを行う体力だけ。体力をつけるには体を動かすしかないのだから、頑張るほか無いな」

「それは…そうなんだけど……毎日これじゃ死ぬ……」

「そう簡単に人間は死なんよ。それに今回に限る話ではないが、明らかに体力不足じゃないか? 体育の後等は、いつか倒れるんじゃないかと気が気でないぞ」


 由梨絵は平素の体育授業後、毎回机に突っ伏して暫く死んだ魚のような目をしている。それでも休憩時間が終わる頃には何とか自分を取り戻しては居るが、毎度毎度「体育なんて無くなれば良いのよ。フフフ……」なんて呟かれると、改善するべきじゃないのかなぁと老婆心が湧いてしまうのだ。それに体育で見せる動きを見る限り、運動神経は決して悪い方ではなく、寧ろ良い方ではないかと私は踏んでいるのだ。


「由梨絵が運動センスはあるんだ。磨けばもっと凄いと思うのだがな」

「……毎日の徒歩登校と体育の授業で十…分……運動しなくても、死にはしない……んだから、やら…なくても大丈夫よ」


 やはり要らぬお世話なのか、由梨絵の反応は芳しくない。運動はどうにも彼女の中では『やらなくていい事』にカテゴライズされているらしい。まぁ、こうして付き合ってくれているだけで御の字だが、さなちゃんの為にも完全を期せなばならないから、これ位でへばっていてもらっては困る。


 それに私自身の事情では有るのだが、正直なところを言えば何かに没頭していないと、要らない事を思い出してしまうのでこちらに集中したいのだ。落ち着いたと思っていたのに、最近なぜか何かの拍子にポンと思い出すことがある。無論思い出すというのはあの夢だ。私自身の変化なのかは判らないが、思い出すとあの朝のように挙動不審になりかけてしまう。だから余計な事を考える暇を自身に与えないように動く必要があるのだ。


 と言う事で、さなちゃんの為にも、そしてちょびっとだけ私の為にも、心を鬼にして由梨絵を動かす魔法の言葉を口にする。


「由梨絵」

「何よ」


 呼びかけに力なくぞんざいに返事を返す由梨絵に、私はソレを短く唱えた。




「太るぞ?」




 瞬間、由梨絵が持っていたペットボトルがミシリと音を立てて潰れた。



「私は太ってなんかいなぁぁぁぁい!!」



 獅子の咆哮と見紛うばかりの声を上げ立ち上がる由梨絵。


「お、元気が出たな。よし、じゃあ再開するぞ」

「あ、ちょっと、待って!もう少し休んで……」

「体が冷えては駄目だから待たない。鉄は熱い内に叩け、だ」


 人が気にしている事をワザと突いて立ち上がらせる事に罪悪感を抱きつつも、立ち上がった由梨絵の腕を取り練習スペースへと向かう。無論抵抗されるが由梨絵相手なら私の方が力が強いので、問答無用とばかりにグイグイ引き摺って行く。


「用法が違うわよ! 千鶴子の体力馬鹿ー! 鬼ー! 悪魔ー!!」

「悪魔でいいぞ。悪魔らしいやり方でやるから」

「この、この……おたんちんー!」

「由梨絵、意味がわかっているなら余り多用しない方がいいぞ、その言葉は……」


 由梨絵の暴言を聞き流す様を他の部員に苦笑されながら練習を再開する。


 こういうのも『楽しい』と言うべきだろう。


 聞けば、さなちゃんも赤軍応援団に入ったという。


 私と同じように、今回の体育祭を『楽しい』と感じてくれていれば良いのだがと、由梨絵を引き摺りながら独り言ちた。








 そうして1時間半後、本日の練習は無事終了した。


「……死ぬ」

「一時間半程度の練習で人間は死なないよ」


 少し暗くなり始めた学内を2人で歩く。本来ならそろそろ静かになってくる時間帯だが、イベント時期は最終下校時刻が通常より1時間だけ延長されるので、まだ至る所で威勢のいい声が上がっている。聞こえてくる声は応援団練習による掛け声だ。


「本気にならないでって言ったのに……それよりもさっきの件、覚えてなさいよ」

「いいじゃないか、少しくらい。昼の体育のお返しだよ」

「貴女はいいじゃない。私はこれ以上下手な刺激を受けて大きくなられたら困るのよ!」

「いや、良くは無いんだが……それと由梨絵、それは迷信だ」


 よたよたと歩く由梨絵が力無く抗議の声を上げる様に思わず苦笑が漏れる。


 だが最初の練習後に比べれば1人で歩いている分マシになった。

 最初は終了後1人で歩けず、私が肩を貸してやっとの状態で、2日目以降は筋肉痛でいつもの大人しい動作が輪をかけて大人しくなって居た。腕や太ももを突きながら「ほら見ろ、運動不足だからこうなるんだぞ」と、突く度に短く悲鳴を上げる由梨絵が妙に可愛くて、悪いとは思いつつも突き回していたら、「千鶴子のを揉んで良し!!」と着替え中に訳の分からない許可が出されて酷い目に会った。女子大半が代わる代わる人の胸を揉みあげるってどうよ……女子のスキンシップ怖いわ……っていうか腫れるがな。


「……あなたの完全主義振りは毎回凄いと思うけど、もう少し手加減しなさいよ」

「日が無いのだから仕方無いだろう。それに他応援団は私たちよりも長い時間練習しているのだぞ?」

「そう言われると何も言えない所が……ああもぅ」


 そう悪態をつくとガックリと肩を落とす。


「それに片方のメンバーとも明日から一緒だ。彼らだって忙しい中しっかりとやってくれている。だからその協力に見合う働きを、私達はしないといけないのだ」

「……わかってるわよ。やる事はちゃんとやるわよ」

「がんばろう、由梨絵」

「はいはい。まったく……」


 釈然としない風だけど、少し笑いながら「貴女と居ると、本当に面倒だわ」と小さく返事を返し、由梨絵は幾分か力が戻った歩く姿を見せ、私の隣をに改めて並んで歩いてくれた。今回の事については何処かで由梨絵に報いてあげないとな。


 そういえば先の言葉に出た『片方のメンバー』というのは、エキストラ的なと言った方達だ。どうも良い言い方が見つからなくてエキストラと言ってしまったが、彼らにはどちらかと言うと演出、音楽方面で協力してもらっている。使用する鬼太鼓楽団の楽曲は屈強なる男衆による大太鼓の力強い演奏が売りの1つだ。

 で、そうなってくると演者は音楽の嗜みが有る人となるのだが、吹奏楽部には生憎ながら体格の良い人は居ない。で、太鼓の鉢裁きだけでいうなら別に吹奏楽部でなくても運動部で体格の良い人でもいいのでは?という事になり、必然的に運動部男性で構成されるメンバーとなったのだ。


 なおメンバーはこちらでリストアップした。といっても、してくれたのは庶務の子なのだが。そうして突然呼び出され事情を説明されたにも拘らず、全員が漏れなく賛同の意を示してくれたのは、反対意見が出るのではないかと思っていた分、嬉しい誤算といったところだった。学校校則の改変や、予算見直しなどによる活動のお陰でこういう時にも協力的になってくれるのはいい傾向だ。まぁ嬉しくない誤算もあったがね。

 そうして今は明日からの予定確認の為、自分たちの練習後にそのメンバー達の元へ足を運んでいる。こちら側には書記の子がついてくれているが、やはり同じ事をする仲間ではあるし、お願いした側なのだ。なので直接足を運ぶのが筋だろう。律儀ねぇと由梨絵は言うが、円滑な体制を築く為には最後に物を言うのはやはり足なのだ。


 歩いていく先に第2体育館が見える。彼らは今そこで練習しており、近付くにつれ和太鼓の音が漏れ聞こえてくる。数年前に耐震工事時に防音処理も行われたことで漏れ聞こえる音はかなり小さい。だが、体育館の扉を開けた途端、腹の底を揺さぶるような力強い音が私達の体を叩いた。


「……気持ち良いな」

「私は琴とかの静かな方が好きなのだけどね」


 邪魔にならないよう静かに戸を閉め、壁際に移動してから練習風景を観察する。体育館中央に設置された大太鼓を2名が両側から。そしてビヤ樽型でお馴染みの長胴太鼓を2つ、それを1名づつ受け持っている。本当は神楽笛等も元楽曲では使用されているのだが、そこまでやるのは無理なので今回は音源+太鼓オンリーだ。

 だが、たかが太鼓だけと侮ること無かれだ。たった3つでも、それを叩く男衆の腹の底からの力強い掛け声、そして鉢によって生み出される雷のような深い音、これだけでも圧倒的な程の雄々しさが伝わって来る。そしてその太鼓を叩くのは非常に均整の取れた体付きの、まさに勇壮という言葉が似合う体操競技部、柔道部、ラグビー部、そして、剣道部から集まってくれた4名の男子生徒だ。雰囲気としては満点といっても差し支えない。


 太鼓の音が鳴り止むと、私は自然と拍手していた。練習自体に顔はちょくちょく出していたが、こうして通して聞いたのは初めてだったのだ。よくもまぁ短い時間でこれだけの音が出せるなと、心の底から素直に感嘆してのものだった。


 だが拍手したことで視線を集めてしまった。目立つ積もりは無かったので、思わず自分がやらかした事に顔を覆いたくなるが、そんなことをしても状況はひっくり返らない。


 私は1つ咳払いをすると、自分を落ち着かせて改めて声をかけた。


「始めて通して聞かせてもらったが、素晴らしいの一言だな」

「「「押忍!!」」」


 太鼓を叩いていた4名の内3名が威勢の良い挨拶と共に、頭を下げる。てか押忍って普通に返事しようよ。私、君らと同級生なんだがな? なんか極道の妻にでもなった気分で非常に居た堪れないぞ。


「お褒めの言葉を頂き、恐悦至極といった所だな」


 大太鼓を叩いていた剣道部の人が、更に堅苦しい言葉でタオル片手にやってくる。


(うっ……やっぱり来るかぁ…)


 内心頭を抱えつつも、極めて平静を取り繕う。


 ここまで言えばお察しいただけると思うが、こうして目の前にやってきたのは剣道部主将君だ。なんか悔しいけど名前を覚えてしまったので、ちゃんと名前で呼ぶ。下の名前でなんてのはありえんがな!!


「そんなに謙遜する事はないだろう。それに同級生なのだからもっと気軽に話して欲しいのだがな、金剛寺君」


 剣道部主将君改め、フルネーム、金剛寺こんごうじ 成次なりつぐ君。学業成績は上位グループという訳ではないが、それでも十分な成績を収めていつつ、剣道においては2段の腕前。秋の試験で3段は確実に取れるだろうとは勇の談だ。中学生時代には上位入賞は逃したものの、勇と同じように全国大会を経験している。高校に入ってからは対戦相手との相性もあるし、今一歩という試合続きでそこまで目覚しい結果は出せてはいないものの、個人で言えば勇と対等以上に戦える腕前だそうだ。


 言っておくが、名前は覚えたくて覚えたんじゃないぞ? 別に、その、一緒に練習してくれる人の名前を覚えるのは礼儀として当然だから、色々見聞きして覚えただけだ。他意は無い。無いんだったら無いんだ! メンバー候補に名前があっても名前を覚えていなかったから、気が付かなかったのも仕方ないんだ。気が付いていたらリストから除外していた。公私混同? いや、そのあれだ。円滑な活動をする為には、感情面で整理のつかないメンバーと一緒にというのはよろしくないから仕方の無いことなんだ!


 実は金剛寺君との第一次遭遇以来の問題は未だ解決して居ない。なんというか今更どう声をかけていいか判らないので放置してしまっているのだ。藪を突いて蛇を出すわけにも行くまい? こうして忘れてくれれば一番なんだけどなぁと淡い期待を抱いてはいるんだけど、こうして同じ応援団として活動するようになってから良く話しかけられるので、多分望み薄だろう。


 多分これも夢をぽんぽん思い出す原因の一因に違いないので恨み言の1つも言いたいところだが、私の夢なんて金剛寺君には与り知らぬ話なので言うに言えない。それに礼節も弁えているので文句のつけ様も無いのが、なんと言うか腑に落ちないというか腹が立つというか全く…もう…。


 そんな私の内心の葛藤などは無論伝わるわけも無く、金剛寺君は私の目の前までやって来た。


「それは会長にも言える事ではないのか?」

「…これが私の素なのだ。変える必要は無いだろうし、そう簡単に変れんよ」

「大胆な改革を推し進めた会長らしからぬ言葉だな」


 少々憮然とした表情で視線を逸らしながら答えたが、それを気にする風でも無く爽やかに笑われてしまった。ぬぐぐぐ……。


「まぁ、生徒会長殿に今更女言葉を使われても、確かに不自然だろうな」


 その言葉を受けて横に居た由梨絵が「確かにそうね」と小さく呟き、周りもそれに賛同するかのように小さく笑い声が上がった。


「まぁ……私の言葉遣いはさておいてだ。こちらを手伝ってくれている書記の子から聞いているとは思うが、明日からの予定を確認しに来た」

「なるほど。皆集合だ」

「「「押忍!」」」


 いや、だからね……っていうかなんで金剛寺君が仕切ってんの? まぁ書記の子は2年だから3年を仕切れって言っても無理か……そこまで考え、もういいやと鞄から資料を取り出し説明を開始した。


「体育祭まで残り2週だ。個別練習を今日で終了とし、明日からは合同練習とする」


 私の後ろでハァと重い溜息をひそかに漏らす由梨絵。判ってはいるが個別で練習して最後に一発勝負なんてことは出来ないので、敢えて気が付かない振りをして説明を進める。


「練習時間は5時から6時の1時間のみ。運動部の諸氏には部活を途中で抜けてもらう事になるが了承して欲しい。練習場はココ第2体育館だ。練習場の準備は生徒会の方で行うので、時間になったら集合して欲しい」


 メンバーを見回しながら言葉を続ける。そういえば皆私より背が高い……くそぅ、なんかどうでもいいけど悔しい。


「短時間ではあるが、今までの基礎練習の合わせが主軸となるので通し練習の繰り返しだ。また、衣装の仮縫いが明日16時からあるので忘れないでくれ」


 何か質問は?と見回すと、皆問題なしと言わんばかりに頷き返してくれた。


「では、本日の練習はここまで。ありがとう。後は生徒会に任せてくれ。では解散」


 お疲れ様っしたー!と威勢よく集まっていたメンバーが散ってゆく。余談であるが太鼓はキャスター付きの台座に載ってるので、普通に女子でもっていうか1人でお片づけ可能だ。まぁ手伝ってもらえばいいのだろうが、本来の部活を行った上での協力なので手伝いを申し出られたがそれは断った。施錠等もあるので役割分担という奴だ。別に一緒に居たくないからとかじゃないぞ? ないんだぞ?


「お疲れさん、会長」


 金剛寺君もそう挨拶を残して軽く手を上げ体育館から出て行った。


 なんとなく振り返って後姿を追いそうになったが、なんか振り返ったら負けな気がして「さぁ、さっと片付けて私達も帰ろう!」と無駄に元気良く後片付けを開始したのだった。









 果たして最近夢を思い出すようになってしまったのは、これを予知していたからだろうか。



 周りに人が居なければ思わず叫んでいたであろう。



 なんじゃこりゃあ!と。



 生徒会主宰応援団、男女混合練習第1日目の衣装合わせの日。


 仮縫いという話で訪れた漫画研究部の一室で、「着方にコツが要りますから最初はお手伝いしますね」と言われて着付けを手伝われ、更に髪まで整えられ、終わってみればこちらの要望とは全く違う姿になっていたのだ。

 着せられる前に気が付けよと言うかも知れないが、複数人の女子に囲まれて体触られまくってそれどころじゃなかったんだよ! それに仮縫いじゃなくて殆ど出来上がってしまっていた事もビックリだったんだよ!


「部長、これはどういう事か?」


 思わず強めの口調で問い質すような事をしてしまう。だが目の前の部長は「どうですか、仕事の程は」といわんばかりの誇らしい表情をしている。


「趣旨を説明して頂いた上でイメージするなら、会長は鍾馗様ではなく戦姫でしょう! ですが鎧武者姿では会長の素晴らしさは一片足りとて伝わりません!! ですのでこちらをご用意させて頂きました!!」


 全く悪びれた様子も無く、逆に良い仕事をしたと言わんばかりの爽やかな笑顔を向ける漫研部長。


 私がこの企画を提案して服装の説明をした際、和楽器を使用する事も在るし、舞をアレンジしたものでもあったので、神楽の鍾馗様のような感じでと依頼した。今回は男性的なイメージを私、女性的なイメージを由梨絵が担当して舞う予定だった。敢えて男性的なイメージをチョイスしたのは、由梨絵がそもそも体的に無理があったというのもあるし、私自身がそうすることで、勇に「ほら、私は男っぽいぞ? さなちゃんの方が可愛いぞ?」と暗にアピールするつもりだったのだ。 姑息? アーアーキコエナーイ!!


 だというのに、大型の姿身に映る私の姿は、何処をどう見ても鍾馗様などではない。


 私自慢の黒髪は纏められサイドアップテールになり、そこには金銀色とりどりの螺鈿細工のような簪が施されている。そして服装は黒の着物?……のはずなのだが、腰まで大きく入ったスリットで太ももがばっちり大解放状態。更に襟が大きく開けられ、胸の谷間が丸見え状態である。着物も黒単色ではなく、袖や褄先に至るにつれて緋色のグラデーションになっており、至る所に金の蝶が刺繍されている。


 どう見てもとあるゲームに出てきた銃撃って戦国で無双してたお姫様です。最初の採寸でピッタリ合わせてくる漫画研究部スゲー!! ってかこのゲーム、今生でも発売されてたんか……って違ぁぁぁう!!


「千歩譲ったとして着物ならば、まだ譲歩できただろう。だが、これでは着崩れてて舞えんではないかっ!」

「大丈夫です! 襟元は透明なバンドで合わせ部分を止めてありますし、襟自体に固めの芯材が入っているので崩れることはありません! 勇壮な音楽が流れる中で艶やかな姿で舞う会長。そして、そのお相手を務めるのは!!」


 なぜかうっとりとした表情で振り返り、ゲストを紹介するキャスターのように手を差し向けると、着替えスペースに設けられていた衝立から由梨絵が飛び出してきた。


「何よ、これぇぇぇぇぇ!!」


 あ、由梨絵は叫んだか。


 由梨絵は、本来は白拍子のような姿になる予定だった。


 だが、出てきた姿は白拍子に近いようで全く近くないものだった。緋袴までは合っていると言ってもいいだろう。だが緋色一色のはずが、大きく桜がデザインされたような意匠が施されている。そして白拍子ならば襦袢と白衣と着重ねるはずなのに、白衣は無く、襦袢も肩なしの真っ赤なトップスになっていた。ぴっちりとした素材の為、ボディラインが強調されまくりで、ハッキリ言うなら「うわ、デケェ!」で、腋丸出しである。

 そしてその上にはノースリーブベストの様な丈の長い薄く透けた千早のようなものを羽織っている。透けて見えるのでなんかエロいです。そして本来は一緒のはずの袖が分離され、二の腕あたりから房紐のようなもので留められている。そしてウィッグか垂髪なのかは判らないけれど、袖の房紐と同じような飾り紐が編み込まれたお下げがサイドから垂れている。


 何処をどう見てもデカイ傘振り回して戦国で無双してた女性芸能者です。


 確かに私は白拍子のようなとか、鍾馗様のようなとか曖昧な感じで言ったさ。今回は見栄えとかを重視して服装的な意味は全く関係ないとも確かに言ったけどさ。


 物には限度ってのがあるでしょうがぁぁ!!


 思わず私が食って掛かろうとしたが、まるで軍人のように両手を後ろ手にまわして直立不動となった漫研部長が私を遮った。


「会長の仰りたいことはわかります。会長、副会長は本来ならば和風で攻めるよりも、ビクトリア朝の服装、分かり易く言うなら黒ゴス、白ゴスがお似合いになる筈です! しかし和というエッセンスが必須であるならば着物しかありえません! なれば冬桜の双璧たるお2人をドレスアップするなら、このチョイス以外ありえません!!」


 いや、全く言いたい事あってないからっ!! 全然分かり易くないからっ!!


 何が彼女をそうまでさせるのかは判らないが、私と由梨絵が並んだことでテンション大爆発状態で部長は熱っぽく語り続ける。


「仮初めとは言え互いに切り結ぶ運命にある会長と副会長! 胡蝶の夢のように儚くも美しく、そして刹那の悲しみが交錯する!! しかしそこに凄惨さは微塵もなく、生と死を表すかのような黒と白が互いを求めるように惹かれ合い、また裂かれ逝く!! そして最後に残るのは生も死も包み込む紅蓮の炎!! そう、それこそがまさしくお2人の愛を結晶化した、最高の舞台衣装なのです!!」


 さながらオペラ歌手のように息を荒げて意味不明な台詞を言い切った漫研部部長に対し、なぜか漫画研究部部員から万雷の拍手が沸き上がる。なに、このアウェー感は。


「ちぃーずぅーるぅーこぉー!!」

「私を責めるなっ!! と言うかどう見ても私も被害者だろう!!」


 顔を真っ赤にしながら涙目で迫る由梨絵。気持ちは判らんでもないが私だって同じなんだ!!




 しかし、その混沌とした舞台に救世主が!!




「失礼します。着替えが終わったと聞きましたので男子メンバーをお連れしましたー!」


 几帳面にノックしたのはいいのだが、こちらの返事を待つことなく扉が開け放たれ、漫研部員に引き連れられ太鼓メンバーが室内に入ってきた。


 ええ、どう見ても救世主ではありません。むしろ招かれざる客です。


「な、ちょとまてぇぇぇ!」

「入ってきちゃ駄目ェェ!」


 私と由梨絵の声が重なって上手く伝わらなかったのか、それとも大声だったのが気になったのか、私達の必死の言葉も虚しく太鼓メンバーが全員入ってきてしまった。


 そうして入ってきた彼らによって、更に部屋のカオス度が増した。


 彼らの格好は私の指定だと、剣道胴着と武道袴。サラシを巻いて上半身片側だけ脱ぐという簡素な出で立ちの筈だった。長着だけど遊び人の金さんとかを思い浮かべてもらうとわかりやすいだろう。


 だが実際に出てきたの男衆は上半身片側だけ脱ぐという点だけが合っているだけで、他は全く違っていた。まず、全員が妙に引き絞られた武道袴のようなものを穿いており、そこかしこに鋲が打たれた真ん中だけ無い剣道の垂れが着けられている。そして薙刀ではお馴染みのすね当ても着けられているが、観世水のような模様が金で施されている。上半身は確かに片側半分だけ何も身に着けていないが、弓道の胸当てを肌に直につけてラメの入った射籠手を着けている。


 ええ、どう見ても三味線でロックスターな蝙蝠と揶揄された、やっぱり戦国で無双な人です。


 入ってきた太鼓メンバーの一番前に居たのは金剛寺君。


 うん、確かに夢に近いくらいマッチョで引き締まった体付きをしている。


 目と目が合う。


 私で止まった金剛寺君の視線がそのまま下に流れる。


 足元まで行って、また目が合うと、少し下がって胸辺りで止まる。




「会…いや、東条に瀬尾野。俺達が言うのもなんだが、流石にその姿はどうかと思うんだがな」




 顔が赤いぞ、金剛寺君。


 あと、残りの3人も鼻の下が長い、ってかお前ら由梨絵ガン見し過ぎ。


 まぁ、うん。男なら仕方ないよね。



 …………



 ……



 …



 で、済むかぁぁぁぁぁ!!ゴメンで済んだら警察いらんのじゃボケぇぇぇぇぇぇぇ!!





「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「出て行けぇぇーーー!!」




 響き渡る由梨絵の悲鳴と私の怒号。



 どこでボタンを掛け間違えたのか、それともこうなる運命だったのか、それとも人の心を玩んだ罰が私に下ったのか。私の今回の目論見は最早瓦解して、どうしようもない状態へとシフトしてしまっていた。



 頭が混乱して、ここからどう現状を修復したら良いか全く思いつかない。



 とりあえず偉大な先人の言葉を借りてみようと思う。



 なんでそうなるの?

千鶴子弄りをするつもりが、出来上がったら由梨絵さん弄りになっていた罠。

まぁともかく下拵えといったところでしょうか。

細工は流々……かは判りませんが、仕上げとなる次は久々の勇一郎回の予定です。


○服装用イメージ検索用ワード 戦国な無双

千鶴子:濃姫

由梨絵:阿国

金剛寺:長宗我部元親


――――――――――――

2013/5/1 誤字とか表現等所々修正

2013/5/19 誤字修正


閑話


「うっわ、副会長すっごーい」

「ほんとだ。すごーい。その細さで、それは凶悪過ぎですよ」

「ちょ、ジロジロ見ないでよ……」

「会長もすごーい。ってか腹筋割れてません?」

「めっちゃくびれてるよ。いいなぁ~」

「一応薙刀の基礎鍛錬は続けているから、そのお陰だと思う」

「時代は薙刀ダイエットか……来るかも」

「どういうのよ、それ」

「ダイエットって言えばビリーさんって何処いったんだろね」

「最近見ないね。今はカーヴィーさんだし」

「どっちが効果あるんだろうね。汗だくになるのは変らないけどさ」

「汗かかずに痩せる方法ってないかしらねー」

「会話が飛ぶな……ところで部長、シャワー施設まで借りてよかったのか?」

「大丈夫ですよ、時間内ですから。それにが学校の施設は学生の為のモノ、ですからね」

「汗だくの状態で帰る訳には行かないし、正直助かったわ」

「ねぇ副会長。揉んでいいですか?」

「駄目」

「あ、あたしもやってみたいー!」

「わたしもわたしもー!」

「なら私もー!」

「どうぞどうぞ」

「なっ! 千鶴子っ! あ、ひゃっ! だめっ!」

「ほーれ、ここがええのんかーってか重っ!すごっ!」

「すべすべでもちもちだー」

「うわぁ…ふにふにだぁ…こんなクッション欲しいなぁ…」

「由梨絵、呪うなら昼間の己を呪うんだな」

「ちょ、待ちなさい千鶴子っ! ってか皆止めて! 待て! 待ってぇぇぇぇ!!」

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