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第十話 「私達の一先ず」

※ご使用上のご注意

前半はただのパロディというかイメージ引用の多い馬鹿話です。

本当なら前話の最後につく物を書き足して膨らました。何となく肩の力を抜き捲くってやってみただけなので、お気軽に読み飛ばしてください。

 嫌な夢を見た。



 嫌というか変というかカオスというか、ともかく二度と見たくないと思った夢だ。



 責任発言を発した晩の事。


 この日の夜の鍛錬までは問題なかった。大体私が終えて戻ってくる頃、同じく庭で夜の素振りを丁度終えている勇と二、三生垣越しに話す。よほど天候が酷い時以外はずっと続けれていた、何時もの日課という奴だ。その日も特に普通に話をして終えた。だが、終わり際に勇から「じゃあ、千鶴子さん。また明日」と言われ「ああ、また明日」と返したときに、何故か心臓が跳ねた。その後、お風呂に入って湯船に浸かりながら改めて今日一日を振り返っていると、妙に収まりが悪いというか、落ち着かなくなってしまったのだ。

 お風呂上り後のストレッチも何だか気合が入らず、本来なら勉強をして寝るところが、どうにも自分の発言『責任は必ず取る』が頭から離れず、集中力を欠いていると思ったのでさっさと寝ることにした。集中力を欠いているときは、何をやっても全く意味が無いのは実体験からくる教訓だ。納期に追われ3徹目に意識を失うように机に突っ伏し、その後起きて見たコードは自分が書いたであろうにも関わらず、2日目辺りの記述から何が何だかサッパリだったという、ありがたくも無く、忘れも出来ない記憶のお陰である。

 ということで、勉強にしても仕事にしてもだけど、定期的な休みを挟み、集中力を持続できるようにしているのだが、今日は何故か落ち着きを取り戻すことが出来ず、結局今日の復習は諦め、何時もよりも相当早く床に入ったのだ。


 で、その時見た夢がそれだ。


 夢というのは自分を俯瞰的に見る事がよくあるのだが、今回見た夢もそうだった。


 場所は真っ白な協会。だが立地は断崖絶壁という、非常に意味深的なリアリティがあるというべきなのか判らないところだった。リンゴーンリンゴーンという重厚な鐘の音に合わせて結婚行進曲が響き渡り、ルチアーノ・パ○ァロッティ似なザビエル禿のおっさん達が、テノールではなくバリトンボイスでアメイジング・グレイスを歌い出すという、非常に騒々しい空間が広がっていた。


 そして、その協会のヴァージンロードを歩くさなちゃんが居る。満面の笑みを浮かべ、幸せそうな表情で純白のウェディングドレスを身に纏う。その姿は正に女神そのものと言ってもいい程に神々しい。


 その横を歩くのは勇。ライトグレーのロングタキシードを身に纏い、今よりも背が伸びて爽やかさと共にイケメン度が増し増し状態。彼もまた、さなちゃんと同じように幸せそうな表情を浮かべており、使い古された白い歯がキラリと輝く古典的表現を伴っている。


 だが問題はその新郎、つまり勇の右を、なぜか同じく純白のウェディングドレスを身に纏った私が歩いているのだ。そして私が浮かべる表情も、なんというか非常にだらしの無い程に有頂天と判る笑みだった。


 更に私もさなちゃんも勇の腕を取っているわけではなく、勇の首に巻かれた首輪から伸びた鎖を二人とも握っているのだ。どう見ても断頭台に向かう罪人とそれを引っ立てる看守である。

 この時点でこれは非常に変だと思うのに、夢というのは不条理でそのまま事は進んでいく。


 右の席に座る勇のご両親からは「でかしたぞ、我が息子!重婚罪だが構わん!」「早苗ちゃん、千鶴子ちゃん、2人とも鎖を放さないのよ!いかに手綱を上手く操るかが夫婦生活円満の基本なのよ!」とか、左の席にはさち枝お祖母ちゃんが居て「曾孫は6人以上欲しい!名前候補は仏壇の引き出しの底にあるから忘れるんじゃないよ!」と、どう考えても結婚式会場に似つかわしくない内容の声がかけられる。


 そうしてやってきた祭壇の前で、さっきのパ○ァロッティ似なおっさんの1人が神父姿となり、クワッと目を見開き誓いの言葉を放った。なんだかモ○クズ様みたいにダパァっと涙まで流してる。だけど、誓いの言葉は敬虔であろう神父などとは程遠い言葉だった。



「汝、以下省略! さぁ、熱いヴェーゼをぉぉ! ブルァアアァァァァァァァァ!」



 ちょ、待てぇぇ!何が以下略だゴラァァァ!と、それを見ている私は叫ぶのだが、何一つ声にならない。そうして勇が、頬を染めたさなちゃんと私のヴェールを捲くり上げると、2人とも静かに目を閉じる。


「勇一郎、私以外の女の人を見たら尻竹刀だからね。刺すか叩くかは選ばせてあ・げ・る」


 さなちゃん、頬を朱に染めながら可愛く言う台詞ではありませんよ?ってか、勇に目を潰せと言っているに等しいんだが。こういうのってヤンヤンって言うんだっけ?ヤンデレ?いや、まぁどうでもいい。


「勇、私を嫁にした事を後悔するが良い! フハハハハハハハ!」


 ……ちょっと待て私。自分で自分の事を言うのもなんだが、アレ過ぎないか?てかなんだ、その高笑いは!



 しかし、その混沌とした舞台に救世主が!!



 勢い良く開かれたチャペルの入り口に現れたのは、何故か白無垢を纏った由梨絵だ。しっかり文金高島田に結われた髪に角隠しまでして、普通とは思えないほどの巨躯をした白馬にまたがっている。その姿はフルアーマー由梨絵とでも言うべきか、白粉に紅を引いた唇が映えて妙に艶めかしい。だが口にする台詞は救世主でもなんでもない、更に場をややこしくする様な台詞だった。



「……この泥棒猫!!」

「お義母様!?」



 由梨絵、私共々に非常にノリノリである。突っ込みつつも祭壇へやって来た由梨絵は、私の手を取り引っ張る。が、勇も負けじと由梨絵とは逆の手を引っ張る大岡裁き状態だ。


「誰がお義母様かっ!? 誰がっ! 千鶴子は私の玩具! 千鶴子を玩んで良いのは私だけよ!」

「千鶴子さんは俺のご主人様なんだ! 瀬尾野先輩とは言え渡す訳には行きません!」


 由梨絵も由梨絵だが、勇も大概過ぎる。もし現実でこのようなことがあったら確実に何もかも捨てて逃げ出すと思うような、目を逸らしたいほどの酷い三文芝居が私の意志とは関係なくドンドン進んでいく。その後ろでさなちゃんが「勇一郎、私だけを見てって言ったよね?逝ったよね?」とガトチュ○ロスタイル的に竹刀を構えている。さなちゃん、それ以上いけない。


「さぁ、三千大千世界へ旅立つのよ!」

「千鶴子さん、俺は千鶴子さんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


 由梨絵だけに百合的な方向ですか?あと、勇、尻大丈夫か?と最早声に出して突っ込みする気力も起きないが、とりあえずそう思っていると私が俯きながら喋り始めた。


「由梨絵、気持ちは嬉しいけど、私は一人用なんだ。それに…」


 急に声のトーンが低くなる。うつむいた私の描画が妙に線の多いものになり、更にはオーラまで吹き上げ出す始末。




「実は……私は男なんだ!!」

「な、なんだってー!?」




 驚愕?の事実が私の口からもたらされると共に、バリバリーっと北○の拳の某主人公のように筋肉が膨れ上がり、ウエディングドレスが敗れ弾け飛ぶ。そこから現れたのはスカートとヴェールだけを身に付けた筋骨粒々な剣道部主将君だった。うん、私の想像力はどうかしている。


「さぁ、見事私を嫁にしたくば捕まえてみるがいいわ! ヌハハハハ!!」


 内○賢二さん的な野太く無駄にいい声で、私?は勇をお姫様抱っこしつつ由梨絵が乗ってきた白馬を駆り、呆気に取られたみんなを残してヴァージンロードを駆け抜けて行く。




 そして場面は暗転し、昨日と同じように2人きりの生徒会室。服装も学生服、姿もいつの間にかに戻って、差し込む夕日に紅く照らされる中、超至近距離で向き合っている。なんか要らん演出が増えているぞ……演出家出て来い!!無駄なもんつけやがって、予算には限度があるんだぞ!!




「ふふ、これでもう邪魔をするものは居なくなったな、勇」


 しゅるりと音を立てて制服のリボンを外す私。ワンタッチタイプのはずなのに、なぜかスカーフのように解けて広がる。ブラウスのボタンも躊躇無く外していく。なにやってんだ、止めろよ、勇!見るな!いや、真剣に見つめられても駄目っ!あっち向け、あっち!!


 そんな私の思いも虚しく、止まる事を知らないブレーキの壊れた車の如く、夢の中の私は状況を悪い方へ向けて転がり落ちていく。


「……2人で大人の階段に突入だ」

「俺、千鶴子さんと一緒になれて本当によかったよ」


 勇がそう囁きながら、パサリとブラウスを床に脱ぎ落とした私を抱き寄せる。私が目をそっと閉じ、勇が顔を近づけてくる。お互いの背丈が近いこともあって、顔の位置も殆ど同じ高さ。本当なら、こうちょっと私のほうが踵を浮かすようにするのが絵的に良いのか……いや、何考えてんだ。ってか勇、何やってんだよ!!さなちゃんほったらかして……ってか、私もなにやってん!?目を閉じながら脱ぐな辞めろ止めろ!そんな安くないぞ私の体はっていうか別に見せてもいいとか悪いとかそういうんじゃなくて、あ、いやちょ、スカートに手かけんな!ほんとやめ……!!






 そうして夕日差す中、影が1つに重なった。






 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!







 まぁ予想通りここで目が覚めたんですよ。


 ええ、私の大絶叫と共に。


 その後の事は正直話したくなので三行で。





 さなちゃん、私の部屋へ慌てて入って勢いあまって私に向かってダイビング。

 勇、声を聞きつけ尋常ならざると窓ガラスぶち破って竹刀片手に我が家へ突入。

 私の部屋へ駆け付けた勇、乱れた布団の上で重なる私達を見てフリーズ。






 まぁ、無駄に洗練された(以下略)な土下座を再度見ることになった後の事は察してください……。






 ご近所に配る菓子折りがいくつか必要になったとだけ言っておこう。











 姉さんがまたおかしい。



 またかと思うが、最早ここまで来ると正直芸なのか、何かの病気ではないかと心配になって来る。私も姉さんも関西の生まれじゃないと言うのに。そういえばお笑いで同じネタを繰り返して笑いを取る事を「てんどん」と言うらしい。うん、どうでも良い知識だ。


 昨夜、ちょっとしたイベントがありつつも何とか床に入って再度寝たのが夜半過ぎ。


 勇一郎が窓ガラスを割って入ってきたのでガラスも散って危ないし、セキュリティ上問題ありという事で勇一郎のご両親が「危ないから今日は家に来なさい」と心配してくださった。だけど一応雨戸もあって鍵もかかるし、勇一郎もワザとじゃないのだからと丁寧にお断りをしてその夜はお開きとなった。だけどやはり窓と窓ガラスを壊した責任は取ると、今日、勇一郎のお母さんがお仕事を休んで修理に立ち会ってもらう事になっている。


 確かにかなりビックリした出来事ではあった。


 23時過ぎ頃、私もそろそろ寝ないと布団に入った辺りで姉さんの部屋から悲鳴が聞こえたのだ。絹を裂くような声というのは正にああいうの言うのを指すのだろう。あまりの声に考えるよりも体が先に動いて、私は姉さんの部屋に駆け込んでいた。暗くてよく見えなかったが寝床から半身を起こしていた姉さんが目に入る。何事も無いように見え安心した所為か足からカクンと力が抜けて、そのままの勢いで姉さんの上に倒れ込んで押し倒してしまった。それと同時に居間の方から窓ガラスが叩き割られた音が聞こえ、こちらへ向けて激しい足音共に誰かが入り込んできた。


 ガラスの割れる音や、姉さんの悲鳴、無遠慮に響く足音など、いつもと全く違うことが立て続けに起こり、頭が真っ白で身動き1つ取れなかった。私はそんな体だというのに、姉さんが強く私を抱きしめてくれた。

 だけど直ぐにかけられた「大丈夫か!?」との聞き慣れた声に、姉さんの手の力と強張った私の力が抜けた。そうしてようやく明かりがつけられた後、部屋に駆け込んできたであろう勇一郎は、竹刀片手に切羽詰った険しい表情から一転、顔を真っ赤にしてしばらく私と姉さんを交互に見た後、そのまま後ろに下がって部屋から出て戸を閉めてしまった。


 再び戸を開けると、勇一郎は廊下で土下座をしていた。


 今の状態は確かに何かしらの勘違いをさせる可能性があるものだったのは素直に認めるしかないし、勇一郎に非があるものではないのでお仕置きは無しだ。

 姉さんは夢見で相当に何かあったのか肩で息をしていて、パジャマも私がすがりついた所為で着崩れているし、私は姉さんの上に倒れこんでしまってお尻を突き出したような格好になってしまっていた。その勢いでパジャマの上がめくれ上がってお腹とか丸見えだったのだから、不可抗力というものだろう。

 その後、勇一郎のご両親も駆けつけ、更に誰かが呼んだのだろうサイレンの音まで聞こえてきた。もう、なんというか何処の事件現場ですかっていう状況だった。姉さんも私も勇一郎もここ数年分くらいは頭を下げたのではないかと思うくらい、ひたすらに平身低頭し続けた。で、まぁ何とか事が終わったのが夜半過ぎ。正確に言うと深夜1時辺りだった。


 で、そうして向かえた朝。


 何時ものように起きると、何時ものように朝食の準備を整え終えた姉さんが居た。普通に見えるが、すこしだけ顔が赤い。あれだけエキサイティンなことを起こしたので、流石に恥ずかしいのだろう。事実原因でない私でも恥ずかしいのだから。だけど、それでも普通を装い、いつも通りに家事をこなし、身だしなみも完璧なのは流石姉さんだと思う。


 そうしてざっと片付けられた居間で朝食をいつも通り美味しく頂き、2人して7時丁度に家を出る。お弁当も持ったし、身嗜みに乱れも無し。


 姉さんもいつも通り今日も綺麗……なのだが、朱の差した頬に少し潤んで見える伏せ目がちな瞳が身に纏う雰囲気をガラリと変えてしまっていた。いつものキリっとした感じではなく、すこしポーっとした表情だから、なんだかこう保護欲に駆られると言うか、持ち帰りたくなるというか、妙に目が離せない状態になっていたのだ。朝食を食べているときからこうなのだけど、ポーっとしていたかと思うとぷるぷると首を振って何時もの凛とした表情に戻る。でも、しばらくするとまたポーっとした表情に逆戻り。見ていて非常に楽し……じゃない、非常にレアな姉さんだ。


 もしかして本当に体調が悪いのかと思って「姉さん、体調悪いの?」と聞いてみたけれど、「大丈夫だ。問題ない。ちょっと寝不足なだけだ」と何時もの穏やかな表情で言うし、ちょっと間を置いて聞いてみても「大丈夫だ」の一点張りだったので、実際無理をしているようには見えなかったからこれ以上の追求はしなかった。


 こんなやり取りだったこともあって、このまま学校に行かせるのもどうかと思った。けど、ポーっとしつつもちゃんと学校に行く様を姉さんが見せているので、多少の不安を覚えつつも2人で勇一郎の家の前までやって来てしまった。

 で、到着と同時という絶妙なタイミングで玄関の戸が開き、何時ものように勇一郎が首周りを緩めた少々ラフな感じで出てくる。こっちはアレだけの事を起こしておいて、いつも通りだった。だから、何時ものように勇が私たちのところまでやって来て、「おはようございます、千鶴子さん。おはよう、早苗」と挨拶が交わされ、姉さんに服装を指摘された勇一郎が慌てて整え直すという事になると思っていた。


 でも今日はそうならなかったのだ。





「おはようございます、千鶴…「ひゃいっ!」…」





 ひゃい?





 威勢の良い勇一郎の挨拶に、姉さんの妙な合いの手が入った。合いの手というよりは、素っ頓狂な返事とでも言うべきだろうか。慌てて振り返ると、顔を真っ赤にした姉さんがお向かいの壁までずり下がっていた。


「ど、どうしたんすか!? 千鶴子さん!」

「姉さん?」


 呼びかけの声に全く反応することなく、顔を赤くしてジっとこちらを凝視している様は明らかに尋常ではない。確かに昨夜色々と恥ずかしい思いをしたにしても過剰すぎる。あまりに意味不明で不可解な行動に呆気に取られつつ、様子を窺うために姉さんに近づこうとすると、姉さんは鞄で顔を隠してしまった。


「なにやってるの、姉さん?」

「い、いや、朝日が眩しくてな。こうして鞄で遮ってるだけだ」

「千鶴子さん、日の出方向と逆向いてるっスよ?」


 チラチラと鞄を上げ下げしてこちらを窺ってくる様子は明らかに挙動不審。だけど、なんだか肩で息をしているように見える。もしかして照れてるとか言うんじゃなくて、本当に体調が悪い?私が昨日無理をしたことで、逆にこちらに心配をかけまいと無理をしているのかも?

 そう思ったら居ても経っても居られなくなり、慌てて駆け寄り顔をもっと確認しようとしたけれど、姉さんは頑なに鞄を頑なにどかそうとしない。


「ちょっと、姉さん!本当は体調が悪いんでしょ?」

「そ、そんな事はないぞ」

「体調悪いって…本当か、早苗!?」


 勇一郎も私の言葉に慌てて姉さんに詰め寄ってくる。


「今朝からなんか様子が変だし、顔も赤かった。てっきり昨日の事を気にしてだと思ってたけど」


 そう言うと姉さんがビクンと体を震わせた。4月末といってもまだ朝方は結構涼しい。そういえば昨夜は姉さん珍しく早くに就寝していた。そうしてあの夜の出来事だ。きっと体調が悪くて早く横になって、そうしてうなされたに違いない。

 姉さんは私の事になると暴走しがちとは何度も言ってきたが、その反面、姉さんは自分の事に妙に無頓着な時がある。だから、鞄を一向に退けずに顔を見せようとしない姉さんに業を煮やした私は、勇一郎と肯き合うと2人がかりで姉さんから鞄を取り上げるべく行動に出た。

 途中「や、駄目……駄目だって…嫌…大丈夫だからっ、大丈夫だから!!」と焦る姉さんに、なんか変に色気を感じてしまったのは余談だが、ともかく勇に姉さんの手を押さえさせ、私が無理やり鞄を取り上げた。


 そうして目の前に晒された姉さんの顔は、耳や首筋まで真っ赤になって涙目になっていた。相手は姉さん、しかも同性だと言うのに、手を壁に押さえつけられ顔を真っ赤にしているのを見て、直接的な表現をするとムラっときてしまったのは、私の所為じゃないと思う。


「ほ、ほら。なんとも無いだろう?」

「…むぅ。確かに……顔は赤いけど熱じゃない…みたいね」


 鞄を取られてようやく観念したのか、姉さんがこちらを向きながらそう言ってくる。ソワソワしていて視点が定まらないのは変だけど、確かに私みたいに無理をしてという感じでは無く、ただ恥ずかしがっているだけのようだった。実際額に手を当ててみたけど、熱のような熱さは確かに無かった。


「本当ですか?」


 でも勇一郎からしてみれば、いつもと様子の違う姉さんが心配だったのだろう。手を押さえつけたまま覗き込むように姉さんを凝視している。その表情は真剣で、姉さんを本当に心配している様がありありと見て取れる。珍しく強気というか強引な態度に姉さんが気圧されたように怯んでいた。


「や、止め…勇…見ないで…」

「黙ってコッチを見てください、千鶴子さん」


 弱々しく抵抗の言葉を上げる姉さんと、真正面から姉さんの顔を見据える勇一郎。


 む、自分で仕掛けておいてなんだけど、なんかこの構図はちょっとモヤっと来てしまった。まるで恋愛物のドラマにあるような、逃げるヒロインを押さえつけてキスを迫る主人公のようだ。姉さんも伏せ目でいやいやと首を振ってはいたが、次第にじたばたとしていた手足を大人しくさせて勇一郎から目が離せなくなっている。


 何この空気。


 なのでワザとらしく私は大きく咳払いを1つすると、2人の世界を作りつつある両名に割って入った。



「勇一郎、顔近過ぎ。キスでもするつもり?」

「なっ!!」

「っ!!」



 私に指摘されて、ようやく自分の状態を把握した勇一郎が慌てて姉さんから離れる。姉さんもなすがまま状態から復帰できたようで、慌てて勇一郎から距離をとった。「いや、俺何もするつもりは無かったですよ?本当です!」「あ、ああ。わかっている」と、なんか顔をお互い赤くしてお互いをチラチラ見やっている。


 ……まったく、この初々しいカップル状態は何事よ。


 事の起こりを自分でふっかけたとは言え、なんとも形容し難い気分になってくる。姉さんはようやく落ち着きを取り戻せたのか、顔は赤いままだがこちらを見て軽く頭を下げて来たので、私も少々自分に落ち着けと言い聞かせて姉さんの言葉を待った。


「いや、すまなかった。昨日の今日だろう? ちょっと私としても、どうしていいか判らなかったんだ」

「本当に? 姉さん時折体長悪くても無理するでしょ。今日もそうじゃないの?」


 その場を取り繕うような内容の言葉に、私は敢えて訝しがる内容の言葉を口にする。姉さんも思い当たるところがあるのか、決まりの悪そうな笑顔を浮かべている。けれど「本当に大丈夫だ」と言葉を続けた。


「流石にあんな大事にしてしまったので、どうにも勇と顔を合わせ辛いというかなんというか、な」

「いや、それは千鶴子さんの所為だけじゃ無いっスよ。俺も、慌て過ぎてどうかしてたってのもありますし…」

「確かに勇一郎の慌てっぷりは、ちょっと凄かったけどね」


 昨夜一応聞いたのだが、勇一郎も姉さんの声を聞いた瞬間、何も考えず竹刀を手に取って家を飛び出していたのだそうだ。玄関は開いてないだろうから、もう窓をぶち破るしかない!と簡潔な考えで一直線に姉さんの部屋に駆けつけたのだ。今回のように事が夢だったから何も無くて良かったけど、もし本当に何かあった時に実に頼りになる人が隣に居てくれるというのは、とても安心できるし、その…カッコイイ。

 ちなみにその後「もし私が同じように悲鳴を上げてたら来てくれる?」と聞いてみたら、間髪を置かず「馬鹿言うなよ。そんなん当たり前だろう」と、頭を撫でながら言ってくれた。その言葉が非常に温かくてくすぐったくて、寝に戻った布団の中でニヘラニヘラとゴロゴロしてしまったのは内緒である。


 だというのに目の前で広げられる光景は、どうみてもイチャコラ空間である。無論対象は私ではない。


「しかし勇には何度も情けない姿ばかり見せているな…」

「いや、それは…でも情けなくなんて無いですよ。それならコッチの方が情けないことばかりで、今回なんかも…」

「勇は私を心配して駆けつけてくれただけなのだから気にしなくて良い」

「でも窓ブチ壊しちゃいましたし……」

「それほどに心配してくれたからだろう? 窓は直せるのだから気にするな。本当に今回は私の不徳の致すところという奴だ。今日は早く帰ってご近所を回らないとな…」

「あ、それ俺がやりますよ。そもそも通報の理由が悲鳴とガラスの割れる音ですから!」

「だから勇は気にしなくて良いと言っている。それに部活があるだろう?」

「それを言うなら千鶴子さんも生徒会があるじゃないですか。2人で周る方が効率良いですよ」

「いや、しかしだな…」

「お願いしますよ、千鶴子さん。窓を壊したせめてもの謝罪に、千鶴子さんの役に立ちたいんですよ」

「だが大本の原因は私なのだ。だからだな…」


 ……だれか「じゃ、俺が」とか言ってくれる人出てこないかな。私?なんかプライド的に嫌だ。っていうか何で私アウトオブ眼中状態なんだろうね。何となく放っておいて学校行っても良いんじゃないかなーって思ったけど、でもこのまま放って置くとどうにも話が進みそうに無いので、妥協案を提示することにした。


「だったら、姉さん、私、勇一郎の人で回れば良いじゃない」


 私の言葉にキョトンとする姉さん。それもつかの間、何を言っているんだとちょっと怒ったように私に向かってくる。


「何を言っている。さなちゃんこそ一番の被害者だろう?」


 まぁ実際私が起こしたわけではないし、原因の1つとはいっても微々たる物といえば確かにそうだ。でも、姉さんは昨夜の事で混乱しているのか、ちょっと忘れている。


「姉さんこそ何言ってるの。“家族”なんだから遠慮する必要は無いし、3人で回る方が良いと思うんだけどね」

「あー確かに。1人1人で行くよりも、3人の方が誠意が伝わりやすいかもですね」


 勇一郎もそれに同調する。姉さん1人で責任を取る必要は無い。事が起きたのは“私達”の家で、そこに駆け込んできた勇一郎とで事を大きくしてしまったのだ。だから「皆で謝るのが筋だよね」と言うと、ちょっとの間を置いて「そうだったな」と小さく呟くと、ようやくいつもの姉さんの表情に戻って私の頭を優しく撫でてくれた。


「では、今日は早めに皆で家に帰って、それから3人でご近所を周ろう」

「はい! 時間、何時にしますか? 俺、部活は今日は休みますから」


 無駄に元気の良い勇一郎の返事に思わず笑みがこぼれる。


「では、さなちゃんと勇で菓子折りを買ってきてくれないだろうか? 私は一度家に戻って、家の修理に立ち会ってくださったおば様にも挨拶しておかないといけないし、一応修理結果を確認しておかないといけないからな」

「わかった。姉さん、お隣まわりだけだから9個でいいよね?」

「ああ、お財布はさなちゃんに預けるから頼んだぞ」


 そうして3人で通学を再開する。よくよく考えればやり取りが始まってから、一歩も勇一郎の家の前から動いていなかった。まぁ、元々早い時間だったから少々遅れても全然気にする必要な無いのだけど。


 こうして3人で昨夜の事を改めて話しながら通学する。どんな夢を見てあんな悲鳴になったの?という話から始まって、アレは勇の所為なんだと面白おかしく姉さんが夢の内容を語ってくれた。


「世紀末救世主になった勇が所構わず上半身裸になって、並み居るモヒカンたちを吹き飛ばしていくんだ。そしてラスボスとして現れた剣道部主将と空を飛びながら無○転生を繰り出して中々に圧巻だった。ハリウッドならB級映画間違いなしだったな」

「子供なら漫画の主人公とかに憧れたりもしますけど、あんなに筋肉の塊みたいになるのはイヤっすよ…」

「私もマッチョな勇一郎はなんか嫌」

「そしたらいつの間にか私もさなちゃんもマッチョに…」

「姉さん、想像力豊か過ぎよ…」




 笑いながら通学路を一緒に歩く。なんだか色々とイベント事があったけど、ようやく昔の3人に戻ったような気がした。



 こうして余りにも濃い内容の4月終わりを迎えた。



 結局の所、幸先が良かったのか悪かったのかは判らないけれど、それでも何かが確実に動き始めた月だった。












「よーし、答案を回収する」



 教師の掛け声に教室から緊張した空気が抜けてゆく中、私もまた軽く深呼吸して緊張を解す。今日は5月第3週目に行われる一学期中間テスト最終日。そして今終わったのが最後の科目であり、金曜日という事もあって、教室内の気の抜け方はいささか何時もより大げさだ。

 だが私はこれからテスト期間中に止まっていた生徒会業務を再開しなければならないし、体育祭まであと2週間を切った事による事前確認、準備も再開しなければならないので気を抜く暇などありはしない。そうして手帳を片手にスケジュール確認をしていると、何時ものように由梨絵がやってきた。


「手応えの程はどう?」


 お決まりの台詞を共に、私の机に軽く体を預けこちらを覗き込んでくる。


「特に詰まった箇所は無かったな。昨日までの分の自己採点も含め、変なケアレスミスをしていなければ何時も通りの結果が期待できるとは思う」


 私も何時ものように手を止めることは無く、ゆっくりとスケジュール帳を閉じると由梨絵と向き合った。


「流石。学年主席殿は違うわね」

「茶化さないでくれ。物事に絶対が無いように、いつ追い越されてもおかしくはないのだしな」


 こういう時の由梨絵は実に楽しそうに笑う。といってもこう、子供がするような無邪気な物と言うわけではない。雰囲気的なもので、実際に浮かべているのは何時もと変わらない静かな笑みだ。競争が好きという訳ではないらしいのだが、こうして私と競い合うのは楽しいらしく、友人となって以来こうしてテスト結果を競うのは私達の通例だ。


「そう言いつつ今まで順位は入れ替わったことがないけど、それって厭味かしら?」

「そんな積もりは無いさ。今まで通りにやっているだけだよ」

「余裕綽々ね」

「そんな事はない。由梨絵が居るから何時も良い緊張感をもって臨ませてもらっている」

「あら、それはどうも」


 傍目には互いを牽制しあっているようにも見えるだろうが、これが何時もの私達である。


「そっちはどうだったんだ?」

「同じく、と言ったところかしらね。いくら見返しても変なミスしてるのよねぇ…」

「物事に完全を求めるのは難しいさ」

「努力は必要だけどね」

「そうだな」


 由梨絵の言葉に静かにうなずきを返す。




 あれからもう1ヶ月経った。




 今のところ私には大きく変った点は無く、今まで通りの事を反復しているような状態だ。対してさなちゃんは、日々雑誌などを穴が開くんじゃないかというくらい目を通している。それでいて学業にも手を抜かないのだから、私とさなちゃんとで選んだ道は正しかったのだと思っている。


 その変化を好ましく思いながらも、私の胸中に浮かぶのは由梨絵の一言だ。


『もし、生方君が千鶴子を選んだら、ちゃんと貴女は彼と付き合うんでしょうね?』


 あの台詞のお陰で当日夜には非常に珍奇な事となってしまい、その後も勇を意識し過ぎて朝はおかしな事になりかけた。


 正直なところ、あの朝は私もどうかしていた。


 夢の光景が頭からこびりついて離れず、最後のシーンだけが頭の中をグルグルグルグル回っていた。何で自分はあんな夢を見てしまったのかと、その事ばかり考えていて気が付いたら勇の家の目の前。心を落ち着ける間もなく勇の顔を見た途端、夢の光景が鮮明に脳裏に呼び起こされた。


 アレは夢だと冷静に頭では考えるのに、体が全く言う事を聞かない。鼓動は早くなるし、赤くなるのが自分でもわかるほど顔に血が昇ってしまう。違うことを話さないといけないのに、口から出る言葉は弱々しい否定の言葉ばかり。


 そうして壁に押さえつけられて、イヤというほどこの身が女である事を改めて思い知りながらも、押さえつける勇の力強さに何故か鼓動が早まった。ジッと見つめられて何故か体の力が抜けてゆく。更にはさなちゃんから「キスでもするの?」などと突っ込まれるものだから、その場凌ぎの受け答えでしどろもどろ状態になってしまった。

 さなちゃんが声をかけてくれなかったら頭の中が勇の事だけで一杯になってしまって、そのままその場にへたり込んだか、勇に向かって倒れこんでしまっていたかのどちらかだろう。


 さなちゃんの「皆で」という言葉のお陰で、『さなちゃんに見っとも無い所は見せられない!』と心を奮い立たせることが出来たのだ。

 まったく危ないところだった。


 そうして夢のお陰で数日間は挙動不審になってしまったが、今では冷静に日々を過ごしている。だけど、今も頭の片隅からひと時も離れないことがある。


『発生する可能性は限りなく0に近くても0ではない事』


 もし勇に選ばれたら私はどうするのか。腹を括ったとは言え、勇と胸を張って付き合うことが出来るだろうか、と。さなちゃん、勇に対して後ろ暗く思わないだろうかと考え、得た結論は、どうあっても後ろ暗く思わないなんて無理、ということだった。



 だが、もうさなちゃんとお互いをぶつけ合うと約束した。



 勇に審判もお願いした。



 もう後には引けないのだ。だから私としては、その事態を想定し、さなちゃんがもっとアピールして選ばれるように仕向けるしか手は無い。その為には、私がもっと刺激し手本になるよう自身を磨けば、さなちゃんはそれを真似てくれる訳で、結局はやる事は最初と変わらないのだ。


 それに確か前の自分の時の記憶なので少々あやふやだが、世の男性は完璧な女性と言うものは敬遠するものらしい。自分に出来ない事を女が出来てしまうのはある種の劣等感を抱いてしまうからだとか。昔、私は勇の目の前でちょっとアレな事をやらかしているが、確かにあの時勇は落ち着き無かったし、その後自分が出来るようになると言ってのけた。多分似たような物なのだろう。ならば私が自分を磨き続けることにも、さなちゃんの手本となる以外の意味も意義も生まれる。


 無論、それは言葉遊びのような物だ。理解のし方、捕らえ方の差とも言う。どちらにせよ由梨絵が言うように、結果的に私は人の心を玩んでいる。きっと前の自分と同じようにロクな死に方はしないだろう。


 それでも自分は、やっぱりさなちゃんと勇に幸せになってもらいたいのだ。だから、私は、今、自分が最善だと思っていることに全力を尽くす。事実から目を逸らしているという事も重々承知してはいる。

 でも、2度人生を重ねているくせに、どうしたら良いかわからないのだ。万人が納得するような回答は存在しないのだろう、なんて気取ったようなことを考えて自分を無理やり納得させている。それでも、進むしかないんだ。


「千鶴子?」


 私が物思いに耽っていた為か、由梨絵が気を引くように声をかけてくる。私は悩んでいる事を悟らせまいと、平静を勤めて返事を返した。


「いや、なんでもない。それよりも今日から生徒会業務再開だぞ。忘れてないな?」

「忘れては無いわよ。まったく……例年に無いイベントなんか組み込んで頭が痛いわ」

「そう言わないで欲しいな。こちらが率先して動くことが必要なんだし、イメージアップにも繋がるだろう?」

「確かにね。でも案が可決されて、更に私までやる事になるなんて思わなかったわ。はぁ……」


 由梨絵の長いため息に苦笑が漏れる。

 話のネタは6月の体育祭だ。赤軍、黄軍、青軍に分かれての一大イベントの1つだが、その中に1つ生徒会主宰のイベントを入れ込んだのだ。

 元の起こりは生徒会のイメージアップだが、そこに1つ自分の思惑を乗せた。だが、それがあるからといって、元の趣旨からは外れないし、上が率先してやるという事にもなる、イメージアップにも繋がるということで要件は全て満たしている。だから多少私に関する副次的な思惑が含まれたとしても、公私混同とはならないだろう。まぁ、その為に時間が割かれてしまうというのが由梨絵としては引っかかるのだろうが、今の私にとっては集中する矛先を変える良い材料になっている。


「あんまり本気にならないでよ?貴女についていくのって本当に疲れるんだから」

「努力はするさ」


 心の中ですまないなと詫びつつ、少々げんなりとした顔になる由梨絵を茶化していると、H・Rを行う為に担任が戻ってきた。クラスに散っていた生徒が各自の席に戻っていく。担任から今後の予定が告げられ、それをメモする。体育祭もあるが、受験年度の私達にはその他にも色々と進路別ガイダンスなどがある。淡々と予定が説明される中、周りの状況は確実に進んでいるが、見つけたはずの答えが少しブレて足踏みをしている錯覚に襲われる。




 1つの季節の終わり、夏の始まり、6月を迎える。


 窓から見上げた空は、私の心模様を表すように曇り空。


 まだゴールは、見えない。

第一部完的な所でしょうか。

次話は日が飛んで体育祭編となります。

今回はどちらかと言うと、現状確認回でそれほど話が進んでおりませんね。

細かいイベントはあるんですが、それはまたどこか小噺で。


――――――――――――

2013/4/14 早速誤字脱字と描写抜けを修正

2013/4/25 呼称間違い、表現修正

2013/5/19 誤字脱字修正


閑話


「賑やかだな」

「そうですね、あなた」

「しかし勇一郎はどっちを選ぶんだろうなぁ」

「どちらを選んでも、あの子達にとっては少々辛いかもしれませんね」

「それも通過儀礼の1つだろう。経験するという事は重要だし、そこから何を得るかも重要だ」

「私たちは見守ってあげるしかないですね」

「うむ。まぁ後は道を外しそうになったら引っ叩いてやる位さ」

「今だとあの子の方が強いんじゃないかしら?」

「親は強し、だよ。母さん」

「ふふ、そうですね」

「しかし、日本に重婚制度があれば一番問題ないんだがなぁ」

「あなた…まるっきり台無しですよ」

「いっそ重婚制度がある国外に移住という手も…」

「あなた1人で行ってくださいね。私たちは残りますから」

「おいおい、冗談だよ、冗談」

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