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掌編は荒野を目指す――ショートショート集  作者: gaia-73
綺陶篇

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「グラウンド・ゼロ」

「遊べないのが、つらい」――と息子は言った。


 あの <  > からは既に70年が経っていた。


「もう何もおかしくないのに、……いやだよ」


 息子の通う小学校は校庭皆無グラウンド・ゼロだった。


「しかし、お前は別に駆け回るのが好きなわけでもないだろう? ボールだって怖がるし」


 私はそんな風に返した。


「まぁ、そうだよ。たしかに、そうなんだけどさ、なんだか、息苦しい感じがする。自由に、走り回れる場所が、ないなんて……」


 ――なるほどね、と私は同情するように言った。

 実際はどうかって?

 私だって、小学校はグラウンド・ゼロだったんだ。


「中学になればまた変わるさ」


 私はそう言いつつも、今の時代にグラウンド・ゼロでない場所なんて、そうそうある物じゃ無いことを知っている。

 息子も、もしかしたら薄々感づいているのかもしれない。

 彼は眉を寄せ、じっと涙を耐えるような顔を一瞬した。


「真ん中を避けたって、」


 彼は吐き出すように言った。


「ん?」


「お父さんみたいになるんだろう?」


 彼は私の顔を睨むように見ていた。


「そんなわけないじゃないか」


 私は爛れて剥がれ落ちてくる皮膚を気遣いながら、息子の頭を撫でていた。


 

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