「精霊」 vol.2
彼には気嚢はあるが空虚な心はない
彼の眼と舌は邪悪そのものだが彼は邪悪ではない
燃えろ 鳥
燃えろ鳥 あらゆる鳥
―― 田村隆一〈言葉のない世界〉より
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紐解かれぬ、あらゆる精靈の氣配は、山脈の雪に、溶けて零れ、澤となり、海に、屆く前に、地へと染み込み、消えるかと、思いきや、さらに密となり、蜜と、なり、砂原から沁み出し、海を目指し、街を越えるときに響き、越えられぬ境界に、ぶつかり、ぶ、つかり、ぶつ、かりながら、渦卷き、渦の底、となり、逆卷いて、は崩れ、壁とされ、越えられ、ぬものを人に、感じさせ、壞れゆく時、計のカムを、梁、の、ない空の果てからの、寒々しい伊吹、息吹きから、燃え、盡きぬ、さらばえぬ、こ、の精靈の、氣配の、有っていく、持っていくあさましさの、小ぶりの、小降り、の、おまえは寂しい鳥の、なかで、あかつきのひばちに、みずを、クベテ、焦れ疼き、絞められ、濕ら、れ、小鮒の、小舟、の、子、椈の、さきを行く、こわれやすい、戀われ、やすい、乞わない、こわくなって、からも、そこには、いなく、なればとこなれた、月が、さらばえた月、が、鋼のようにおもい、つきが、紐解かれぬ、故に、山脈の雪から、融けて、毀れ、澤となり至る、のだ、氣配、に、精靈の氣、配に、あらゆ、るコギト、小此木と、か、まうものか、と、諳んじて、いる、學徒のよう、な、精靈の、氣、配に。
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朱色の肺臓から派出する気嚢
氷嚢のような気嚢が骨の髄まで空気を充満せしめ
鳥は飛ぶ
鳥は鳥の中で飛ぶ
―― 田村隆一〈言葉のない世界〉より




