「ポンチョ」
夏なのに、肩にはポンチョ。
これって、ちょっと恥ずかしい。
クーラーの効いた大学の教室で感じる、なんとも贅沢な悩みだった。
ちょうどよい感じの上着がなくて、結局これになってしまった。
冬物で、けっこうしっかりとした防寒着なのだ。
みんなちらちらっと、こっちを見ている気がする。
ちょっとどころじゃなくて、けっこう恥ずかしいわ、これ。
先生が来るまで、あと5分も無いけど、どうしよう。寒いのは我慢しようか。
でも、私もともと体温が低いから、冷えたらすぐに眠くなる。
それはダメだ。成績がただでさえ悪いのに、先生の覚えまで悪くするなんて無理。
ここはぐっと、我慢よ私。
じっと下を向いてれば、大抵のことは我慢できる気もするし…。
「―― よっ」
声と共に、叩かれる肩。
「ぅわ?!」
急に触られたので背中がビクッと震えた。
「ぉお、なんかすごいびっくりしてる」
面白そうにほほ笑む友達がいた。
「あは、おはよぅ」
私は控えめな笑顔で応える。
「ん、そのポンチョ……」
「あー、夏っぽく、ないよね」
「いや夏っぽいなぁって」
「そう?」
私は少なからず驚いて言った。
「ど、どこら辺が?」
私はポンチョにそっと触れながら訊ねた。
「んー…。小学生の体育でさぁ、プールのときにバスタオル巻いてるみたい」
あ、なるほど。
私はペンケースからシャープペンを取り出そうとして、間違えてその向こうにあったフェンスに触れた。
どこからかざわめきが聞こえた。
「おーい、女子! はよこっちに並べぇ―」
やって来たせんせいが言った。
暑いなと思った。
手のひらにふれているバスタオルは柔らかで心地いい。
首のところにあるタオルのホックを外して、フェンスにかける。
すっとすずしげな風がはだを撫でた。
はやく並ばないと。そう思いながら、わたしはプールの匂いをかいだ。
太陽がたかい。
わたしはちょっと熱くなったプールサイドを、かけ足でぴょんぴょんと進んだ。
ああ、わくわくする。
だって今日は、小学生になってはじめての、プールの授業なんだもの。
書きはじめたのは6月ごろでした(^▽^;) アレ、季節が……




