「精霊」 vol.1
トウモロコシの精は髪の毛の中に住んでいる。
ある時トウモロコシ畑に一匹のミツバチが通りかかった。
疲れていたのでそのハチは、その辺に転がっていた青白い球に座ってひと休みする。
休んでいると、その球がもぞもぞと動いていることに気が付いた。
みなさんお分かりの通り、その球はトウモロコシの精の家、なのである。
というか髪の毛なのである。
精は自分の家の上に誰かが座ったのを感じた。
どうしようかなぁ、と精は思った。
家をかき分けて、面と向かって注意すべきかしら……?
でも、また……。
精は迷う。いつも家をかき分けて顔をのぞかせると、『オ、オバケだー!!』と言ってみんな逃げていくのだ。逃げていくこともだが、精は怖がられるのが嫌だったのである。
でもやっぱり、自分の家の上、というか髪の毛の上、頭の上には乗ってほしくないものだった。
決心して精は、家をかき分けはじめた。
もぞもぞ、と動き出した球の上では、ミツバチが「ん? んん?」と、座っている球を見下ろしていた。このクッション、マッサージ機能まであるのかな、と思っていた。綺麗な上に高性能で惚れてしまいそうだった。
すると、ミツバチのちょうど座って見下ろしている辺りの繊維が、バッとかき分けられて、真っ白で黄色い服を着た、トウモロコシの精が顔を覗かせた。
ミツバチは驚いてビックリと跳び上がった。
ハチは精の姿をマジマジと見た。
羽をプルプルとふるわせながら、ミツバチは何か言おうと口を開いた。
「オ、オオ、オ……」
ああ、だめだ。
また「オバケ」って言われちゃう!
精は目を閉じた。
「……オ、オ、オシャレ~~!!」
こうして、ミツバチとトウモロコシの精は、友達になった。




