表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
掌編は荒野を目指す――ショートショート集  作者: gaia-73
暁蒼篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/44

「うっかり」

「ヒ、ヒヒヒ、ヒヒ……お、お前らが悪いんだぞ、ヒヒヒ……お前らが、野蛮だから……」


 小声でブツブツと呟いている。彼には口があった。

 しゃべることでそのとてつもないストレスを、少しでも発散させようという配慮だった。

 

「あ、ああ、あと、10秒。9、8……」


 彼はマシンであり、マシンは彼を生かしていた。

 戦争の最中だった。


 《彼ら》と地球人類との戦争は、もう幾世紀も続いていた。

 終わりは見えなかった。


「6、5、……」


 そして《彼ら》は、地球自体を破壊することに決めた。

 資源は魅力的だった。しかしそれ以上に、地球人類が目障りだった。



「3、……」


 太陽系自体を一撃で蒸発させるミサイルが発射されようとしていた。

 残酷な決断だった。だからこそ、《彼ら》はこの発射を機械には任せないことにした。

 ひとつの星系種族が亡びるのだ。それは誰か(・・)がやらなければならない仕事だった。


「……1。発射ァアァアアアアアアアアアアア!!」


 彼の身体は最早マシンに犯されていた。血液も脳電位も皮膚感覚も、すべてこの宇宙船と接続され、稼働していた。残された彼の役割はミサイルの発射を、決断することのみだった。地球は、彼によって(・・・・・)滅ぼされる。


「あ、ああ、あはは、ははははは、はは、は?」


 彼は身をビクンッと跳ねさせた。

 背中に激痛が。船は外殻を喰い破られていた。

 もちろん、彼の内側からだ。


「あ、あは……」


 彼はミサイルを、逆向きにセットしていたのだ。

 彼はつい、うっかりしていた。


「やべっ」


 ミサイルは逆方向へと光速を超えて飛んで行った。



 もちろん、そちらの方向には《彼ら》の母星が……。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ