「QED」
本を読んでいたらQEDという言葉が出てきた。
Q.E.D(証明終了)、ではない。
この場合、以下の意味であるらしい。
QED
量子電磁力学の略称。もちろん、量子論を組み込んだ電磁力学である。この理論においては、電磁場では(仮想電子の)自発的な活動が起こり、場の擾乱は離散的な粒子状の単位で生じる(リアルな光子)。[「電磁力学」、「光子」、「量子場」も参照のこと]
――フランク・ウェルチェック『物質のすべては光 現代物理学が明かす、力と質量の起源』(ハヤカワ文庫NF・2012)、p422より抜粋。
「ああ、なるほどな~」
とボクは納得して本を読み進めた。
と、ボク以外誰もいないはずの部屋に、誰かの気配がした。
ボクは、顔を上げた。
なんか、髪の長い知らない女の人がいた。
「どうも、こんにちは」
若いけれど、どこか古い雰囲気のある方だった。
着物的な意匠の散りばめられた、スタイリッシュな格好をしていた。
腰に締めた帯が、大きくておしゃれだった。
「はぁ、こんにちは。……でも、どちら様でしょう?」
困惑するボク。
「リアルな光子です」
当然のように答えるその人。
とその時、ボクのスマホからも、なにか気配がした。
ボクはスマホを見た。
「…………………………」
なんか画面に知らない女の子が映ってた。
ツインテだった。
「どうも、仮想の電子です!」
とその子は自己紹介した。
「エネではなく?」
「誰ですかそれ」
「いや、なんでも無いです」
ボクは少し頭がクラクラした。
何これ現実?
ボクはスマホの中の少女と、部屋に出現した女性を見詰めた。
「あのー、何でボクの部屋にいるのでしょうか……」
とりあえず聞いてみた。
すると、
「よく分かりませんけど、」
光子さんが申し訳なさそうにしながら、
「たぶん、この部屋でどういうわけか、電磁相互作用が量子論的に起こって……」
「……それが、何かいろいろとあって、なぜか人格を持ってしまったのではないでしょうか……」
スマホの中の電子も、納得したようにうんうんと頷いていた。
「……へー、そーなのかー」
ボクは、考えるのをやめた。




