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49.決着

 俺は左腕の痛みに耐えながらもカサンドラとのキマイラの戦いを見守っていた。いつでも援護にいけるように剣は構えておく。キマイラの動きが鈍くなってくのをみて俺は安堵の吐息をもらす。ライムのおかげで痛みはましになったが正直結構きつい。だが、最悪左腕を食いちぎられる覚悟はしていたので何とかなってよかった。

 そして、ついにキマイラの体をカサンドラの刃が貫いて、決着がついた。



「やったね、カサンドラ……ってすっごい怒ってない!?」

「何を考えてるのよ、あんたは!! 死にたいの!?」



 勝利をたたえようと彼女に駆け寄った俺だったが、カサンドラにすごい剣幕で怒鳴られる。俺が反論をしようと彼女の顔を見ると、いつもの強気な顔に涙を溜めている。え、ちょっとまって。どうしたの?



「一歩間違えたら死んでたのよ!! あなたが死んだら私は……」

「いやいや、待って。ちゃんと色々考えてたよ。カサンドラが喉に傷を与えていた今ならいけるかなって……」

「だからって、自分の身を犠牲にしていいわけがないでしょう!!」



 そうして俺は彼女に作戦を説明した。ステンノが使った毒を見極めるために、瓶を投げて、過剰に反応した方の瓶を、ミスリルの入った袋に薬を混ぜておく。 

 そして、空腹のキマイラを挑発し、まるでピンチのカサンドラを助けるために囮になったような演技をしたのである。そして、不意をうたれたふりをして袋ごと腕をあいつに差し出したのである。

 キマイラはバカではない。さすがにミスリルに薬をぬっていたらばれるし、麻痺毒を多少警戒していたので油断させるために必要だった。それに実力で劣る俺にはこれくらいしかできなかったのだ。



「まあ……勝算があったならいいけど……」

『ねえ、シオン。僕はいつまでくっついてればいのかな? キマイラの唾液がついててちょっときもいんだけど……』

「お前、今は俺から離れるなよ、マジで痛いんだからね!!」

『ああ、そのセリフはかわいい子にいってほしかったなぁ……』



 説明しても不満そうなカサンドラを見て、実際は賭けだったということは言わない方がよさそうだ。でも、思った以上に心配させてしまったようである。



「今度から自分を犠牲にするようなことはしないように。私と約束をしなさい。シオンがいてこその私達なんだから」

「いや、俺なんて……いって!? 何するのさ!!」



 俺が言い切る前に頭をひっぱたかれた。ひどくない? 俺って今怪我人なんだけど……でも、彼女の真剣な顔をみると何も反論することができなかった。そして、カサンドラはため息をついた後、まるで赤子に言い聞かせるように言った。



「俺なんかは禁止よ。あなたは私の相棒であり、私たちのリーダーなんだから。その言葉は私達に対する侮辱でもあるわ。私はね……あなたを頼りにしてるの。だからもっと自信を持ちなさい」

「ああ、ありがとう、カサンドラがそういってくれるから俺は頑張れるんだよ」

「私はお世辞は言わないわ。あなたを信頼しているし、尊敬しているから言うのよ。だからもう、無茶はしないで」

『なんか愛の告白みたいだねぇ』

「「なっ!?」」



 真剣な表情で俺達は見つめあっていたが、ライムの言葉で、一気にはずかしくなる。

 でもさ、人に認められるのってすごい嬉しいよね。なんというかむずがゆいが悪い気はしない。彼女が認めてくれると俺はもっと行けるんじゃないかって思えてくるから不思議である。それにさ、なんだろう、女の子と見つめあうとなんかどきどきしてしまうよね。



『はいはい、ラブコメ禁止!! 早く薬を探すよ。後でアスにいってやろーと』

「別にラブコメじゃないわよ!! これはなんていうか……相棒とのやり取りよ」

「なんでアスが出てくるんだ? だいたいライムはアスと会話できないだろ」



 そうして、俺達は顔を真っ赤にして離れる。確かにちょっと近すぎたなぁと今更になって認識してしまう。そして、敵のいなくなった工房で薬を入手して戻るのであった。



キマイラ討伐!


二章はあと五話くらいで終わります。

読んでくださっている方ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] ライム喋れなくても、触手で状況説明はできそうだ。 ライム「やってみたらできた‼️」
[気になる点] …結局、シオンの自己評価の低さと自己犠牲の精神は、改善(改心)されないままなんじゃ…? せっかくカサンドラちゃんがマジ怒りで諭したのに…ライムは予想以上にKY(死語?)だった(苦笑)
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