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32.ペルセウスの力

 外に出た俺はまずは空に向かって魔術を放つ。杖で強化された火の玉が轟音を鳴らす。ちょっと待って、この杖の魔力の強化が思ったよりやばいんだけど。まあいい、これでシュバインとトロルドの仲間がやってきてくれるはずだ。そして、当然のことながら爆発音に気づいたゴルゴーン達がやってくる。



「私が囮になる。貴様らはオークたちと合流したら状況を説明して、メデューサを助けてくれ。私が助けたいのだが、役割分担というやつだな。それに女性に追われるのは悪くない」



 そう言って、ゴルゴーンの群れにペルセウスは駆け出して行った。俺を彼を見送りながら、兜をかぶって身を隠し、シュバイン達と合流するために村の入口へと向かう。

 でもさ、一人で大丈夫かな? 彼のギフトは『クリエイター』で特殊な武器や防具を作れるギフトだと言っていた。確かに彼の作成した武器や防具の力はすさまじいものがあるが、彼自身はどうなのだろう? 元Bランクの冒険者とは言っていたがサポートよりのギフトである。カサンドラと戦っていた時も武器のおかげで互角だっただけと言っていた。

 俺は心配になって、大声を上げながらゴルゴーン達と戦っているペルセウスの方を見つめる。



『人間め、生意気な!! 相手は一人だ。さっさと捕えるぞ!! 活躍した奴には最初に襲う権利をやる!!』

『わかりました!! 私がもらう!!』



 リーダーらしきゴルゴーンの言葉に、敵たちの士気があがる。より一層の気合が入ったゴルゴーン達がペルセウスを襲う。


 

「ふはははは、もてる男と言うのは辛いものだな!! だが私の気持ちは我が歌姫のものなのだ。せめて私の勇姿だけでも焼き付けるといい!!」


 

 ハルペーで切り付けられたゴルゴーンはかすり傷を負っただけでもあきらかに動きが鈍くなり、魔眼を使ったゴルゴーンは盾によって反射されて石と化していった。待って、あいつ強すぎない? 武器が完全にゴルゴーン対策であることを差し置いても優秀すぎる。



「火よ!!」



 俺もせっかくだし、援護だけはしておこうと思い、魔術を放つ。大きな火の玉が指揮をしていたリーダーらしきゴルゴーンの目の前で爆発し、その衝撃でリーダーのゴルゴーンがふっとんでいった。俺は即座に再兜をかぶり直す。この兜も姿を隠すときに精神力を使うためか、魔術と同時には使用できないようだ。



『敵が隠れているわ、多分もう一人の男よ!!』



 突然の不意打ちにゴルゴーン達が騒ぎ始めた。これ以上いたらまずいだろう。場は混乱させたし、これで多少はペルセウスも動きやすくなるだろう。

 ペルセウスの方はとみてみると、多勢に無勢ということもあり、徐々に追い詰められていく。このままではゴルゴーン達に囲まれてしまうだろう。助けるために魔術を放とうか悩むと、ペルセウスは首を横に振り助力は不要だとアピールをした。



「フッ、恋に生きるものは想い人のためならば空も飛ぶ!!」

「さすがにあいつは何でもありすぎじゃない?」



 追い詰められていたように見えたペルセウスだったが、彼の言葉と共にサンダルから翼が生えて、まるでそこに階段でもあるかのように空を飛んだ。これが彼のもう一つのアイテムか……どうやら彼はあえてゴルゴンたちを密集させていたようだ。あいつは大丈夫そうだね。




『なんというかすごいねぇ……シオンもいっぱい強いアイテムを持てばあれくらい活躍できないかな?』

「難しいな……強力なアイテムでも使うタイミングとかあるからね……」

『そっか、ドンマイ。カサンドラに愛想尽かされない様にね』

「俺は俺で戦闘以外でも役に立ってるから大丈夫なんだよ! 酒に溺れて働かないで女に貢がせてるクズ男を見るような目で俺をみるな!」



 失礼な事言うライムに俺は毒づく。ゴルゴーン達の近くで甲冑から取り出してやろうか?

 多分あのサンダルにも魔力を使ったりとなんだかんだ代償があるのではないだろうか? まあ、あの様子なら大丈夫そうである。俺達は安心して入口へと向かうのだった。



ペルセウスのアイテムはギリシャ神話のものですね。


次の話からはシオンのターンです。

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