30.ゴルゴーンとの対話
やってきたゴルゴーン達に対して俺は敵意がないことをアピールするために笑みを浮かべる。なんとかここをやり過ごして、ライムを逃がさないといけない。
『こいつ、魔を魅せるギフト持ちって聞いてたけど、全然ぴんと来ないわね』
『わかるーー!! なんか童貞臭いわよね。別に魅力的でもないし』
『まあ、いいわ。こんな童貞どうでもいいもの。それより、メデューサとこいつらの関係の方が大事よ! こいつらがあの子を利用しているんだとしたら……生まれてきたことを後悔させてやるんだから』
『おちついて、どのみちこいつらには子種以外の価値はないんだから。話を聞いて満足したら襲ってしまいなさいな』
待って、何で俺はゴルゴーン達に童貞って馬鹿にされてるの? 言葉が通じないと思ってかこいつら言いたい放題である。てか子種って……
そういえば、ゴルゴーンは異種族の雄をさらって子供を作ると聞いたことがある。そして生殖活動をするのだ。ちなみに生まれてくる子供はみんなゴルゴーンである。そしてさらわれた雄がそのあと無事に帰ってきたという話は聞いたことがない。そしてこの里をみたときに異種族の雄はいなかった。つまりそういう事なのだろう。
『ギフトの件はデマだったみたいね。ここは私だけで大丈夫よ』
『わかったわ。そっちの童貞はあなたにあげるからそっちの方は私に取っておいてね。メデューサの件があるから特別にあなたに最初を譲るんだから……』
『わかってるわ、今度何かお礼をするわね』
そう言うとゴルゴーンのうちの一匹は扉を出て行った。もう一匹のゴルゴーンはそれを確認してから真剣な顔をして口を開く。その顔はまるで何かにすがる様な顔で……それまでの憎悪に満ちた顔がまるで演技だったかのようだった。
「あなたたち人間に聞きたいことがあるわ、嘘をついたら……わかってるわよね」
「ふふ、何とも好戦的な目だな。マゾヒズムな私は性的な興奮を感じずにはいられない」
「ペルセウス、彼女とはちゃんと話す価値があると思うよ」
「なぜそう思うのだ? こいつらは我が歌姫の話も聞かずに捕らえたのだぞ」
俺の言葉にペルセウスが怪訝な顔をした。俺は視線で言うことを聞いてくれと訴える。
このゴルゴーンはさっきからメデューサの事ばかり気にしていたのだ。もし、メデューサとペルセウスに本物の絆があるとわかればもしかしたら話し合いの余地はあるかもしれない。
「美しきお嬢さんよ。我が歌姫は……メデューサは無事だろうか?」
「私が質問してるんだけど……彼女は今は無事よ。まあ、この後はどうなるかわからないけど……本当にバカなことをして……」
そういうと彼女は悲しそうに目を細めてため息をついた。見覚えがあると思ったら里に入ったときにメデューサとはなしていたゴルゴーンだ。親し気だった様子から友人なのかもしれない。
「それよりも、あんたは今私達につかまっているのよ、他人の心配よりも自分の心配をした方がいいんじゃないかしら?」
「フッ、愚問だな、私にとって彼女のこと以上に心配をすることなんてないのだよ」
「へぇー。自分の命がかかってもそんなことが言えるかしら? あなたが石像になるっていうならあの子を助けてあげてもいいわよ」
「望むところだと言わせてもらおうか!!」
そういうとゴルゴーンは再度髪を蛇に変えて、ペルセウスを睨みつける。対してペルセウスは不敵な笑みを浮かべながらもゴルゴーンを真っ向から見返す。一切ぶれない視線で見つめるペルセウスにゴルゴーンはため息をついて、人の方に戻る。
「あなたがメデューサに助けられた人間ってことでいいかしら?」
「ああ、そうだが、私は運命の出会いをしたのだ」
「そう……あなたも彼女も本気なのね」
そういうとゴルゴーンはやれやれと肩をすくめて言った。
「ねえ、あの子が裏切ったって本当なの?」
どうやら俺たちの話を聞いてくれる気分になったらしい。
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