64.
プロメテウスが戻ったという事を知ってからの俺達の動きは早かった。おそらくあの穴の奥に潜んでい
るのだろう。ゴブールに頼んで、あの穴付近の警備を頼んで俺達は冒険者ギルドの方へと戻っていった。
そして、俺とアスは冒険者ギルドに戻っているであろうモルモーンたちと合流すべく、冒険者が使っていたウマを借りて飛ばしていた。
「三人では行こうとは言わないんだね……」
「そりゃあね、どんな危険があるかわからないし、プロメテウスは強敵だからね。モルモーンに対処法を聞かないと危険すぎるよ」
正直あんな風に触手を出してくる剣なんてどうやって倒せばいいかわからないっていうのが現状である。俺の魔術じゃ多分燃やしきれないだろうけどしね。
そんな事を思っていると、アスが少し安心したかのように微笑んだ気がした。
「よかった……シオンがまたつっ込むのかと思った……」
「いや、流石にそこまで無謀じゃないよ。キマイラの時は勝算があったけど今回は正直わからなかったし……それにアスに変に心配をさせたくないからね」
「偉い偉い……死んじゃったら私でも癒せないからね……」
そう言いながら彼女は俺の頭を撫でてくる。いやいや、今走ってるから危ないんだけど!! そんな事をしている間に冒険者ギルドの前につくと何体かの傷ついたオークが倒れている。え? なにこれ? 確かに俺達のおかげで魔物への理解は増しているけれど、こんな風に魔物が街にいるのは普通ではない。
『うう……苦しい……』
『スライムが……せめてくる……』
オークたちは苦しそうに呻いているだけだ。俺とアスは顔を見合わせて冒険者ギルドの扉を開ける。俺達の登場に冒険者ギルドの職員さん達がほっと一息をついたのがわかった。
一応冒険者ギルドにはゴブリン達を倒したという報告はあったかもしれないけど、やはり顔を出すと違うのだろう。
「シオンさん、アスさん!! ご無事で何よりです。あなたたちまでけがをしたらどうしようかと思っていました」
「アンジェリーナさん!! 俺達はってどういう……?」
「その……大事なお話があります。こちらへ来てもらえますか」
「それは外にいたオークと関係があるのでしょうか?」
俺を見つけ息を切らして走ってきたアンジェリーナさんは俺の言葉にうなづくと、そのまま奥の部屋へと連れて行く。
「あなた方が帰った後、モルモーンさんとシュバインさんが外のオークたちを連れて帰ってきたのですが、傷がひどかったのでここで休んでもらっています。詳しい話はモルモーンさんがシオンさんに話すと言って私達には教えてくれないんです」
そう言うと彼女が開けた扉には傷だらけのシュバインと、憔悴した様子のもるもーんがいた。アンジェリーナさんは「失礼します」と言って席を外す。
「モルモーン、大丈夫か?」
「ああ、シオン君か、良かった。君たちはプロメテウスを倒せたんだねぇ。そしてすまない、下手をうったようだ。まさか最愛の暴食を二度も失うなんてね」
そう言うとモルモーンは自虐的な笑みを浮かべて唇をゆがめた。その表情はどこか弱々しい。
「私達に何がおきたか聞いてくれるかな?」
そうして彼女は語り始めるのだった。




