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45.作戦会議

「そうですか……そんな事が……」

「はい、シュバインさんの住んでいたダンジョンの深層に珍しい盾を体内に持つ巨大なスライムが現れたんです。そして……その魔物は冒険者も魔物も関係なく一緒に飲みこんでひとしきり暴れた後再び眠りについたそうなんです……それまで、そんな魔物の目撃はなかったのに……それと同時に別の場所で不思議な剣を持ったゴブリンの目撃もあったので何か異変がおきていると思って……」

「それで……いきなり謎の女性が現れてシオンと一緒にいるから怪しいなって思ったんだ……しかもその女性は人間ではない上に、何かを知っている風な感じだった……それに、胸を見てデレデレしているシオンにもむかついたし……」

「俺が胸を見てデレデレしているって言う必要あったかなぁ!?」



 そう言って、アンジェリーナさんとアスは俺達に申し訳なさそうな顔で謝る。いや、別に俺はデレデレはしてないんだけど……確かにはたから聞いていて無茶苦茶怪しいなぁ……

 あきらかにモルモーンの登場と同時に、周囲のダンジョンで異変が起きている。二人が疑うのも無理はないだろう。しかし、ゴブリンだけでなくスライムまで現れたのか……



「それで……その人は誰なのかな……私はシオンとずっと一緒にいたけど、あなたの事を知らないよ……」

「すいません、私もモルモーンさんについて調べさせていただきましたが、冒険者ギルドにも何の情報もありませんでした。一体何者なのでしょうか?」



 どうやら、俺が操られているという疑いは晴れたが、モルモーン自体の疑いは晴れていないようだ。まあ、そりゃあそうだよね、しかもアスは『医神の目』でモルモーンが人間ではないことに気づいているようだ。

 これ以上の言い訳はできそうにもない。俺がモルモーンに視線で合図をする。



「そうだね……これ以上誤魔化しても状況が悪化するだろう。君たちのいう通り私はシオンの昔からの知り合いなんかじゃない。魔王の墓で眠っていた吸血鬼だよ」

「吸血鬼……魔王の墓……となると……まさか、あなたは魔王の仲間の魔族の一人であるヘカテーの関係者という事ですか!! 巨大なスライムやゴブリンが現れたダンジョンも魔王がかつて魔物を倒した場所ですし、今回の件はなにか魔王と関係があるのでしょうか?」

「へぇー、君は中々詳しいんだねぇ。そのとおり……私は魔王の仲間のヘカテーが私の主だよ。ただ、申し訳ないが、なんで自分が魔王の墓にいたのか、そこらへんの記憶は曖昧なんだよ。だから、周囲のダンジョンで何がおきているかわからないんだ。すまない……」

「吸血鬼……人ではないと思ったけど初めて見たからわからなかった……」



 モルモーンの言葉にアンジェリーナさんが驚愕の声を漏らし、アスはちょっと悔しそうにつぶやいた。まあ、アスのスキルはあくまで状態を見るだけだからな。見たことない生き物に関しては、どんな生き物かまではわからないのだ。

 てか……アンジェリーナさん無茶苦茶魔王関連に関して詳しいな。俺の英雄譚オタクトークにもついてきたし……



「魔族ヘカテーは全てのアンデットの支配者であり、アンデットを作り出すことのできる魔族だったと聞いています。そして、彼女を主としているというのなら私達人間の味方だと思うのですが……」

「まあ、私が正しい事を言っている保証はないよねぇ……どうすれば信じてもらえるかな?」



 モルモーンも困ったように言う。確かにそうだ……俺は短い間とはいえ彼女と一緒にいたので本当に悪意が無いという事を知っている。

 だって、彼女が本当に悪意を持っていたら俺を殺す機会なんて何度もあったし、それに……カサンドラと楽しそうに話している顔や、ライムを見た時の救いを見つけたような表情がとてもではないが嘘だとは思えなかったからだ。



「シオンさんは……モルモーンさんを味方だと思っているんですよね?」

「ええ……少しの間ですが彼女と過ごして性格はちょっとひねてますが悪い奴ではないと思っています」

「家につれこむくらい……仲良くなってるよね……」

「ひねてるなんてひどいなぁ、私ほど素直な吸血鬼はいないというのに……」



 俺の言葉にアスとモルモーンがぼそっとつぶやく。いや、今は大事な説得シーンなんだけど……ちゃちゃを入れないで欲しい。

 しばらく、俺をじっとみつめていたアンジェリーナさんだったが、笑顔を浮かべて口を開く。



「ふふ、シオンさんがそう言うのなら信じますよ。私も……モルモーンさんを信じてみようと思います」

「アンジェリーナさん!!」

「だって、私は知っています。シオンさんは魔物に対しても平等に悪い奴か良い奴かを判断できる人だって……私たちのように種族で判断をしたりはしないすごい人だって知ってますから」

「まあ、そんな彼も最初は私の胸揉ませる代わりに話を聞くって言ってたけどね」

「モルモーンマジで黙ってくれない? いってぇ!! アス、無言で足を踏まないで!!」


 

 俺はモルモーンとアスにつっこみをいれる。そんな俺達をアンジェリーナさんはくすくすと笑いながら扉の方に向けて声を張り上げた。



「というわけで、彼女を信用しようと思います。今から緊急ミッションに対しての会議を始めるので『群団』と『アルゴーノーツ』の皆さんは武器を収めて入ってきてください」

「え?」

「ふぅん、扉の外にいたのは私が暴れた時用の対策だったみたいだねぇ」



 その言葉と共にカサンドラやシュバイン、ライムの他にも、何人か冒険者が入ってくる。モルモーンが暴れた時用に待機していたのか。モルモーンは気づいていたが、俺は全然わからなかったよ。

 そして、その中に俺はとても懐かしい顔がいた。



「イアソン……」



 俺がそうつぶやくと彼はとても気まずそうに顔を背けた。


この作品『追放された俺が外れギフト『翻訳』で最強パーティー無双!~魔物や魔族と話せる能力を駆使して成り上がる~』の二巻が11/10日に発売いたします。


ゴルゴーンの里でのお話になっております。書き下ろしでシオンとアスの過去編もありますのでよんでくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ひとつ前の話でアスがモルモーンのことを吸血鬼でもないし魔族に近いって言い方してるので、この話や口振りとそぐわないですね
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