29.シオンの部屋
「お邪魔するわね」
「ふぅん、ここがシオン君の部屋か、中々いい部屋じゃないか」
『シオン、女の子がたくさんいるからって襲ったりしたらダメだよ』
「しないっての!! むしろ俺が一番弱いっての」
ライムにつっ込みをいれて悲しくなる。うちの女性陣強すぎでは? 多分俺が襲っても瞬殺されるとも思うんだよね。いや、そんな事はしないけど……翌朝、時間になったら打ち合わせ通りカサンドラ、モルモーン、ライムが俺の部屋にやってきた。
いつもだったら、冒険者ギルドでいいんだけど、今はモルモーンがいるからね。彼女の事はまだ内緒にしておきたいので俺が泊っている宿で話すことにしたのだ。ちなみにシュバインは難しい事はわからんといって、どっかいってしまった。
「ん? カサンドラどうした。なんか表情が硬いけど……」
「え……その……異性の部屋に入るの初めてなのよ……その緊張しちゃって……」
なにやら落ち着かない表情で、俺の部屋を見回しているカサンドラに声をかけると彼女は恥ずかしそうに顔を赤くして答えた。可愛いな、おい!!
てか、俺も冷静に考えたらアス以外の女性を入れるの初めてなんだけど……意識したらなんか恥ずかしくなってきた。ちゃんと掃除をしたけど大丈夫だろうか?
「おやおや、君のベットに誰かの毛があるよ、隅に置けないなぁ、シオン君」
「ふーん、やっぱりモテるじゃないの」
『シオン……まさか、童貞を卒業したいからって、娼婦を……』
モルモーンの言葉によって、先ほどまで何やら恥じらっていたカサンドラの目が一気に氷のように冷たくなった。こわ!! てか、ライム、そこはせめて彼女ができたの? とかにならないのかよ。てかさ……
「待った、誰も連れ込んでないっての。どんな毛なんだ?」
「フフフ、焦ってるねぇ、銀色の長い髪の毛さ。まさか君のだなんていわないだろ」
「ああ、アスね」
『なんだ、アスかぁ……』
「え? アスって人はなんなんだい? なんでそんな反応なのかなぁ?」
モルモーンの一言によって空気が弛緩する。よかった……誤解は解けたみたいだ……モルモーンだけが間の抜けた声を上げる。まあ、アスは家族みたいなものだからね。
「あれ、そういえばヘルメスは……?」
「ああ、なんか扉にこんなのが刺さってたわよ、多分ヘルメスじゃないかしら」
「今時矢文って……」
俺は半ば呆れながらもカサンドラから矢につきささった手紙をもらう。中をあけるとすごい綺麗な字が並んでいる。
『いやぁ、ごめんごめん、急用を思い出したからこの街を去るねー、君もそっちの方がハーレムでいいんじゃないかなぁ。 PS カサンドラちゃんと抱き合ってドキドキした? ナイスアシストだと思わない?』
「あいつまじかよーーー!! 謎だけ残して逃げやがった!!」
「何が書いてあったのよ、どうせろくでもないことでしょうけど……」
俺が叫びながら、放り投げた手紙をカサンドラが拾うと内容を見て顔を真っ赤にしてて燃やした。確かに抱き合ったといえば抱き合ったけど……などと思いつつ、彼女を見るとなぜか睨まれた。
「ヘールーメースー!! あいつ絶対色々知っていたわよね、どこにいったのよ!!」
カサンドラがそう言って飛び出していった。でも、多分あいつはもう、見つかるような場所にはいない気がするんだよね……とりあえず、ギルドに探し人を出しておこうと思いつつ、俺は勝手にベットにすわり膝にライムをのせているモルモーンに話かける。
「それで……情報を整理したいんだが、モルモーンは記憶喪失なんだよね?」
「ああ、残念ながらね……なんであそこにいたのもかも、覚えていないんだ……覚えているのは自分の名前と一般常識、水晶に封印されているのが私の主っていう事と、その巨人が敵って事……そして、暴食を愛しているってことくらいさ」
そう言うと彼女はライムをぎゅーっと抱きしめた。まるで大事な思い出が自分の手元からこぼれないようにするかのうように……
第一巻が発売中です。興味があったら手に取っていただけたら幸いです。
続刊などはやはり発売最初の1週間が肝となるらしいのでぜひとも宣伝させて頂きたく思います。
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また、一巻にはカサンドラがシオンと会う前の話が5万字ほど書き下ろされているので興味があったら手に取ってくださると嬉しいです。




