28.ギルドにて
あの後、冒険者ギルドに今回の件を報告した俺はみんなと別れた後に、調べ物をするために受付へと向かう。アンジェリーナさんは……いないようだ。どうしようかなって思っていると、声をかけられた。
「あら、シオン君じゃないの。どうしたの? また、女の子をナンパしたわね。アンジェリーナが怒ってたわよ」
「別にナンパなんてしてないですよ、魔王の墓で負傷しているのを助けただけですって」
流石に「なんか王の墓場の内部に封印されていた吸血鬼です」とは言えないので、適当にごまかして冒険者ギルドには報告をしたのだ。とはいえ、隠しきれるものではないので、モルモーンの事情が詳しくわかったらアンジェリーナさんには報告すべきだろうと思う。
「それにしても魔王の墓の内部って結構狭かったみたいね……まあ、お墓だからしょうがないか」
「そうなんですよ、まさか二つしか部屋がないのは驚きました。しかも、一回出たらまた閉まっちゃったんですよね……ヘルメスさんも困ってましたよ」
地下にいた巨人や魔族の事は報告をしていないが、他は真実である。あの後、俺達が魔王の墓から出ると、もはや役目は終えたとばかりに扉が閉まってしまったのだ。
ヘルメスいわく、もう一度入るのはまた、魔王の残滓が必要らしい。ちょっと不便すぎない?
「それと報告書と一緒にちょっと聞きたいことがあって……」
「あらあら何かしら? アンジェリーナに彼氏はいないからデートに誘っても誰も文句は言わないわよ
。ああ、でも……シオン君の方に色々問題があるか。最近おモテになっているみたいだからね。いつか刺されるわよ」
セイロンさんは楽しそうににやにやと笑みを浮かべる。俺に問題ってなんだろう……いや、確かに最近女性と絡む機会があるから勘違いされてもしかたないのか……? アスとは隣? の部屋にすんでいるからしょっちゅう家でご飯を食べているし、ポルクスちゃんともクエストに行ったり、カサンドラともデートしたが……いや、冷静に考えたら俺ってクソ野郎じゃん!! 女の子と魔物としか会ってないな!! あげくの果てに今回外見だけはいい金髪の女の子までつれてきたのだ。並べてみるとハーレムクソ野郎だね!!
実際は彼女できたことないし、誰かとフラグがたっているわけではないのだけど……いや、でも……もしかしたらカサンドラとは……でも、これで勘違いだったらきついよね……
「ごめんごめん、ちょっといじめすぎちゃったわね……そんな泣きそうな顔をしないの。それで一体どうしたのかしら?」
俺はそんなに情けない顔をしていたのだろうか? セイロンさんが苦笑する。
「その……この街に伝わる魔王の英雄譚に聞きたいんですが」
「ああ、そっか、シオン君の出身はこの街じゃないものね、知ってるのは劇や本になった話くらいかしら」
「はい、趣味で英雄譚は読んでいるんですけど、この街を魔王が救ったってだけで、あんまり詳しくはのっていないので……ヘカテーや、モルモーン、暴食とかは知ってます?」
「うーん、ヘカテーや暴食は知っているけど、モルモーンは知らないわね……実は私は歴史の授業は興味ないから寝てたのよね……そういうの詳しい人がいるから紹介してあげるわ。ごめん、お客さんがきちゃったみたい」
「本当ですか、ありがとうございます!!」
俺はセイロンさんにお礼を言って席を離れる。あとはケイローン先生に手紙を書かねば……もしかしたら先生ならば巨人に関して何かしっているかもしれない。
「さて、俺もそろそろ行くかな」
この後は俺の部屋で、今後の方針を話し合うのだ。ヘルメスからも色々と聞きたいことはあるしね。
第一巻が発売中です。興味があったら手に取っていただけたら幸いです。
続刊などはやはり発売最初の1週間が肝となるらしいのでぜひとも宣伝させて頂きたく思います。
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また、一巻にはカサンドラがシオンと会う前の話が5万字ほど書き下ろされているので興味があったら手に取ってくださると嬉しいです。




