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27.モルモーンの力

「やあやあ、空の旅をお楽しみだったねぇ……」

『どうしたんだい、二人とも顔が真っ赤だけど……シオン、どさくさに紛れてセクハラはダメだよ』

「いや、別に何もしてないっての。まじでお前の俺の評価は何なんだよ、なあ、カサンドラ」

「え……ええ、そうよ、私たちはただ空を飛んでいただけよ」



 ヘルメスとライムのからかいに俺とカサンドラの声は慌てて反論をする。さっきの会話のせいか、ちょっと気にしてしまう。さっきのってさ、モルモーンとのやりとりに嫉妬してくれてるってことだよね、嫉妬をするってことはカサンドラは俺の事を少しは気にしてくれているだろうか。

 


『どうでもいいけどよ、さっさと奥に行こうぜ』



 俺達のやりとりに興味なさそうにシュバインが言った。こいつのこういう所には救われるね。



「そうだね、シュバインも見張りありがとう。それじゃあ、みんな揃ったし、奥へと行くか。ヘルメスもそれでいいんだよね」

「ん? ああ、そうだねぇ……俺としては、やりたいことは達成できたからどちらでもいいんだけど……まあ、一応確認しておこうか」

「え、それって……」



 そう言うと彼はモルモーンを見つめながら、にやりと胡散臭い笑みを浮かべる。つまり彼は元々モルモーンやあの奥にいる巨人と魔族が目当てだったという事だろうか。



「そんな不審な目をしないで欲しいなぁ、俺は君たちに害をなすつもりはないんだ。その証拠というわけじゃないけどさ、君にアドバイスをしておこう。彼女に……モルモーンに今の世界をちゃんとみせてあげてくれないかなぁ。それができるのは俺みたいなやつじゃなくて、今を生きている君たちだからこそできることなんだ」



 いつも胡散臭い笑みを浮かべているばかり彼だったが、その瞳は珍しく真剣だった。だからだろうか、俺はうなづくことしかできなかった。



「ふふ、ありがとう。やはり君は英雄になれる可能性があるねぇ……どこか彼に似ている君ならばモルモーンも心を開くかもねぇ……」

「それはどういう……」

「シオンー、早くいくわよー、シュバインがもう、我慢できないって」

「ほら、愛しのカサンドラちゃんが呼んでるよ、詳しい話は気が向いたときにしてあげるさ」



 ヘルメスもこの話はこれで終わりとばかりに唇に人差し指を置く。そうして、俺達はダンジョンの奥へと進む。ちなみに道中モルモーンはライムに抱き着いて嫌がられていた。本当にライムにしては珍しい。



 先ほどまで呪いの武具達がいたところの先にある扉を開くと、そこにはやたらと立派な鎧が飾られており、その手には高級そうな剣が握られている。さっきの部屋の出来事からしてこいつがボスなのだろう。

 このままの距離で攻撃をしちゃだめかな?



『いいな、さっきのやつより強そうじゃねえか』



 シュバインが嬉しそうに舌なめずりをする。彼の言うように立派な装飾のされた鎧は不思議な魔力でもあるのだろうか、不気味な光を放っている。カースドウェポンは元の武器が強ければ強いほど強力だ。となるとこれだけ立派そうな鎧ならば相当強いはずだ……そう思っていると、鎧はまるで人でも入っているかのように立ち上がる。



「気を付けたほうがいいよ、これはただの呪いの武具カースドウェポンじゃない。まあ、ギフト持ちの呪いの武具カースドウェポンみたいなものと思ってくれればいい」

「ようはこいつがボスって事か!! ダンジョンらしくなってきた」



 ただならぬ気配に俺が警戒をした直後だった。鎧が動くのと同時にシュバインが即座に突進をする。彼の武器と鎧の腕が交差する。しばらくせめぎ合ったかのように思えたが、鎧が怪しく光ると同時にシュバインが力負けをしてふっとばされる。



「カサンドラ!!」

「任せて!! 炎脚!!」 



 壁に衝突しそうなシュバインをカサンドラがギフトを使って追いつきキャッチする。シュバインで力負けをするとは……さて、どうするかと思った時だった。

 何を思ったのかモルモーンが一歩前へ出る。



「ここは私に任せてくれないかな? この系統の魔物は倒さないと気が済まないんだよ」



 俺が咄嗟に止めようとすると、モルモーンのその顔は先ほどと同様に笑みを浮かべていたが、何というかすごみがあった。まるで長年の怨敵に出会ったようだ。



「ああ、別に構わないけど……こいつを知っているのか?」

「ありがとう、何でかな、さっきの巨人みたいに本能的に嫌悪をしているのさ」



 その一言と共に影が刃の様になり驚くほどあっさりとその鎧を貫いた。鎧はしばらくぴくぴくと動いていたがやがて、力をなくしそのまま塵と化した。



え? つよすぎない?



「はっはっはー、どうだい、私の力は!! こんな強力な仲間を得てシオン君は幸せ者だろう。とはいってもここ自体が私の様なアンデットの力を発揮しやすくなっているからね。外では多少弱くなるんだけどね」

『お前、強いな!! 今度手合わせをしてくれよ』



 大声で叫ぶモルモーンにシュバインが尊敬のまなざしで話しかけている。あれ、なんか勝手に仲間になろうとしていない? まだ話を聞くって段階だったと思うんだけど……


 そして、俺達はこの部屋を漁ると敵の強さとは反比例するようにあっさりと宝箱が見つかった。いくつかの宝石や金貨が入っておりそこそこの金にはなりそうだ。

 だけど……俺にはこれらの宝がまるで地下の魔族や巨人をの存在を隠すために用意されたもののように思えてしまったのだった。


第一巻が発売中です。興味があったら手に取っていただけたら幸いです。


続刊などはやはり発売最初の1週間が肝となるらしいのでぜひとも宣伝させて頂きたく思います。

作品名で検索するとアマゾンなどのページが出てきますのでよろしくお願いいたします。


また、一巻にはカサンドラがシオンと会う前の話が5万字ほど書き下ろされているので興味があったら手に取ってくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] はて、こうなるとシオンはなんであっさり穴に落ちれたんだろうとなるね
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