表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

151/203

23.巨人

 カサンドラがゴミを見るような目で俺をみていたのもつかの間だった。彼女は水晶の方を見るとその顔に緊張が走った。



「それで……あなたは一体何者かしら」

「彼にも自己紹介はしたんだけどね、私の名前はモルモーン。吸血鬼さ、ギフトは『貪欲なる血識』血を吸ったものの、記憶を知ることができるんだ。それで君の事も知っているんだよ。敵意はないんだ、だからその殺気を押さえて欲しいな」



 鋭い目つきのカサンドラに対して彼女は飄々とした様子で答える。てか、ちょっと待って、記憶を知るとか聞いてないんだけど……だから俺の名前やギフトを知っていたのか……



「そう……まあ、そんなことはどうでもいいわ。なんでそこにソレがいるの? そいつって巨人でしょう? 私はシオンのように色気では誤魔化されないわよ」



 刀を構えてモルモーンと対峙をするカサンドラの目つきは厳しい。まるで敵を目の前にしたような彼女の態度に俺は疑問を持つ。

 カサンドラは確かに好戦的だが、決して無差別に敵意をまき散らすような性格ではない。よく見ると彼女が刀を持つ手は震えている。あれ、モルモーンの胸を揉もうとしていた事に関して怒っているわけじゃないのか……?



「カサンドラ一体どうし……」

「シオン、ここは私が時間を稼ぐわ。すぐにヘルメスたちを連れて逃げて。そしてアンジェリーナさんにAランク冒険者を招集と緊急ミッションの発令をするように言いなさい」

「へぇー、君は知っているのか、アレを……巨人族を……それならば心配はいらないよ。今は眠っているところだ。そして、私と水晶に眠っている主は、アレとは敵対する存在だよ」



 カサンドラの言葉に、感心したように目を見開いたモルモーンは淡々とした表情で答える。それにしても巨人族とは一体何なんだ。ああ、そういえばカサンドラと見た演劇で言っていたね。何か関係があるのだろうか?

 カサンドラが目で俺に合図をする。目の前の彼女を信用できるかどうかということだろう。俺は少し迷った後に頷く。信用できるかできないかは置いといて、話を聞くだけの価値はあると思ったからだ。

 こちらの反応を見てカサンドラは刀をしまう。



「おや、ようやく話を聞いてくれる気になったのかい? だけど、すまない……私も名前以外の記憶がほとんどないんだよ……私が覚えているのは水晶に封印されているのが私の主っていう事と、その巨人が敵ってことだけなんだ……あとは一般常識くらいなんだよ」

「記憶喪失ね……何ともいえるけどまあいいわ」



 正直彼女の言葉が本当かどうかはわからない、だが、カサンドラはモルモーンの事よりも、そこにいる巨人とやらが気になって仕方ないようだ。そんなにやばいやつなのか?



「それにしても、本当にいたのね……お母さんから聞いたときは信じられなかったけれど……」



 カサンドラの言葉にモルモーンがうなづく。でもさ、俺だけ蚊帳の外なんだけど……



「ごめん、その巨人族って何なんだ?」

「そうか、今の人間は知らないのか……いや、恐怖をもたせないように意識的に歴史をかえたのかな? 巨人族……それはかつて魔族と敵対をしてこの世界の覇権を争った存在だよ。魔族と巨人族はお互いに殺し合い魔族が勝った。だけど魔族もその数は大きく減ってしまった。そして魔族は強力な力こそもたないけれど数は多い人間達と共に共存をすることにしたんだ。魔族たちの接し方は様々だった。あるものは王国を作り、人を支配した。あるものは冒険者として一緒にパーティーを組んだ。そしてあるものは……番となった」



 そういうって彼女はカサンドラを見つめた。カサンドラのような魔族の血をひいている存在は確かに珍しいが、彼女だけというわけではない。

 ていうか……ちょっと待った。魔族と戦ったのって神だったはずだ……じゃあ、あれが……



「じゃあ、巨人族って言うのが俺達の言う神なのか……」

「そうだよ、彼らは自分の奴隷として君たち人間を産みだしたのさ。そして、魔族と争い負けて姿を消したんだ」

「でも、俺達の歴史では神が魔族に勝ってこの世界を俺達人間に託したんじゃ……」

「それは魔族がそういう風に人間に言ったんじゃないかな。そうじゃないと、人間たちが魔族と敵対しそうだったからね。魔族は巨人族との戦いでボロボロだったから、人間達相手でも危なかったんだ。だから人間達に嘘の話を伝えて共存の道をえらんだよ、じゃなきゃ勝ったはずの巨人族が今の世界にいないのはおかしいだろ? 託してどこかに行ったっていうけどどこにいくっていうんだい?」



 俺の疑問にモルモーンがすらすらと答える。記憶喪失なのに……と思ったが彼女にとってはこれが一般常識なのか……




「だけどね、巨人族だって馬鹿じゃない。残党はいたんだ。彼らは潜伏して、魔族たちの力が弱まった時に再び現れたのさ。それに気づいた魔族の中に仲間の魔族や魔物を集めて巨人族と戦ったやつがいたんだ。ここに封印されているのはその時に巨人族の一人だろうね」

「その魔族って……」

「その魔族の名はゼウス、君たちが魔王と読んでいる存在さ」

第一巻がいよいよ明日発売です。早いところではもう並んでいると思うので手に取っていただけたら幸いです。


続刊などはやはり発売最初の1週間が肝となるらしいのでぜひとも宣伝させて頂きたく思います。


作品名で検索するとアマゾンなどのページが出てきますのでよろしくお願いいたします。


また、一巻にはカサンドラがシオンと会う前の話が5万字ほど書き下ろされているので興味があったら手に取ってくださると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ううむ、神様たちがキナ臭くなってきたな。 巨人族の方がギフトも詳しそうだし。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ