21.モルモーン
咄嗟の事に俺にできたことといえばとっさに剣で急所である心臓を庇う事だけだった。気づいた時には影の触手は俺の横をすり抜けていた。え、すり抜けてた……?
「たかが、入り口をふさいだだけで油断はしない方がいいよ、少年。呪いの武具はしつこいからねぇ。ちゃんと仕留めないとだめだぜ」
そういうと彼女は伸ばした影の触手を自分の手元に戻す。そしてその影の触手の先にはカースドウェポン達が捕えられており、そのまま、パキンっという乾いた音と共にカースドウェポンが真っ二つに折れてそのまま砂の様に塵となった。
「俺を……助けてくれたのか?」
「もちろんだとも。意識を取り戻して初めてのお客様だからね。丁重に扱わせてもらうさ。私に敵意は無い事はわかってくれただろ。よかったら話でもしないかい? 見たところ君は冒険者のようだ。今の外は……世界はどんな感じなのかな?」
俺の言葉に彼女は笑顔でうなづくと、再び指を鳴らす。すると影が今度はテーブルとイスと形を変える。漆黒の家具はどこか神秘的な感じがする。彼女は椅子を指さして、俺に座るように指示をする。俺は彼女の声に心地よいものを感じて、彼女の指示に従うように座ろうと椅子を引く。
その時だった、武器屋のおっさんから十字架がいきなり光った。
それと同時に頭の中がクリアーになる。俺は何をしようとしていたんだ。上ではカサンドラ達が必死に戦っているんだ。吸血鬼と話している場合ではないのだ。それに……この状態明らかにおかしい。こいつはなんでこんなところに一人でいるんだ? 魔王の墓の周囲にいるアンデット達……そして、吸血鬼はアンデット系モンスターの上位種だ。呪いの武具はわからないが、無関係とは考えにくい。
そして、十字架が光った時の反応が決定打だった。
「なっ、私の力が無効化された?」
「そういう事かよ」
モルモーンの言葉で疑惑が確信に変わる。吸血鬼の中には人を魅了する能力を持つものもいると聞く。いつの間にかその力を使われたのだろう。
幸い、追ってきた呪いの武具はモルモーンが倒した。だったら……俺は即座にカサンドラ達への援軍に向かうべく踵を返してダッシュする。
「俺式炎脚」
「ちょっと待った、違うんだよぉぉぉぉ、私は本当に君と話したいだけなんだ。何百年一人だったと思うんだい? さびしかったんだよぉぉぉ」
「うおおおおおお」
俺がカースウェポン達があけた穴のところから脱出しようと魔術を使った時だった。不気味な霧がいきなり俺の進路に現れたかと思うと、その霧がモルモーンとなる。魔術を使ってたためいきなりとまることはできないわけで……
俺と彼女はもみ合ってそのまま転がる羽目になった。知ってるか? 人はいきなりは止まれないんだよ……
「うう……ってなんだこれ……」
俺達が転がってとまったので立ち上がろうとすると手にあるのはなにやら柔らかい感触である。おそるおそる顔をあげると俺はモルモーンの胸をもんでいた。なにこれやばい……しかも多分だけどアンジェリーナさんよりでかい。ちょっと童貞の俺には刺激が強すぎるよ!?
「おっぱいだぁぁぁーー」
「え?」
彼女はいきなり叫んだ俺に一瞬驚いた顔をしたが、いたずらを思いついたかのように意地の悪い笑みを浮かべて言った。
「私と話をしてくれるなら、いくらでも揉んでもいいんだよ」
そう言って突き出される大きな胸を見て俺は生唾を飲み込んだ。これが吸血鬼の魅了の力なのだろうか……俺は彼女の胸から目を離すことができなかった……
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