19.呪いの武具
今あきらかにしゃべったよね? まさかあのスケルトンには自我があるのだろうか? 一般的なアンデットは魔王の墓にいた連中のように思考能力はないはずだ。ならばあのスケルトンは何らかの上位種なのだろうか? 俺が自分の思考を整理する前に呪いの武具達が迫ってくる。
「風よ!」
俺は風の魔術で、飛んでくる呪いの武具達の勢いを殺し、それでも、つっこんでくるやつを剣で弾く。そして俺が勢いを殺したカースウェポンをカサンドラの炎の魔術で焼き払う。
シュバインは武器を振り回して、鎧達を相手に応戦していた。圧倒的な力を持つシュバインは魔法などを使わない呪いの武具相手に有利になるかと思いきや、その一撃が受け止められる。
鎧を着たスケルトンの攻撃だ。あのシュバインと対等に渡り合えるのかよ!?
「カサンドラ!! シュバインの加勢を!!」
「でも、シオンだけじゃ……」
「俺も力を貸すさ」
その声と共に矢が飛んできて、ぶつかった呪いの武具が息絶えたかのように動かなくなった。ヘルメスの矢には何か強力な法術か魔術が込められているようだ。というか、飛んでいる剣の呪いの武具に当てるってどんだけだよ?
「シオン、ヘルメスここは任せたわ!! 炎脚」
ヘルメスの援護を見て安心したのか、カサンドラがシュバインの援護へと向かう。俺はその間に体勢を立て直す。一回押し返されたシュバインだったが、鎧の呪いの武具の一撃を受けて負傷したおかげで身体能力が上がったのか、今度は押し返した。その間に、俺は近寄ってくる呪いの武具を警戒しながら話しかける。
「そこのスケルトン!! 君には自我があるのか!?」
『貴様、私の声が聞こえるのか?』
「シオン!! こいつ会話できるの? だったら武器を納めさせて。手加減したらこちらがやられるわ」
俺が会話をし始めたことにきづいたカサンドラが俺に叫んだ。あの二人でもぎりぎりなのかよ。俺は急いでスケルトンに交渉をすることにする。
「なあ、敵意がないなら剣を収めてくれないか?」
『それはできないのだ……私はこいつに乗っ取られていてな。私の事はいい……それよりも我が主を……』
「主……?」
スケルトンは苦しそうに呻いた。乗っ取られているという事はアンデットと呪いの武具達は別に協力をしているというわけではないのか?
『主はその紋章の所の奥に行ったところにいる……頼む。助けてくれ。主さえくればこいつらなんぞ一瞬なはずだ。ぐううう』
そう言ってスケルトンは苦しそうに呻くと同時に呪いの武具が妖しく輝く。それはまるでスケルトンの何か大切なものを吸い取っているかのようで……何がおきているかはわからないが、彼はもう長くはないように見えた。
「何かを聞いてるのかなぁ。だったら君はそのスケルトンの言う事に従うべきだ。今は均衡状態だからね……君がいなくてもこの場はもたせてみせるよ」
カサンドラ達の方はスケルトンに寄生した呪いの武具と対等に渡り合っている。正直俺が何かをしても邪魔になるだけだろう。
それならばと俺はとりあえず様子だけでも見ようと剣の呪いの武具の動きが鈍った瞬間に紋章の所に立つ。もしも避難できるようだったら一回こっちに撤退を……などと考えていると足元から感覚がなくなった。落とし穴かよぉぉぉぉ。
「うおおおおおおお、風よ!!」
俺はとっさに風魔術とペルセウスからもらった空を飛ぶ靴の力を発動させる。そのおかげか、俺は深い闇をかろうじて意識を失わないで下りていくのであった。
いよいよ第一巻発売日7月10日が近くになってきました!
続刊などはやはり発売最初の1週間が肝となるらしいのでぜひとも宣伝させて頂きたく思います。
そんなわけで昨日から2週間、毎日更新させていただきます
一気に話が進みますのでお楽しみ頂けるとありがたいです!
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また、一巻にはカサンドラがシオンと会う前の話が5万字ほど書き下ろされているので興味があったら手に取ってくださると嬉しいです。




