12.シオンVSテセウス2
俺とテセウスは模擬専用の剣を手に取って向かい合った。俺も修羅場をくぐっているからか、剣を構えただけで相手が強いという事はわかる。器用貧乏な俺はアドバンテージである魔術でけん制して戦うしかない……と思っているだろうな。テセウスは。
「じゃあ、はじめるよー、コインが落ちたらスタートだ」
ヘルメスの合図に俺とテセウスの間に緊張感が走る。そしてコインが落ちると同時にテセウスが魔術を使わせまいと走ってくるのが見えたので俺は叫ぶ。
「ライム、シュバインよ、テセウスをぶっ倒せ!!」
「はっ? 待ってください。それは卑怯じゃ……」
「俺のギフトで仲間にしたんだからありだろ? それに、戦闘開始後ならなんでもありだってさ。テセウスもギフトを使っていいんだよ」
「くっそ!!」
俺の言葉にテセウスは舌打ちをしてシュバインとライムを探す。ライムはカサンドラの肩の上でキョトンとしているが、シュバインはさすがという事か、すさまじい殺気をテセウスに放った。本当に戦闘に関しては機転が利く。
「俺式炎脚」
テセウスの意識がシュバインにうつった瞬間に俺は隠し玉を放つ。すさまじいスピードで迫る予想外の攻撃にテセウスは反応が遅れる。
「くそぉぉぉぉ」
「火よ!!」
かろうじで俺の攻撃を止めたテセウスだったが模擬専用の安い剣は折れ勢いを押し殺すことはできずにそのまま腹に剣を受けて悲鳴を上げて倒れこんだ。あれに反応するのかよ。Bランクソロの強さは伊達ではないという事だろう。
そして、俺はトドメとばかりに火の球を彼の目の前で爆発させた。爆発の衝撃で頭をうったテセウスはようやく気を失ったようだ。
ブラフを使って意識を逸らせて、隠し玉を使ってようやくである。あれがちゃんとした剣だったらと思うとぞっとする。
「シオン……まともには戦わないとは思ったけどこれはちょっと……」
「シオン……強くなったね……」
『よかったね、シオン、みんなの好感度が下がったね』
『さすがシオン!! 俺にはできないぜ。頭いいな』
「卑怯者ーー!!」
カサンドラとライムが冷たい目で、アスとシュバインが絶賛している。そして冒険者たちからはブーイングが飛んできた。
いや、ギフト使ってないじゃん。別にルール違反じゃない。格上たちと戦ってみろよ……などと思っていると賭けの胴元となってたっぷり稼いだ様子のヘルメスと目があった。
「ふふ、やはり君は面白いねぇ、今回の依頼は君たち『群団』にお願いしよう。よろしくねぇ」
そう言ってヘルメスは満足そうにうなづくのだった。




