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堕ちた英雄13

 次の日、俺達はゴブリンの巣の前にいた。メンバーは俺に、メディア、ケイローン先生、アレクとフィフスだ。本当は三人で行く予定だったのだがケイローン先生が実戦をみせてあげなさいと言いだした事でつれていくことになったのだ。



「冒険者たちの仕事……始めてみます。よろしくお願いします」

「普段偉そうに言ってたけど、どんなもんか楽しみだな」



 ゴブリンの巣を前にしてアレクが素直に、フィフスは皮肉交じりに言っているが、二人とも目を輝かしている。冒険者に憧れがあると言っていたし、よほど楽しみにしていたのであろう。だが、まったくいくら俺達がいるからといって油断しすぎだろう。これから行く場所は戦場である。一歩間違えたら命を失うのだ。それに……あいつらの望んだ光景を見せることは出来ないだろう。



「メディア、やれ!!」

「はい、イアソン様。風よ!!」



 メディアの杖から風が現れて洞窟へと流れる。中にいるゴブリン達も気づくだろうがせいぜい隙間風がそよいだ程度にしか感じないだろう。



「どうだ?」

「そうですね……かなり小規模ですね。これならやれると思います」

「よし、任せるぞ」

「はい、イアソン様。炎よ!!」



 メディアの杖から今度は強力な炎が渦となって現れる。そしてそれは、そのままゴブリンの巣へと入っていた。しばらくして内部で轟音が響いてゴブリンの巣は崩れていった。



「よし、よくやったな、メディア。次に行くぞ」

「イアソン様……頑張ったので頭を撫でていただけませんか。そうすればもっと頑張れるのですが……」

「え……」

「いや、ずるいだろ、これ……こういうのって普通は洞窟に侵入して、倒すもんじゃないか?」



 俺は頭を傾けておねだりをしているメディアの髪を撫でながら、何かいいたげな二人の視線をため息で答える。なんでゴブリンごときにわざわざ正攻法をしなければいけないんだ。これが攫われた人間がいるとか、ゴブリン達の討伐報酬が欲しいなど理由があれば話は別だが、こんな雑魚共まともに戦うだけ無駄である。



「あのな、俺達は遊んでいるんじゃないんだよ、命を懸けているんだ。正攻法で戦うのだけが戦いじゃないんだ。自分たちが有利な状況で攻めろ。別に正攻法で倒しても、不意打ちで倒しても報酬は変わらんし誰も褒めてくれないぞ」

「いや、でもさ……」



 俺の言葉にまだフィフスは不満そうな顔をしているし、アレクですらすごいがっかりしている。冒険譚は脚色されているからな。それにこれは一見簡単そうに見えているがメディアの卓越した魔術の操作能力があってこそである。正確に洞窟内を風の魔術で把握して、中心部で火の魔術を爆発させる。言葉にするのは簡単だが実際はそんな楽ではない。



「ゴブリンの巣はあと三つあります。一つは私が潰しますからイアソン達は二つお願いできますか?」

「ええ、でもなんでそんなにあるんでしょうか。やはり……」

「ええ、何か特殊なゴブリンがいるんでしょうね。油断はしないようにしてくださいね」

「当たり前です」



 フィフス達の反応にクスクス笑いながらケイローン先生が提案をした。そうして、俺達は残りのゴブリンの巣をつぶしに向かう。二つ目のゴブリンの巣を同様の手段でつぶした後だった。最後のゴブリンの巣へと向かう途中で殺気を感じる。



「メディア!!」

「はい、イアソン様。風よ」

「「うわぁぁぁぁぁぁ」」



 不意打ちで放たれた矢の雨をメディアの風が逸らし、それでもさばききらない分を俺が剣ではじく。二人は悲鳴こそあげているが変に動かないので助かった。

 矢のきた方向を見ると、数匹のゴブリン達が怒りに満ちた目でこちらを睨んでいた。そしてその中にひときわ大きな図体のゴブリンと、杖を持ったゴブリンがいた。おそらく、あのどちらかがボスだ。この光景は皮肉にもこの前のオークたちのとの戦いが思い出され、俺は歯ぎしりをするのであった。

やっとメディアが活躍できた……

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― 新着の感想 ―
[良い点] メディア活躍回?でした。 それくらいは出来る技量はあったでしょうからね。 それにしても・・・ この2人の英雄を対比させて、この物語はどのように進んでいくんでしょうね?(笑)
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