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堕ちた英雄 1

 ガヤガヤと騒がしい冒険者ギルドで依頼書を並べながら、俺達は今後の方針について話し合っていた。Aランクを目指すためには高難度のクエストを受けて実績をためる必要性があるのだ。テーブルを囲っているのは俺と、カサンドラ、ついでにライム、なぜかアスだ。シュバインは難しいことは任せると言って冒険者と模擬戦をしている。いつものことである。いや、パーティーの大事な会議なんだけどな!!



「やはりAランクの昇進につながるクエストは中々難しいね。数が少ないうえに難易度も高い」

「そうね、魔物もただ強いだけじゃなくてゴルゴーンみたいに厄介な力をもっている魔物が多いし……」

「ああ、そうだな、キマイラも毒とかあったり厄介だったもんな」

「次あんな無茶したら許さないからわよ」

「うう……わかってるって」



 キマイラの事を出したのが悪かったのか、カサンドラが攻めるような目で俺を見つめる。ゴルゴーンの里での事を言っているのだろう。でもさ、あの時は悪かったと思うけど、あれ以外方法がなかったのだ。俺が苦笑しながらも返事をすると隣からさらに文句が聞こえる。



「カサンドラ気を付けて……シオンは多分わかってない……また無茶をする」

「アス!? 気を付けるって言ってるじゃん!!」

「嘘……シオンはカサンドラ達が犠牲になるなら自分がって思ってる……」



 うわぁ、さすが幼馴染……俺の思考を完全に読んでるよ。でもさ、仕方なくない? 俺にとってはカサンドラ達は大事にな仲間なわけで……彼女もそう思ってくれているというのはわかったからもちろん、自分だけで勝手にやろうとはしないけどさ、でも、いざピンチになったら俺はどうするのだろう……もしも、俺の犠牲だけで助かるんだったら……そんなことを思っていると、カサンドラが唇を尖らせて俺を睨んできた。



「シオン……私がゴルゴーンの里で言ったこと……」

「覚えてる!! 覚えてるって!! だからそんな、目でみないでくれる!? ライム助けてくれ」

『いやぁ、イチャイチャしているのを邪魔するのはちょっと……』



 ライムは俺の言葉にからかうように答えた。でもさ、別にイチャイチャはしてないよね? むしろ攻められてるだけの気がするんだけど……なんとか話を変えなければ……俺が悩んでいるとカサンドラが仕方ないわねとため息をついて話題を変えてくれた。



「そういえばこの付近だとAランクの冒険者はいないけどAランク候補ってどれくらいいるのかしら」

「そうだなぁ、Bランクはちょいちょいいるけど、Aランク候補ってなると、自称最速のアキレウスのパーティー『イーリアス』くらいかなぁ……」

「あとは私達……『アルゴーノーツ』だった……イアソン達が馬鹿なことさえしなければ……」



 アスの言葉に俺は押し黙る。彼女も悪気があったわけではないのだろう。だけどアルゴーノーツの失墜の原因の一つを作ったのは俺なのだ。アスは気にしないといってくれていたけれど、彼女は『アルゴーノーツ』の一員だし、実害を受けているのだ。本当は俺に言いたいことだってあるのかもしれないのだ。俺をみたアスが島ッという顔をした。



「ごめん……無神経だったね……私はイアソンが悪いと思っているから……安心してね……」

「いや、アスは悪くないよ、それに原因をつくったのは事実だしさ。それに追放されたおかげでカサンドラ達に会えたし……」

「そうね、イアソンには申し訳ないけど私は、この出会いのおかげで救われたもの……」

「むー……複雑……ライバルが増えた……」



 俺とカサンドラが目を見て笑いあっているとアスが頬を膨らまして、こちらをにらんできた。俺は追放の事は乗り越えたけれど、アスにとっては死活問題だもんな。目の前でよかったというのは無神経だったと反省する。でも、ライバルってなんだろう?



「そういえば、今イアソンってどうしているのかしら? 緊急クエスト以来一切みないのよね」



 カサンドラが思い出したとばかりに言った。そういえばどうしたのだろう。アンジェリーナさんには聞いているが全然情報がこないのだ。冒険者として生活していればなんらかの情報は手に入ると思うのだが……と考えていると、珍しく悪い笑みを浮かべたアスと目があった。



「心配ないよ……ケイローン先生に手紙を送ったから……」

「うわぁ……なんて書いたの?」

「フフ……バカイアソンがシオンを追放したこととか……依頼でシオンに手柄をとられて尻尾まいて逃げたこととか……」



 俺は思わず、うめき声を上げてしまった。アスの事だ。たぶんだけど、ケイローン先生が絶対怒るように書いたと思うんだよね。昔からアスは俺には優しいけれどイアソンには厳しいのだ。もちろん、二人が嫌い合っているというわけではない。まあ、同い年という事もあり、遠慮のない関係なのだろう。それにしても、怒ったケイローン先生を想像して俺は思わずイアソンに同情してしまう。


というわけでイアソン今なにやってんの? って話です。

次回からイアソン視点になります。人気ないキャラですが、読んでもらえると嬉しいです。

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