ダブルデート7
あの後、アンジェリーナさんと一緒に色々話して帰った次の日、俺はジャックの店に来ていた。あの日は結局最終的には二人とも別行動になったという事もあり、お互いの話をしようということになったのだ。 俺達はジャックの店で、ランチを食べながら話し合う。てか、こいつ、いつも働いてないけど大丈夫なんだろうか? 今もウェイトレスさんがこちらを睨みつけているんだけど……
「それで、お前はアンジェリーナさんとどうだったんだよ?」
「ああ、色々話したよ、お互いの近況とか、恋ばなみたいなものとかさ……」
俺は昨日の話を思い出しながら少し恥ずかしさを感じた。昨日は酔いもあって色々口走ってしまった気がする。俺はつらい過去を乗り越えたって褒められて、そして恋愛の話になって……身近な人にみてみようって話だったけどさ、実際どうなんだろうな。アンジェリーナさんもいつまでも臆病なままじゃダメですよねって話をしていた。確かに無理に誰かを好きになる必要があるとは思わないけど、好きになろうとしてもいいとは思えてきた。
「へえー、なんか盛り上がったみたいだな、あれかお持ち帰りとかしたのか?」
「ぶっ」
「ジャックさん、店内でそういう話はやめてください。シオンさん、これをお使いください」
「ああ、ありがとうございます」
ジャックの言葉に、俺は口に含んでいたものを吐き出しそうになる。なにいってんだこいつ。そんなことをできたら童貞なんてやってないし、そもそもアンジェリーナさんに失礼だろうが。そして、ウェイトレスさんがジャックをゴミでも見るような目で睨みながら、ナプキンを俺に渡してくれた。
「俺にそんなことできるはずないだろ、ってかそっちこそどうだったんだよ」
「ああ、聞いてくれよ、今度二人でデートすることになったんだよ、楽しみにだなぁ。お前セイロンさんの好みとか知らない?」
「あの人、金とイケメンが好きだよ。ジャックは……とりあえずもっと金稼いで、顔はまあ……来世に期待かな」
「そういう好みじゃねえよ、好きなものとかだよ!! ってか、結構現金な人なんだな……」
「まあ、夢を追っている男はクソとかって、冒険者からの求愛を全部断ってるからな……アンジェリーナさんとは別の意味で難攻不落とか呼ばれているよ」
まあ、セイロンさんの場合は、良い感じだった冒険者が亡くなってしまったから仕方ないともいえる。そして、あの人はとっくに前に進もうとしているんだよね。そこは本当にすごいと思う。
「でも、良かったじゃん。デートしてもらえるんだろ。このまま、うまく付き合えるといいな」
「ああ、お前もアンジェリーナさんと仲良くなれたみたいだし、昨日のダブルデートは大成功だったな」
ジャックが嬉しそうにいった。まあ、確かになんだかんだ楽しかったし成功だといえるだろう。なんだかんだジャックにもセイロンさんにも幸せになってほしいので個人的にも嬉しい。
「ダブルデート……? シオン……私聞いていないよ」
「うおおおお!!」
いきなり耳元でささやかれて俺はびっくりして椅子から転げ落ちた。尻に激痛が走りながらも声のした方をみると、アスが立っていた。いつもは、付き合いが長いし、顔は無表情だけど目に感情があるから何を考えているかわかるんだけど、今はなぜか目にすら感情がなくて怖いんだけど。てか、なんで気配を消して俺の後ろにいたの? てか、アスって後衛職だよね、なんでこんなに完全に気配を消せるの? 俺仮にも斥候とかもしてたんだけど……自信無くしそう。
「昨日の夜は、友達との飲み会って言ってたよね……? なんで嘘をついたの……?
「いや、ジャックがアスには黙っておけって言ってたから……」
なんでだろう、俺の本能が嘘をついたらやばいって訴えてきた。だから俺は躊躇なく真実を話す。というか、彼女いない歴=年齢なのになんで浮気がばれた男みたいな会話をしなきゃいけないんだろう。
「ふーん……ジャック……どういうことかな?」
「ひぇ……シオン秒で売るんじゃねえよ!! 違うんです、アスクレピオスさんこれには深い事情が……というかなんでアスクレピオスさんはここに……まさか、シオンのストーカー……?」
「新しいハーブティーができたから卸しに来たんだけど……いらないみたいだ……別の店に売るね……」
「ちょっと待ってください、マジで謝りますから、それだけは勘弁してください。アスクレピオスさんのハーブティー評判いいんですよ。うちのカフェタイムの目玉なんですぅぅぅぅ!!」
土下座をする勢いで謝るジャック。いや、いくらなんでもアスの事をビビりすぎじゃない? てかアスもなんでそんなに怒っているんだろうね。確かにアスに黙っていたのは申し訳ないけど、別に悪いことをしていたわけじゃないんだけどな。
「まあ、確かにアスに黙っていたのは悪いけどさ、機嫌治してよ。ジャックも多分なんか考えがあったんだろうし、こいつはくそだけど、こいつのお店は俺好きだからさ、つぶれるのは困るんだよ」
「じゃあ、デート……して……」
「え?」
「私とも……デートしてくれたらいいよ」
アスが少し顔を赤くしていった。なんだろう、昔は一緒にいることが多かったけど、最近は今のパーティーで行動することが多いこともあって二人ででかけるのは久しぶりだ。まあ、幼馴染で一緒に遊びに行くのがデートなのかはわからないけど、アスがデートっていうならデートなんだろう。でも……なんかデートってだけで特別感があるよね。
「デートか……いいね。せっかくだから待ち合わせからやってみようか。そっちの方がなんか雰囲気でそうだし」
「それいい……オシャレしていくね……楽しみだなぁ……」
俺の言葉に、アスは嬉しそうに笑った。つられて俺も笑う。ちょうど飯も食べ終わったしそろそろ出ることにする。
「そろそろ帰るけどアスはどうする?」
「私は……ジャックと話があるから……」
「ひえ……」
アスの言葉にジャックがこれから調理される家畜のような悲鳴を上げた。なんでそんなにこわがっているんだろうね。でも、デートか……アスがどう思っているかはわからないけど、デートって言われると少し身構えてしまうな。アンジェリーナさんとの会話が思い出される。身近な人に恋をするかもしれないか……今はまだ、よくわからないけど、俺もいつかちゃんと人を好きになれるのだろうか?
これでダブルデート編はおわりです。
次はイアソンがどうなっているんだろうって話です。
イアソンの話が終わったら、3章になります。よろしくお願いします。
3章は街での話がメインとなり、ラブコメは減らして、冒険と戦闘メインになる予定です。
番外編で他のキャラたちを書いているのは街での話何で、本編で出番がないキャラたちはこんなかんじだよって知ってもらうためですね。




