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シオンダブルデートへ行く

ジャックというキャラがいますが「18.シオンと街の人々」に出てきた人です。別に覚えてなくても大丈夫です。

 アスのクエストも終わり、懐が暖かくなった俺は久々に友人のジャックのレストランで食事を取っていた。ランチタイムのピークの時間をずらしているからだろう。客はまばらで、俺の他には2,3グループ程度いるくらいだ。

 俺は好物であるオムライスを食べ終えて、食後のハーブティーを楽しんでいた。友人だというひいきを抜いてもこの店の味は中々いい。しかし、このハーブティーどこかで飲んだことあるんだけど、どこだっけな。


「邪魔するぜ」



 俺がアンジェリーナさんから預かったAランクの試験の討伐対象になりそうな魔物たちの資料を読んでいると、誰かが俺の向かいのソファー席に座った。



「すいません、店長を呼んできてくれませんか? 変なやつが相席してきたんだけど……」

「俺が店長だぁぁぁぁ!! てか、俺らは友達だろうが!!」

「方言かな? 俺の出身地では知らない人のこと友達じゃなくて他人って言うんですよ」

「てめえ、この前おごってやったの忘れたのか? カサンドラちゃんに『パンツ盗難事件』の事を話すぞ」

「話してみろ、お前の店で毎日ネズミたちがカーニバルを始めるぜ!!」

「最低の営業妨害だな……」



 俺がウェイトレスさんに声をかけるとジャックがツッコミをいれた。ウェイトレスはまた始まったとばかりに苦笑しながら頭を下げて、他のお客さんの方へと行ってしまった。

 俺は仕方なく、ジャックの話を聞くべく、彼の方を向く。街では平均的な茶色い髪に、中肉中背でお洒落のつもりなのか、似合わない顎鬚を伸ばしている。彼の名前はジャック。俺が街でクエストを受けているうちに仲良くなって、今では暇なときに、一緒に飲みにいったり、ナンパを失敗しては慰め合ったりする仲である。ようは悪友というやつだ。



「どうしたんだ、店の経営がやばいの? 金なら貸せないよ。依頼なら出世払いで受けてもいいけど……?」

「はっ、なめんなよ、うちはランチも満員だし、夜も大盛況だ!! あ、でも、カサンドラちゃんに、オークを連れてくるときは前もって教えてくれって言っておいてくれよ? この前ポークソテー出しちゃってすっごい罪悪感湧いたんだぞ」

「待って、俺それ誘われてないんだけど? ハブられてんの?」

「ライムもいたぞ。あのスライムってば、店員にセクハラしてくるんだけど出禁にしていい?」

「ライムも誘われてるのかよぉぉぉぉぉぉぉ」



 衝撃的すぎる事実に俺はハーブティーを飲む手を止めて頭を抱える。俺以外いるじゃん。むしろ俺嫌われてるの? カサンドラ達のゴルゴーンの里での俺を信頼している発言ってなんだったの? 俺がパーティー不審に陥っていると、肩をたたかれる。

 顔を上げると希薄な笑顔を浮かべながらジャックが話を切り出した。



「まあ、俺としてはお前がパーティーで浮いていようがどうでもいいんだ。さっき依頼ならって言ってたけどよ、一個頼みがあるんだ。聞いてくれるか?」

「どうでもいいはずないよね? 俺としては追放された時並みにショックなんだけど……ショックのあまりに目の前の男の似合わない髭を全部抜きたくなるくらいにね。で、依頼ってなんなんだ? 金を貸してとか、女の子紹介してとか、犯罪以外なら力を貸すよ」

「結構制約多いな……まあ、いいわ。今度親の紹介で女の子と会うんだが、最初は友達同士を混ぜて会いましょうってなってさ、シオンに付き合ってほしいんだよ」

「はぁ?」



 俺はおもわず素っ頓狂な声を上げてしまった。それってダブルデートじゃん。めっちゃ青春じゃん。でもさ、俺はろくにデートしたことないんだけど。戦力になれるのだろうか? 



「頼むよ、シオン。俺も二十歳だしさ、そろそろ彼女を作って、親を安心させてーんだよ」

「いや、いいんだけど、なんで俺に頼むんだ? ジャックならもっとそういうの得意な友達いるだろ。俺とか全然もてないよ」

「は? 何言ってんの? お姉ちゃん系ヤンデレ幼馴染に、後輩系あざとい冒険者、強気系ツンデレ相棒女子とか、恋愛譚のヒロインかよってくらいお前の周り個性的な美人ばっかりじゃねーか、しかも巨乳の受付嬢とも仲が良いって聞いてるぞ。これでもてないってぶっ殺すぞお前!! 俺なんて毎晩毎晩、朝は鶏の世話、昼から夜はひたすら料理、同い年の友人はみんな結婚していくし、親にはいつも「お嫁さんの顔がみたいわねぇ」とか嫌味言われて、そのあと「でも、来世で期待してるからね」って言われてんだぞ。ほんとうにもてないやつに謝れ、鈍感クソ野郎」



 ジャックの何かに触れてしまったのか、なぜか睨まれながら怒鳴られた。でも、半泣きになっているからこちらもいまいち反撃できないのだ。大体ジャックは勘違いをしている。確かに俺は仲良くしてくれている女性は多いが、別に恋愛感情ではないだろう。俺より女心に詳しいアスが言っていたしね。

 でもさ、友人が困っているんだ、ここは力を貸すべきだろう。それに俺も女性とのエスコートを覚えておいて損はない。未来の彼女のためにね。



「まあ、よくわからないけど、いいよ。力を貸すよ。いくつか日程の候補を決めといてよ。クエストを受けるタイミングを調整するからさ」

「マジか!! ありがとう。じゃあ、その子に日程聞いとくわ。俺にもようやく春が……」



 俺の言葉に満面の笑みを浮かべてジャックがうなずいた。そして、自分で持ってきたであろうハーブティーを飲み始める。



「ふー、緊張するなぁ……アスに後に相談しとかないと」

「はい、アウトー!!」



 チリンチリンと呼び鈴を鳴らしながらジャックが叫んだ。こいつどうしたの、情緒不安定すぎない?



「お前は俺を殺す気か!! 俺が誘ったって言ったら変な薬撃ち込まれそうだし、ハーブティーのハーブ売ってくれなくなっちゃうだろ!!」

「いや、なんでダメなの? てか、ハーブティーはアスのだったのか。どうりで飲んだことあると思った」

「なんでって……え? シオン、マジで言ってんの? お前に彼女ができない理由のナンバーワンだろうが!!」



 なぜだか、叫ぶジャック。まあ、俺がもてないのは俺が悪いからいいんだけどさ、アスの悪口を言われるのはなんか筋違いだよね。



「あのさ、俺の悪口を言うのはいいけど、アスの悪口はやめてくれ。俺が彼女のアドバイスを活かしきれてないだけなんだからさ」

「お前マジか? お前マジか? そのアスクレピオスさんへの異常な信頼感はなんなの? 脳とかよくわからねー薬で洗脳されてない?」

「されてるわけないだろ。ジャックのアスへの評価はなんなの?」



 俺の顔をみるとジャックは気の毒そうな顔をしてなぜかため息をついた。そして、頭を抱えながらぶつぶつと呟いている。



「く……こいつは手遅れだ……違う方向で説得するか……お前もいい年なんだからさ、たまには相談しないでやってみたらどうだ? そっちの方がアスクレピオスさんもお前の成長を喜ぶんじゃないか?」

「確かに……一理あるかも……」


 そうして俺はダブルデートに行くことになったのであった。





今色々か考えているため更新が一週間に一度くらいになってしまいます。申し訳ないです。



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