始まる英雄伝
ある小さな孤島に俺は打ち上げられていた。
目を開けると眩しい太陽の光が襲い掛かる。それと共に波のザブーンと音が聞こえる。
「ここは..................?」
意識が朦朧とする中、俺は立ち上がり周りを確認する。
そこにあったのは真っ白な砂浜とヤシの木のようなものが数本、本当にどこなんだろう。
「マコト様!!!!」
この声は聞き覚えがある声だ。
俺は声のした方に振り向くとルナとフランであった。
しかし二人とも服がボロボロになり体は少し傷だらけであった。
「無事で何よりです」
「心配した」
そう言って俺に抱きつき泣き出す二人。
俺はどうすることも出来ずに棒立ちのままだった。
すると背中が痛み出して俺はその場に座り込む。
「痛え.........」
「マコト様!?大丈夫ですか!」
「また傷口が開いた.......」
傷口が少し血が滲む。
そして俺はHPメーターの横に「剣」アイコンがついているのに気づく。
傷と関係しているかもしれないとステータス表示で確認するとやはりそうだった。
斬撃状態...回復力が足りず傷が塞がらない状態。
これで謎がまたひとつ解けた。
この世界の回復力はHPに直結はせず身体の外傷や再生度に関わっているようだ。
そうなれば話は簡単だ。傲慢の能力を使えばいい。
俺はスキルを発動してその効果は直ぐに発揮された。
剣アイコンは消え俺の体の傷がどんどん塞がっていく。
しかしこんな一瞬で回復したせいか背中が痺れたような感覚に襲われた。
「マコト様、大丈夫......ですか?」
「ああ、傷はもう大丈夫だ」
どんなに回復力があろうが心の傷は癒えることは無かった。
それどころか今にも病みそうだった。
唯一の助けと言えばルナとフランがいることだろう。
そうして時間だけが過ぎていった。
「な、なあ。ルナとフランはこれからどうしたい?」
「えーと.........」
するとルナとフランはお互い目を見合わせて頷き合う。
「私達は.........マコト様と一緒にいたいです」
「そっか.......それでここはどこなんだ?」
「どこか離れた島なのですがあっちの方に村がありました」
「じゃあそこで情報収集だな」
「それが.....」
「何か問題でもあったのか?」
「魔王軍らしきものを見つけました」
「魔王軍か........」
頭の中にハクの笑顔が出てくる。
たまらず涙が零れて俺は俯いてしまう。
「マコト様.........」
「でもハクちゃん、泣いてた」
「え?」
「私達が落ちて波に飲まれる時に一瞬見えた。ハクちゃん地面に這いつくばって泣いてた」
「フランも見えたのか....」
フランはコクリと頷く。
やはりあの光景は夢ではなかったのだ。
しかしアイツが泣く理由がわからなかった。
なんせアイツは魔王軍幹部なのだ。それなのに人間に肩入れするとは到底思えない。
だが考えられる答えはどれも納得のいくものはなかった。
俺はまた二つの選択肢に迷わされる。
ハクを助ける。
ハクを.....討伐する。
そんな極端な選択しか出てこなかった。
俺が悩みに悩んでいるとフランがソワソワと動いていた。
「何をソワソワしてるのフラン?」
「お姉ちゃん、血が欲しくなってきた」
血が欲しい?ああ、そう言えばルナとフランは吸血鬼だったな。でもアニメとかで見るように暴走とかはしないのだな。まあ、あれは地球の人間の想像だもんな。
俺は右腕を突き出しナイフ付きの銃で少し切る。
「そんなマコト様、傷も癒えたばっかりだと言うのに」
「いいんだよ。お前らに死なれては俺も困るしな」
どう言うと二人とも納得したのか俺の血を飲み出す。
すると二人の傷がどんどん癒えていき肌の色も良くなっている。
やっぱり人間の血は吸血鬼には効果があるようだ。
「美味しかったです」
「久しぶりの人間の血はやっぱり美味しい」
「人間の血以外も飲めるのか?」
「はい、動物や魔獣ならいいのですが虫はダメですね」
「そうなのか大変だな。じゃあそろそろ回復も万全だし行くか」
「でも魔王軍が......」
「大丈夫だ俺はもう決めた」
俺は天高く人差し指を立てながら宣言する。
「俺は強欲で傲慢な人間だ。だからハクを奪いに行く」
その瞬間、曇っていた心が一気に晴れた気がした。
そして俺は考えるのはやめた。
なぜなら俺は強欲と傲慢の能力を神様から貰ったくらいだしな。なら欲しいモノは奪えばいい。
それで全て埋まった。
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その頃村では.....。
「くそ!あの魔王軍め!」
「一体何時になったら勇者は来るんだ!」
「これじゃあ俺達まで餓死しちまう」
怒りに満ちた村の連中が村長の元に集まっていた。
しかし戦う気力はなくそれどころか死を選ぶ者もいた。
「だめだ、今は耐えるんじゃ。でなければどの道死ぬだけじゃ」
「しかし王都に助けを求めたが一行に勇者は現れない。それどころか騎士まで来ないじゃないか!」
「そうだそうだ!このまま死ぬなら戦ってやる!」
「それだけはいかん!!!」
村長の怒鳴り声が部屋中に鳴り響く。
村の人々は一旦静まり今度は苦悩に満ちた空気に襲われていた。
誰もが戦うと言っているが村には武器も人もない。そんな状況では確実に皆殺しだ。
そんな時に一人の男が入って来てこう言った。
「大変だ!魔王軍がまた村に向かって来てるらしいぞ!」
「そんなまた金の取り立てか!?」
「どうしたら......」
そして村に魔王軍が続々と入っていく。
馬車の周りには上位種のゴブリンが多数、そして馬車の中には幹部らしき姿が見えた。
俺達はルナとフランに案内され山上から様子を伺っていた。
馬車のドアが開くとそこからは仮面を被りマントに身を包んだ人が出てきた。しかし遠くからでもその覇気は魔王軍幹部だと伝わって来た。だがハクほどではない。
それでも俺は怖気つくことは無い。
再び様子を伺う。
「この村も貧相になったものだ」
「はは、申しわけございません」
「それで村長、今日はなんでここに俺が来たかわかるか?」
「いえ、検討もつきません」
「それはな........」
そう言って魔王軍幹部は持っていた細剣を握ると村長の腕を切り落とす。
「う、腕があああ!!」
「お前らが何やら集まり俺を討伐しようと考えているそうじゃないか」
「そ、そんなはずが。あああああ」
「嘘をつくな!村の女、子どもが素直に答えてくれたぞ?」
すると馬車の後ろからゴブリン達が何かを引っ張り出す。それはジャラジャラと首と手を鎖で縛られ全身が傷だらけになった村の子どもだった。
村の大人達が騒然とする中、村長は片腕が無いまま頭を地面に擦りつけ泣いていた。
「私の監督ミスです。で、ですから死罪は私だけでどうかお許しを!!」
「俺は言ったぞ?一人の罪は村全体の罪だと」
「そ、そんな」
そうして魔王軍幹部は不気味な笑顔を浮かべると持っていた細剣で村長に向かって突き刺す。
しかしその攻撃が村長に届く前に弾かれる。
「誰だ!?」
当然何が起こったかわかるはずがない。
俺が山上からM82A1をぶっぱなしているのだから。
M82A1とは.....
口径12.7mm
銃身長736.7m
使用弾薬12.7×99mm NATO弾
装弾薬数10+1発
作動方式ショートコイル
全長1,447.8mm
重量12,900g
銃口初度853m/s
有効射程2,000m
と言う対物ライフルだ。
しかしアタッチメントを全て付けているのにも関わらず反動だけで肩が吹き飛びそうだ。
まあ、それだけ反動がある分威力は絶大だ。
軽い装甲をしている車や下手をしたら戦車位も穴を開けられそうだ。
流石は男のロマンとも言える対物ライフルだ。
俺は次弾を装填しながら感動していた。
「マコト様、あいつもしかしたら」
「ん?なんだ?」
そして次の瞬間、大きな魔法陣に覆われ一瞬で村の真ん中に転移された。
「貴様か?俺の剣を汚したのは!!!」
あー、完全にキレてますねはい。
「そんな怒んなよ。たかが剣一本だろ?」
「あれは魔王様から頂いた最高級の魔剣だ!お前ら下等生物が汚していいものでは無い!!」
「下等生物....だと?誰に向かって言っている?」
「んな!?」
俺は傲慢の力を発動させステータスが莫大にアップする。
それを見た魔王軍幹部は驚き目を見開いていた。
「どうゆうことだ!ステータスが魔王様以上だと!?」
「そうなのか。じゃあ魔王も大したやつじゃないな」
「な、なんだとこの下等生物が!!!」
「黙れ」
バン!
お馴染みの睡眠弾が命中する。
しかしなんの様子もなくピンピンしていた。
あれ?おっかしいな。確かに命中したんだけど。
「マコト様!あいつやっぱり吸血鬼です。吸血鬼には超再生能力があります」
「なんだとこの吸血鬼の小娘があああ!」
そう言ってまた魔法を放った。
今度は俺ではなくルナがターゲットであった。
「黙れ.......」
放たれた魔法が俺のパンチ一発で消滅した。
「な.....に.....!」
「お前、死にたいようだな?」
そう言って俺はライフルを構えた。
皆さんこんにちはこんばんはどうも永久光です。
今回はたくさんの人の意見を反映させた作品に仕上げてみました。
そのため自分の納得のいくまで悩んでいたため少し投稿が遅れましたが待ってくださってありがとうございます。
そして読んでくださりありがとうございました。




