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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第五章 王都への旅路 ~リゾート都市コルキスタ

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セバスの冒険者ギルドへ


 さて、ひと仕事を終えた俺たちは、セバスの町へとやってきた。


「みんなは先に買い物に行ってていいよ。俺はちょっと冒険者ギルドへ行ってくるから」



 そう、俺は今まで身体が変わってしまうから、冒険者カードを作っていなかったんだよね。これからは、その問題も無くなったことだし、むしろ無いと不便まである。あまりないとはいえ、単独行動するときにギルドカードはとても役に立つ。お金を持ち歩かなくても良いし、魔物の素材なんかの売却も出来る。


 現代日本で言えば、パスポートみたいなもので、国境を越える際にもあるのとないのでは大違いだ。宿屋なども割引が利くしね。というわけで、ほとんどの成人が持っているのがこのギルドカード。持っていないと、訳あり、もしくは犯罪者を疑われかねない。



「では行こうかイソネ」


 ティターニアさんが嬉しそうに腕を組んでくる。まあギルドマスターが付いててくれれば心強いのはたしかなんだけど、せめてみんなと別れてからにしておくれ。視線が痛いんですけど!?。



 冒険者ギルドは、世界中ほとんどの国と地域に支部が置かれていて、神殿と並んで町を形成する中核となっている。どの町も中心に神殿と各種ギルドがあるのが一般的。


 この町の冒険者ギルドもやはり町の中心部にそびえ立っていた……え? なんかデカくない!?


「うむ、懐かしいな。ここへ来るのは一年振りだ。去年のギルマス総会の時以来だな」


 毎年王都へ行かなくちゃならないなんてギルドマスターも大変だよね。っていうか、全国から一斉にギルマスが居なくなって大丈夫なんだろうか? まあサブギルマスがいるからいいのか。


「なんだか砦みたいな建物ですね?」


「うむ、元々ここにあった砦をそのままギルドの建物として使っているからな。闘技場や訓練設備も広いし、いざという時はもちろん砦としても使える。同じギルマスとして羨ましい限りだよ」


 騎士団が常駐していない規模の町では、冒険者ギルドが防衛の要になる。古い砦を再利用するのは珍しいことではないらしい。


「ティターニアさんは、ここのギルドマスターを知っているんですか?」


「ああ、知っているも何も、昔冒険者だったころのパーティメンバーだ。欠点らしい欠点が無い完璧超人みたいな奴で、私を好きすぎることが唯一の欠点だな。本当に鬱陶しい男だ」


 え……それって俺に被害が来そうな予感。大丈夫かな……?




「いらっしゃいませ~! セバスの冒険者ギルドへようこそ。大人二名様でよろしいですか?」


 ……なんかファミレスに来たみたいなノリだね。


「うむ、カップル席へ案内してくれ」


 なにそれ!? ギルドなのにカップル席だと?



「……ティターニアさん、本当にここに座るんですか?」


 案内されたカップル席には大き目の椅子が一つ。うん、知ってる。カップルだからね……。


「ふふっ、どうしたイソネ? 早く座れ」


 言われた通りに座ると、ティターニアさんが膝の上に乗ってきた……しかも向かい合わせ!?


「あ、あの、これじゃあまるで抱き合っているみたいなんですけど?」


「みたいじゃなくて抱き合うための席だからな?」


 言い終わる間もなく、ギュッと抱き着いてくるギルドマスター。はわわ……柔らかくていい匂い……いや、待て、ここは冒険者ギルド、流されてはいけない。もしかしたら、何かの試験なのかもしれないしな。


「ティターニアさん、続きはまた後で、早く手続きしましょうよ!」

「い~や~だ~、イソネとイチャイチャする~」


「……あの、それ誰の真似ですか?」

「ん? クルミだが?」


 くっ、全然似ていない……むしろ普段のティターニアさんの方がやや近いまである。



「とにかく早く用事を済ませてしまいましょう」

「ふふふ、そんなに私とイチャイチャしたいのか? わかった、ギルドの裏にモーテルがある。そこに行こう」


 

「オオ~イ、ティターニアああああああ!!」


 ギルドの奥の方から叫び声が近づいてくる。もしかして?


「ちっ、もう勘付いたか……相変わらず私の匂いに敏感な奴だ。変態め……」


 マジかよ……クルミじゃあるまいし……。



「そろそろ来る頃だと思ってたよ、ティターニア。一年振りだけど、相変わらず……いや、以前にもまして美しい。安心してくれ、結婚のための準備は万端だ。君がギルドマスターを続けたいなら、私がそちらへ行く。もちろん君がこちらへ来てくれても大歓迎だ」


 現れたのは見目麗しい白狼獣人の男。長身に年齢不詳の甘いマスク。いかにも仕事が出来そうな知性を宿した瞳。ただし、今はティターニアさんを前に少々暴走気味のようだけど……。



「久しぶりだなレムス。相変わらず妄想が酷いようだが……悪いが私はもう人妻だぞ?」


「ははは、そうかそうか、人妻に、それはめでたい……ってなんだって!?」


 さすがは完璧超人。ノリツッコミもキレがある。


「嘘だ!! 一体どこのどいつだ、私のティターニアをたぶらかすのは!!」


 ヤバい、めっちゃキレてる。でも仕方ない、すぐにわかることだし。


「初めまして、ティターニアさんの婚約者のイソネです。いつもお世話になっております」


「ほう……貴様が……? そうか、貴様さえ居なくなれば……」


 おおう、何やら物騒なことをつぶやいているんですけど……ちょっと、ティターニアさん、でれでれ照れていないで助けてくださいよ!!



「レムス、一度だけチャンスをやる。お前がイソネに勝てたら婚約を解消してやろう。ただし、もしイソネに負けたら、こちらの言うことを聞いてもらうぞ?」


 ……何言っているんですか!? 聞いてないんですけど!?


「ほほう……イソネとやら、良い度胸だな、この私に喧嘩を売るとは……」


 いいえ、喧嘩を売ったのはティターニアさんですよ? 目を覚まして!!


「イソネ、殺すなよ?」


 えええ、戦うの決定事項? って殺しませんよ! ギルマス殺しちゃったら、犯罪者になってしまうじゃないですか!! ギルドカードを作りに来ただけなんですって!!



 抵抗虚しく、結局戦うことに。



「ぐはあああああああ!? な、なぜだ……!? なぜまるで歯が立たないのです?」


 満身創痍のレムスさん。確かに強い……さすがティターニアさんのパーティメンバーだよ。以前の俺なら負けていたと思うけど、さすがに今は負けない。おそらく気力だけで立っているんだ。これ以上いたぶるような真似は出来ない。一気に意識ごと刈り取らせてもらいますよ。


 最高速で視界から外れ、死角から頸動脈を締める。レムスさんは、わずか数秒で音もなく膝から崩れ落ちていった。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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