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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第四章 王都への旅路 ~ポルトハーフェン 

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新たなる旅へ 出発そして別れ


「それでは、ライオネルさま、お世話になりました」


 邪神との対決が終わってから1週間後、俺たちはライオネルさまの屋敷を出発することになった。


 王都へ向かう定期船はすぐに再開されたのだけれど、特に緊急という訳でもない俺たちが、席を奪ってしまうのは申し訳ないので、乗船率が落ち着くまで、この街をゆっくり観光していたのだ。



「それでは、父上、行ってまいります」

「うむ、元気な子を楽しみにしているぞ」


 当然のように俺たちに同行するライトニング。それからライオネルさま? 新婚旅行に行く訳ではないのですけれど。


「ジルよ、しっかり支えてやってくれ」

「はい、今までお世話になりました。旦那様」


 なぜか、メイドのジルも同行することになった。


「ジル、本当に良いのか?」

「はい、たいぶ大所帯になってまいりましたから、今後はイソネさまの身の回りのお世話をさせて頂きたいのです」


 なにも領主さまのお屋敷を辞めなくてもと言ったのだけど、ジルは頑として聞かなかった。メイドとしては最高の職場なのにね。


 まあ、正直そこまでしてついてきてくれるというのは、嬉しい。手が足りてないのも事実だし、ウルナさんも良い手駒が手に入ったと喜んでいるしね。ははは。



 屋敷を出ると、すでに俺たちの二台の馬車と、四頭の馬竜たちが準備を終えて待っている。


 そして――――――



「キタカゼさん! 氷の翼の皆さん!!」


 そこで待ち構えていたのは、キタカゼさん率いるA級冒険者パーティー『氷の翼』の面々。先日別れてからは、一度も会う機会が無かったけれど、やはり見守ってくれていたんだと感動してしまった。



『イソネさん、いよいよ王都へ出発ですね。我々の任務もここまでです。名残惜しいですが、またお会いできる日を楽しみにしていますよ』


 そういって微笑むキタカゼさんはやはり美しい。仲間たちもさすがに見惚れて声も出ない様子だ。


「はい、色々お世話になりました。カケルくんにもよろしく伝えてください」

『はい、必ず伝えましょう。私が直接、じっくりと時間をかけて!!』


 キタカゼさん、目が血走っていてなんか怖いんだけど、まあいいか。



『おう、イソネ。短い間だったけど楽しかったぜ』

「はい、シュヴァインさんもお元気で」


 握手しようとしたら、思い切り肩を叩かれた。メチャクチャ痛いんですけど!?


『それにしても、ま~た女を増やしたのかよ? まったく本当に主みたい……ぐぼべらっ!?』


 数百メートルほど吹き飛ばされて、ぼろ雑巾のようにバウンドしながら視界から消えるシュヴァインさん。誰にやられたって? そんなの……決まってるじゃないか……ガクブル。


『……まったく、あのクズ豚には学習能力というものが欠落しているのでしょうか……? イソネさんもそう思いませんか?』


「そ、そうですね。ははは……」


 キタカゼさんは綺麗なんだけど、本当に怖いんだよな。さすがカケルくんだよ。このキタカゼさんが、借りてきた猫みたいになってしまうんだから。



『ははっ、最後までお見苦しいところを見せてしまったね』

『……奴の事は気にするな。ただの致命傷だ』


 苦笑いのシュタルクさんと、相変わらずのハルクさん。致命傷だと死んじゃいますけどいいんですか!?



『ええっ!? イソネさん行っちゃうの? やだやだ!!』


 涙目で別れを惜しむハルトさんが小動物のようで可愛い……ヤバい、連れて行きたい。




『それでは皆さま、良い旅を! あ……イソネさん、ちょっとお耳を拝借』


 キタカゼさんの不意打ち気味の耳打ちに心臓が壊れそうになる。うわあ……良い匂い……吐息がかかって……。


『実はですね……』


「ええっ!? それは……本当ですか?」


 にっこりと黙って頷くキタカゼさん。


 もし彼女の言うことが本当なら、こんな嬉しいことはない。いや、本当でないはずもないか。そうか……そうか。ふふふ。思わず笑みが零れる。




「ねえイソネ、さっきキタカゼさんに何を言われたのよ?」

  

 キタカゼさんたちと別れて、港へと向かう馬車の中、リズが気になってしょうがないと御者台へやってくる。


「ふふっ、実はね……」


「それ……本当なの? だったら早くみんなにも話さないと!」

「あ~、そうなんだけど、万一ってことがあるから、ぬか喜びはさせたくないかな……って」


「ん~、確かにそうかもしれないね。わかった。どうせ予定は変わらないんだし、まだ言わないでおくわ」


「ありがとう、リズ」

「……イソネ」



「……港に着いたぞ二人とも」


 甘い雰囲気になりかけたところで、ライトニングが割って入る。


「……仕方ないわね。ライトニングも一緒にどう?」


 リズよ、一緒にどうって何?


「ふふふ、さすがはリズ。ご相伴にあずかろうではないか」


 さすがはライトニング。迷いがない。


「おーい、何やってんだ? もう着いたんじゃ……って何やってんだよ? 俺も混ぜろ!」


 もう駄目だ……レオナさんに見つかったら、あとはもう芋づる式に……。



「ああっ!! イソネさん、ズルいです!!」

「……朝っぱらから何やってんのよ……」


 当然、他のみんなにも見つかってしまう。



「こ、これが……イソネ家の掟……なの?」


 ジル……違うからね? それにイソネは名前だからね? 家名じゃないよ?



「……それで、あんたたち、港の入り口で何やってんの? 入るの? 入らないの?」


 港への入り口で呆れた様子で見守っている衛兵さん。



「貴様、英雄に向かって何という口の利き方だ!!」

「ひ、ひぃっ!? ら、ライトニング様!? も、申し訳ございませんでした~!!」


 いや……ライトニング。悪いの完全に俺たちだからね? 可哀想だから止めてあげて。


    

 何はともあれ、ようやく本来の目的地である王都へ向けて、新たなる旅が始まるのであった。

  

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(作/秋の桜子さま)
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