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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第四章 王都への旅路 ~ポルトハーフェン 

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変態紳士とコスプレショー


「ところでイソネ、その荷物は何かしら?」


 くっ!? リズがコスプレセットに目を付けましたよ!! 駄目だ、これだけは守りぬかないと……せっかく良い雰囲気になったのに、変態認定されたくはない。


 家族に隠し事は無しだって? いいや、親しき仲にも礼儀ありだと俺は思うんだよね!



「な、何でもないよ。カケルくんにもらった服が入っているんだ」


 嘘ではない、やましいことはあるが、決して嘘はついていない。リズから遠ざけるようにトランクを背後に隠す。



「ふーん……英雄さまからもらった服ねえ……レオナ、お願い!」


 目を爬虫類のように細めたリズが非情な命令を下す。我が婚約者ながら恐ろしい子。



「へへへ、任せろ! おらっ、観念しろや、イソネ!」


 野生動物のような俊敏さで、襲いかかってくるレオナさん。とっさにトランクを守ろうとするも、一瞬遅かった。すでにトランクは彼女が掴んで離さない。


 

 抵抗はしたものの、他のメンバーまで参戦してくるともう駄目だ。多勢に無勢。あっけなく奪われてしまった。こんなことなら、ジルに預けておくべきだったよ、とほほ……。 



「へへっ、手こずらせやがって……さあて、英雄がくれた服だ、さぞや……」


 全員がトランクを囲んで、目をキラキラさせている。


 ああ……もう知らない。



―――― ガチャ ――――



 とうとうトランクが開けられて、コスプレセットが白日のもとに晒される。終わった……俺は変態紳士認定されてしまうのか……。



「うわあ……何これ!! 可愛い!!」

「きゃああ!! すごいわ! この生地、一体何でできているのかしら……?」

「それよりも、このレースの作りを見てください! こんなの王宮でも見たことないですよ」


 

 ……え? あれ? 大興奮で盛り上がっている女性陣。どうなってんの?


 ああ……そうか、良く考えたら、この世界の人たちコスプレなんて知らないじゃん! 普通に可愛い服にしか見えないよね……。ビビって損したよ。



「いやああああ!! なにこのエッチな服……イソネったら、私にこれを着せるつもりね」

「ち、ちょっと待て、下着まで揃っているのか……い、イソネ殿はこういうのが好み……」



 いや、駄目だった。安心するのはまだ早かった……。くっ、カケルくん、なぜ見えない仕様にしてくれなかったのか。



 その後、当然のように着せ替えパーティが始まってしまう。俺は反対意見を述べたのだが、耳を傾けてくれるものは一人もいなかった。



『まあ、諦めが肝心だぞ、イソネ』


「ありがとう……ヴォルフ」


 そう、狼一匹を除いては。



 だが、俺だって、ローカルながら英雄と呼ばれる男。この絶体絶命な状況でも活路を見出すことはできる。そうだ、前向きに捉えて、この状況を楽しめばいいんだ。ふふふ。


 良く考えたら、タイプの違う美女、美少女たちが、生コスプレショーをしてくれるんだぞ? 本来なら、大金を払ってでもお願いしたい案件。


 しかも上手く行けば、生着替えまで拝めるかもしれないじゃないか!!


 低空飛行だった俺のテンションが成層圏まで一気に上がる。俺の祭りが今……開幕する。





「ほら、何してるのイソネ?」



 え? なんで? なぜ俺が服を脱がされているんだ? ち、ちょっと待って、嫌ああああ!?


 女性陣に取り囲まれて、抵抗むなしく、あっという間に衣服が剥ぎ取られてゆく。


 めっちゃ恥ずかしい……死にたい。



「うわあ……可愛いよ、イソネ!! お人形さんみたい!!」


 クルミが大喜びしている。ううう……全然嬉しくない。この衣装は、クルミが着た方が絶対可愛いのに……。


 だが、今更止めてとも言えない空気だ。みんな目が血走っていて怖い。一通り終わるまで我慢するしかないよね……。




―――― 3時間後 ――――  



 ……ちょっと待て。なんでこんなに種類があるんだよ? え……あんな小さいトランクに入る訳……ああ、カケルくんって空間魔法とか普通に使ってたもんね……あれか、猫アンドロイド的な便利グッズか……アイテムボックス的なやつ。


 へえ……そりゃすごいや……ハハハ。



―――― さらに2時間後 ――――  


  

 あのう……もう真夜中なんですけど? そろそろ寝ませんか? 割とマジで……。



「ちっ、仕方ねえな。続きは明日またやるぞ。逃げようなんて思わない方がいいぜ? クククッ」


 ……レオナさん、なんでそんなに執念燃やしているんですか!? 第一、それ悪役のセリフですよ? え? また明日もやるの? 嘘でしょ?


 ま、まあいいや。とりあえず、この地獄からは解放されるんだ。明日のことは、明日の俺に頑張ってもらえばいいんだし。



「クルミ、イソネと一緒に寝る~!!」


 うん、クルミは何も悪くない……悪くないんだが、新たな火種に点火してしまったよね……。


 そこから今夜っていうかもう次の日になってるけど、どういう風に寝るかの議論が始まってしまった。


 駄目だ……もう眠い。先にベッドへ行かせてもらおう。

 

 

ふかふかのベッドにダイブする。さすが領主様の一番良い客室だけあって、最高級の品質だとすぐにわかる。横になった瞬間に強烈な睡魔が襲ってくるのも仕方がないよね…………。


 

「ああ!? イソネが寝ちゃった!!」


 いち早く匂いで気付いたクルミがベッドに飛び込む。 


 他のメンバーも負けじと先を争うように次々ベッドに横になってゆく。


「うわあ……ふわっふわ……」


 激しい戦闘もあって、何だかんだ、みんな疲れていたのだ。


 争いらしい争いもなく、全員が寝息を立て始めるまで、さほど時間は必要なかった。



「おやすみなさいませ。クルミ、みなさま……」


 最後にウルナが微笑んで、そっと明かりを消すのであった。


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(作/秋の桜子さま)
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