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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第二章 王都への旅路 ~ネスト

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ギルドマスターのティターニア


 幸いと言って良いのか分からないけど、このタイラーという男、とても用心深く犯罪の証拠を全く残していないみたいだ。


 おかげで皮肉な話ではあるけれど、この姿でも堂々と旅を続けることが出来そうだ。



 それにしてもこの男、定期的に町を変えて獲物を狙う生粋のシリアルキラーだった。偶然とはいえ、この段階で止めることが出来て本当に良かったよ。


 野放しにしていたら、一体今度どれほどの犠牲者が出ていたことか。


 当然記憶の中身は殺人のオンパレード。耐性スキルが無かったら相当キツかったと思う。



 せめてもの救いは、犠牲者は皆幸せの絶頂で殺されていることぐらい。睡眠薬としびれ薬で意識が無い状態だから、きっと殺されたことに気付くことなく絶命している。


 だから何だと言われればそうなんだけど、苦しみながら恐怖に引きつったまま殺される記憶を沢山見てきたせいで、それでも幾分かマシに思えてしまったんだよね。こんなことに慣れたくなんかないんだけどさ。



 とりあえず、今夜はゆっくり寝よう。


 精神の安定には睡眠が一番。気分の悪いことは寝て忘れるのだ。


 明日はやる事が出来てしまったから、正直少しでも休みたい。




 宿へ戻ると、リズとクルミが、夜中だというのに起きて待って居てくれた。


「あら、イソネったら超美形になったのね……これ以上モテて欲しくないんだけど?」


 ちょっと不満そうなリズを抱きしめる。


「ごめんなリズ。いつも心配ばかりかけてさ」

「良いのよ……イソネの心配なら買ってでもしてあげる」


 力いっぱい抱きついてくるリズの髪に顔を埋める。彼女の匂いがして安心するから、すっかり癖になっているんだ。


「イソネ〜、クルミにもそれやって!」


 可愛いクルミのお願いなら断れないな。クルミの髪に顔を埋める。リズとは違う匂いだけど、やはり落ち着く良い匂いがする。



「…………」


「どうしたの? マイナもやって欲しいならおねだりすれば良いじゃない」


 ミラが、その様子をじっと見つめるマイナに肩をまわす。


「ば、馬鹿なことを言うな!? そんなこと思っていない」


「でもマイナ、すっげー羨ましそうに見てたぜ?」

「レオナまで!? もうっ! と、とにかく夜も遅いんだ。交代で警戒するから早く休め!」



 見張りに残るマイナとミザリー以外のメンバーは宿へ入ってゆく。



「あの……マイナはイソネさんが好きなの?」

「は? な、なんだいきなり!?」


 突然の直球ストレートな質問に狼狽えるマイナ。



「ううん……何でもない。ちょっと気になっただけだから……」

「そ、そうか……珍しいな、ミザリーが色恋に興味を持つなんて……」


「ふぇっ!? べ、別にイソネさんに興味がある訳じゃないから!?」


「ふふっ、まあそういう事にしておこうか?」

「だから違うって!? マイナのバカあああ!?」



***



 少し時間は遡り、ノルンの町に黒ずくめの集団が到着していた。



「……どうだ? カスパーの情報はあったか?」



 組織の金を盗んで逃げたカスパーを追跡してきた戦闘員たちだが、ノルンに手掛かりがなければ、すぐにイスタへ向かわなければならない。


「ククッ、ビンゴだ。カスパーはこの町に来ていた」 


 その報告にメンバーたちも笑みを浮かべる。


「それは重畳。それでカスパーはどこへ向かったんだ?」 

「それなんだが……」


「あ? どうした? 歯切れが悪いな?」


「カスパーの野郎、領主に捕まったらしい」


「「「「…………何だと?」」」」


「どうやら罠に嵌められたみたいで、近々処刑されるみたいだな」


「チッ……となると、金の回収は諦めた方が良さそうだな」

「まあ、手間が省けて良かったじゃないか」

「たしかにな。これで次の依頼に向かえるぜ」


「次の依頼って何だっけ?」

「お前な……少しは頭を使え」

 


「次の依頼は、ネスタの冒険者ギルドマスターの暗殺だ……明日の朝出発するぞ」


 黒ずくめの集団は、次の依頼に向けて準備を始めるのだった。



***



「おはようございます、シャロさん!」


「あ、おはようございます、イソネさん、路傍の花の皆さん」


 

 翌朝、俺たちは冒険者ギルドに顔を出していた。至急報告しなければならない事があったからだ。



「昨日話した件なんだけど、ギルドマスターに会えるかな?」


「はい、ギルドマスターもイソネさんたちが来るのを待っていましたから。さあどうぞ」


 シャロさんに案内されてギルドマスターの執務室へ向かう。



「ギルドマスター、シャロです。イソネさんたちがいらっしゃいました」 

「ああ、入ってくれ」



 執務室に入ると、奥の机で書類に目を通している金髪碧眼の美女の姿が嫌にでも目に入る。


挿絵(By みてみん) 

ティターニア(使用メーカー様:五百式立ち絵メーカー)


 ネスタの冒険者ギルドマスターであるティターニアさんは、町では珍しい純血エルフであり、さらには思わず見惚れてしまうような超がつく美女だ。


 一応年齢不詳の謎の美女ってことらしいけど、リズの鑑定によれば、39歳らしい。とはいえ長命を誇るエルフにとっては、人族で言えば、18、9歳ぐらいの肉体年齢となるわけで、美少女と呼んでもそれほど違和感はない。少なくとも見た目だけは。



「ギルドマスター、すいませんお忙しいところ」


「何を言う。君たちにはいくら感謝しても足りないくらいだ。ところで私に急ぎの話があると聞いたが?」


 美女の真剣な眼差しにドキッとする。仕事が出来る年上のお姉さんってなんか良いよね? だからリズ、そんなにつねらないで!?



「はい、緊急性が高いと判断したので。実は、ギルドマスターの暗殺計画があります」


「…………ほう?」


 ギルドマスターが、すっと目を細める。



「依頼者はソウザ。ティターニアさんを暗殺して自らがギルドマスターになるつもりだったのでしょう」


「だが、君たちの活躍でソウザは捕まり、計画は未然に防がれた……訳ではなさそうだな」


 ギルドマスターはうんざりしたように息を吐く。



「はい、すでに報酬も支払われていて、依頼は成立しています」


「……そうか、教えてくれて感謝する。後はこちらで対策を練るよ」



「その事なんですが、俺たちにも協力させてもらえませんか?」


「それは願ってもないが……なぜそこまで? なるほど……私に惚れたか?」


 凛々しい顔からいたずらっぽい笑顔になるギルドマスター。やめて下さい、違うのに好きになっちゃいますから!?


「……違います。暗殺者のメンバーが、昨日お話した人身売買組織の戦闘員なんです。放置出来ませんからね!」


「そうか……違うのか……それは残念だったな」


 いやいやそこに食いつくのおかしいでしょ!? ってそんな淋しそうな顔しないで下さいよ。本気にしちゃいますよ?



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i566029
(作/秋の桜子さま)
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