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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第二章 王都への旅路 ~ネスト

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盗賊団のセザール

 

 ……お腹が空いた……


 良い匂いがする……


 流れ落ちた血液を吸収すると全身が満ち足りたように震える。


 おや? この食べ物に見覚えが……



 …………って危ねえ!? あやうく自分で自分を食べるところだったよ!?


 咄嗟にスカベンジャースライムにチェンジを発動したけど、何とかなったみたいだ。


 スカベンジャースライムは、この世界の掃除屋だ。あらゆるゴミを消化して、無害な水などに変えてしまうため、トイレやごみ捨て場などで飼われていることが多い。


 それにしても、スライムだと感覚が違い過ぎて動くのも一苦労だ。


 何だか世界が揺れているし、金魚鉢の中から覗いてるみたいで慣れない。



 さてと……まずはここから出ないといけないけど、正直ちょっと登れる気がしない。


 朝まで誰かが覗き込むのを待ってみても良いけど、あまり戻りが遅いと心配させてしまうからね。


 とりあえずスカベンジャースライムの記憶にしたがって、横穴を見つける。


 この先は盗賊団のアジトに繋がっているはずなんだけど……おや? 何だかとても良い匂いがしてきたぞ。


 こ、ここは――――


 天国?…………いいえトイレ穴の中です。

 

 大量の糞尿に歓喜と嫌悪の感情がせめぎ合う。


 食したいが、それをしたら人として終わる気がする。いや、気がするじゃなくて終わる。


 記憶と理性を総動員して食糞の衝動と戦い続けること30分。


 永遠にも感じる時間の中で、別に良いじゃないかという方向に流されつつあったが、排便にやってきた男の声に我に返る。



(た、助かった……)



『チェンジ!!』 



「ふぅ……スッキリした~!」


 トイレを出て記憶を定着させる。



 新しい身体は、盗賊団の頭セザール。


 いきなりボスとはついてるぞ! うん○まみれになって運がついたのかも、なんちゃって……ごめんなさい。


 

 一度部屋に戻り、情報を整理する。


 やはりソウザは盗賊団と繋がっていた。


 そしてソウザも酷いけど、このセザールもクソみたいなヤツだ。


 大分、悪人の記憶を見てきたけれど、トップクラスにクズい。


 でも……何でだろう? 以前に比べて精神的に楽になった気がする。


 慣れたというのも違うような……あ、分かった! スカベンジャースライムのスキル『耐性』のおかげだ。



 『耐性』は、空腹や痛み、寒さ、熱さ、苦しみなど、物理的ダメージだけでなく、精神的なダメージに対する耐性が上がる。


 俺が、スカベンジャースライムの状態で耐えられたのは、この耐性スキルのおかげなのかもしれない。


 俺と入れ替わりでスカベンジャースライムになったボスに合掌。耐性スキル無しとか、死ぬより辛いことってあるんだね!



*** 



 色々考えた結果、手っ取り早く拠点を潰すために、俺は部下たちにガンガン酒を飲ませることにした。


 普段けち臭いボスが、急に酒を振る舞うのだから、最初こそ警戒して遠慮していたけれど、大丈夫だと分かったら、呆れるぐらい遠慮しない。


 どうせ最後なんだから、好きなだけ飲みたまえ。でも残念、しびれ薬&毒薬入りだけどね。



 最初は味でバレるので、普通の酒を振る舞い、味が分からなくなった頃を見計らって、途中から毒入りに切り替えたのだ。


 ちなみに俺も一緒に飲んでいたけれど、セザールのスキル『酒豪』と『耐性』スキルのおかげでほとんど酔ってはいない。

 

 

 全員に毒が回ったのを確認してから、念の為縛り上げる。毒耐性みたいなスキルを持っているヤツがいてもおかしくないからな。


 止めは刺さない。大森林の中で大量に血が流れれば、魔獣や魔物が集まってくるかも知れないからね。


 ふとフォレストウルフたちのことを思い出してしまい胸が痛くなる。まだ彼らのところへ行くわけにはいかないんだ。ごめん。



(これだけは回収しておかないと……)


 外に出て、落とし穴の中から、ベアトリスさんに貰ったミスリル加工の防具を回収する。俺の命を守ってくれた大事なものだからね。



 でも、今回の事は良い経験になった。


 スキルが増えても、知識や記憶が増えても、素の俺はただの村人だ。


 戦闘訓練をした訳でもなく、経験も全く足りていない。要するに、スキルの力だけでやってきただけの素人なのだから。


(マイナさんたちに、色々教わるのも良いかも知れないな……) 


 路傍の花は、バランスの取れた構成で、前衛から後衛まで、みな違う特技を持っている。


 戻ったら相談してみよう。


 

***



「ベアトリスさん!」 


 ネストへ戻り、ベアトリスさんに声をかける。


「む!? その胸当て……イソネ殿か?」

 

「はい、イソネです」


「……使ったんだな……チェンジを……」


 少し悲しそうなベアトリスさんの声に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「はい……ごめんなさい。俺、失敗しちゃって…………え? ベアトリスさん?」


 ギュッと俺を抱きしめるベアトリスさん。


「馬鹿者……だから気をつけろと忠告したではないか……でも……無事で良かった。生きていて良かった。それで良いんだ。失敗は次に必ず活かせるのだから」


「ベアトリスさん……ありがとうございました。あの防具のおかげで死なずに済んだんですよ……」

「そうか……って何だと? あれほど無理をするなと…………ま、まあ良い、それで状況は?」



 その後、仲間全員で盗賊団のアジトへ向かい、恒例の宝探しタイム。



「リズ〜、奴らしこたま貯め込んでましたぜ」

「ふふふ、そうか。よしクルミ、根こそぎ馬車に積み込むのだ!!」


 リズとクルミもノリノリで楽しそうだ。


「しっかし、正義の味方って儲かるんだな! よし、野郎ども、さっさと運び出せ!」 


「誰が野郎どもよ? 可憐な乙女をつかまえて」

「ほら、レオナも無駄口叩かないで手伝え!」

「ふふふ、あと10分でこのアジトは灰となる! ククク……悪は滅びなさい」

 

 アジトを灰にする前に、必要な証拠は全て回収してあるから大丈夫。


 ……どうでもいいけど、また馬車と荷物が増えてしまったな。


 燃え盛るアジトを眺めながら、次の敵との対決に向けて、気を引き締めるイソネ。




 次はお前の番だ……待ってろよ、ソウザ!!



********************************

【 22話終了時点での主人公 】


【名 前】 シグマ → スカベンジャースライム → セザール 

【種 族】 熊獣人族 → 魔物 → 人族

【年 齢】 28 → 7 → 39

【身 分】 護衛 → 掃除屋 → 盗賊団頭

【職 業】 護衛 → 掃除屋 → 盗賊


【スキル】 チェンジ 総合剣術 夜目 身体強化 御者 統率 強脚 狼語 見切り 奴隷契約 カリスマ 索敵 槍術 剛力 斧術 耐性 酒豪

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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