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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第二章 王都への旅路 ~ネスト

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追跡者


「これは……いったいどういうことだ?」


 イソネたちがネストに到着した頃、壊滅した人身売買組織の拠点に現れた黒ずくめの男たち。


 商品が予定日になっても届かないので、調査にやって来た特殊工作員たちだ。


 組織の荒事を得意とするメンバーから構成されている集団で、最低でもC級冒険者並の力を持つと言われている。



「……どう思う?」


 リーダーらしき男が他のメンバーに問いかける。


「ぱっと見たところ、魔物か魔獣の群れに襲われたってところじゃないか?」


「最近、魔物の異常な出現が相次いで報告されているからな……」


「ちっ、それじゃあ商品も喰われちまったのかよ……ツイてねえな」


「あ? じゃあカスパーも殺られちまったって言うのか? この辺の魔獣ごときに?」



「いや……それは無いだろう。仮に数が多くて勝てないとしても、奴なら自分の身を守ることぐらい出来るはずだ」


 黙って聞いていたリーダーらしき男が、カスパーの死を否定する。


「じゃあ何でカスパーの野郎、戻って来ないんだ?」



「……金だな」


 それまで拠点内を調べていた男が確信したかのように呟く。


「拠点内の金目の物が全て持ち去られている。カスパーの野郎、これ幸いと火事場泥棒してトンズラこいたんだろう……」


 全員が顔を見合わせ頷く。


「ふん……逃げ切れると思ってんのかね?」


 国内は組織の庭だ。おそらく国外へ逃れるつもりだろうと全員が判断する。


「問題は、イスタとノルンのどちらに向かったかだが……」


「逃げるとしたら……ノルンを経由している可能性が高いか? 外れならイスタだ……追うぞ」


 

 黒ずくめの戦闘員集団は、密かにカスパー追跡を開始するのだった。




***




「ふああ〜、よく寝たあ!」


 大きな伸びをしてレオナさんが食堂へ降りてくる。


「おはようございます! レオナさん」


「おっはよう! イソネ、リズ、クルミ、おっ、美味そうな朝飯だな!!」


 席に着くなり、すごい勢いで食べ始めるレオナさん。



「おーい、レオナ、そんなに急がなくても、誰も盗ったりしないぞ?」


 続いて食堂に入ってきたマイナさんも、呆れた様子で席に着く。


「おはよう」

「おはようございます……」

「おはようございます〜イソネさん」


 ベアトリスさん、ミザリーさん、ミラさんもやってきて、これで全員集合だ。


「皆さん、見回りありがとうございました!」


 マイナさんたちは、念の為昨夜から交代で周囲の警戒をしてくれていた。


 ちなみにレオナさんは夜勤だっただけで、別にサボっていた訳ではない。



「いいえ、これも仕事ですから。イソネ殿はゆっくり休めましたか?」


「おかげ様で熟睡出来ました。やはり疲れが結構あったみたいです」 


 昨夜は、宿に着くなり寝てしまったからな……新しい身体も馴染んだし、記憶も定着している。朝食も旨かったし、うん、絶好調かもしれない。


 クルミの匂い感知にも、異常はないそうなので、今日ぐらいは多少は気を緩めてもいいかな。



「それで、今日はどうするのですか?」


 普段の凛とした雰囲気のマイナさんも良いけれど、朝のちょっとほんわかしたマイナさんも可愛い。


「えっと、まずは戦利品を使う分以外売ってしまいましょう。それから冒険者ギルドへ行って入金して、情報収集もしないといけませんね」


「わかりました。それでは朝食を食べたら出発しましょう」



 朝食は厚切りベーコンとナンのようなパンもどきとキノコたっぷりのスープだ。


 前世の記憶が戻ってしまったせいで、朝食にはコーヒーやみそ汁が欲しいところだけど、本来は贅沢過ぎる朝食だ。感謝していただくことにしよう。


 昨晩、食料を提供したお礼に、宿屋の御主人がぜひ泊っていって欲しいと部屋を提供してくれたので、こちらもせめてと食材を提供したんだよね。おかげでとっても豪華な朝食となっている。同じ食材でも、プロが作ると味も全然違う。



 みんなで朝食をとった後は、戦利品を売るべく道具屋へ向かう。



「おおっ! 昨日はありがとうな! 子どもたちも無事見つかったし、楽しいバーベキューだったよ」


 小さい町なので、基本的にみな顔見知りだ。道具屋のおじさんも、喜んで歓迎してくれる。


「俺たちも楽しかったです。それで、少し荷物を売りたいんですが、見ていただいても?」


「そいつは有りがたい! 最近、商品の入荷が不安定で遅れがちなんだ。早速みせてもらえるかい?」


 道具屋のおじさんによると、最近商品の入荷が止まっていて、困っていたらしい。こちらとしても、役に立てるなら願ったり叶ったりだからね。



「いやあ、本当は全部買い取りたいんだけど、手持ちがないからすまないね。買い取り価格には色を付けておいたから」


 不足していた品だけではなく、普段なかなか入荷しないものまであったので、おじさんはほくほく顔で買い取りしてくれた。全部で金貨300枚。日本円だと3千万か……おじさん、そんなに使って大丈夫かな?


 まだまだ沢山あるけれど、残りはもっと大きな街で売ればいいだろう。


 冒険者ギルドへ行く途中に、食料品店にも寄って、金貨10枚分買い取ってもらった。最近、金銭感覚が麻痺してきているから気を付けないといけない。



 途中でみんなのおやつは買ったけど、これぐらいは良いよね?




「あ! みなさん、おはようございます!」



 ギルドへ入るなり、シャロさんが俺たちを見つけて駆け寄ってくる。


「いろいろお話したいことがあるので、別室へどうぞ」


 シャロさんに案内されて、2階の特別室に入る。


 防音対策がなされており、秘匿性の高い案件を話し合うための部屋らしい。  




「まずは……妹の件、本当にありがとうございました」


 深く頭を下げるシャロさん。


 彼女には、すでにマイナさんから事情を説明してあるので、組織のことも知っている。


 巻き込んでしまう形になってしまうけれど、妹さんが関わっている以上、知らないのはかえって危険だと判断した。救出者の支援に関しては、喜んで協力してくれたので、本当に助かったよ。 


 この国において、これだけ大規模な犯罪組織が存在している以上、誰が敵か味方か本当にわからない。


 例えばこのギルドのギルドマスターや、領主が組織と関わっていない保証はないのだから。


 幸い、俺たちにはクルミがいるので、悪意をもった人間や、悪人は匂いですぐに分かるし、リズの鑑定もある。


 クルミには、もしそういう人間がいたら、俺たちだけにわかるサインを送るようにあらかじめ決めてあるので、今後も細心の注意を払っていこうと思っている。




「実は、折り入ってイソネさんたちに相談したい件があるのですが……」


 シャロさんの雰囲気が真剣なものに変わる。


 厄介事にならないといいのだけれど……。


 俺たちは顔を見合わせ頷くと、シャロさんの話を聞き始めるのだった。

 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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