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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第二章 王都への旅路 ~ネスト

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中年小太り幹部のコロンバス


 どうやらケビンは拠点の周りの状況を確認するために外に出てきたらしい。


 下っ端ではあるが、索敵という有用なスキルを持っているので、組織に重宝されているのだろう。



 実際、このスキルはすごい。


 レーダーのように、周囲の生物の動きや大きさ、数が分かるのだ。


 もう少しこのスキルの索敵範囲が広かったら、俺たちも見つかっていたかと思うと正直ゾッとする。


 そして、ケビンには、今日連れて来られたグループの記憶もしっかりと残っていた。


 大人3人、子ども5人。人数も合致するし間違いないだろう。


 とりあえず、全員無事だったことに安堵する。


 実のところ、魔物に襲われた可能性も捨て切れなかったのだから。



 予定通り周囲を歩きながらケビンの記憶をゆっくりと確認してゆく。


 チェンジで入れ替わったばかりだと、ビデオ映像を見ているようで、記憶がしっかり定着していないのだ。


 大分慣れてはきたけれど、他人の記憶を受け入れるのが正直一番きつい。


 記憶は感情と結びついているから、異なる価値観をもつ人間の記憶というのは異物でしかなく、毒物のように俺の心を蝕んでゆく。


 スキルに回数制限はなかったけれど、多分そう多くは使えないだろうな。




 拠点内部の造りや構成員の数、囚われた人々の情報を吟味しながら次の行動を考えてゆく。


 幸いな事に、商品を出荷するための定期便は2日後まで無い。


 つまり、前回のカスパーのように、外部から人がやって来る可能性は限り無く低いのだ。


 

 しばらく時間を潰してから拠点に戻る。


「おう、ケビン、サボってなかっただろうな?」


 ケビンの兄貴分ガストンが俺を見て、早速嫌みを言ってくる。自分は働かない癖に態度だけはでかい嫌な奴だ。


「ヤダなあ兄貴、ちゃんと仕事して来ましたよ。いつも通り異常無しでした」


 ガストンから逃げるように離れると、拠点の奥にある食堂へと向かう。




 当初の計画では拠点のボスになり代わる予定だったけれど、ケビンは、ボスとの接点がまったく無い。


 そもそもからして、ケビンはボスの名前も顔も知らなかった。当然会話の記憶も無い。 


 

 直接ボスへ成り替わるのは難しそうなので、まずは幹部のひとりにターゲットを絞った。


 この時間ならば、幹部連中は決まって食堂で酒を飲んでいるはずだからだ。


 酒で警戒心や判断力も緩んでいるからリスクも下がるし、チェンジのスキルなら幹部の誰かと入れ替わること自体はさほど難しくないだろう。


 問題は入れ替わった後だ。


 

 途中で必要な道具を手に入れてから、食堂の中をそっと覗きこむ。


 予想通り、食堂の奥では幹部連中が酒を飲んでいた。



(よし、覚悟を決めろよ、俺)


 武器を懐に隠し、手には酒瓶をもって幹部たちの席に向かう。


 ケビンの身体能力は低いが、すでに身体強化は発動しているので、不意をつけばやれるだろう。


 他の構成員にも特に不信感を持たれていないようだ。


 それはそうだ。俺は傍から見たらケビンそのものなんだし。バレようがない。




「ん? なんだお前……何の用だ?」


 幹部の一人が俺に気付いたようだ。下っ端だけに名前も覚えられていないらしい。


「どうも、酒の差し入れ持ってきました」


 チンピラスマイルで酒瓶を差しだす。


「おう、気が利くじゃねえか!!!」


 上機嫌に笑う幹部に近づき、隠し持ったナイフで急所を一突きにする。


 剣術スキルによって正確に急所を貫かれた幹部は、声も上げられずにテーブルに突っ伏す。


(……まずはひとり。幹部は残り4人) 


「なんだ? もう潰れたのか? 酒弱すぎだろお前」


 隣の席に座っていた別の幹部の急所も続けざまに突き刺し絶命させる。


(残り3人……なんか暗殺者みたいだな俺。数日前まで、ただの村人だったのに……)


 内心苦笑いを浮かべながらも動きは止めない。


「ん? なんだあ……そういうお前だって寝てるじゃねえか!? ワハハハハ」


 酒が入っているせいかまだ気付かれていないようだ。


 だけど――――


 ここからは派手にやる。この場にいる人間に目撃者として証人になってもらうためだ。


「うおおおおおおおぉ!! 死ねえええええ!!」


 わざと大きな声を出して、そばにいた幹部の心臓に短剣を突き立てた。


「ぐっ、ぐふっ……」


 大量の血が流れ、テーブルの食器は床に落ち破片が飛び散る。


 食堂は大パニックだ。


(……残り2人)


「て、てめえ、何してんだ!?」


 慌てて武器を手に取ろうとするが、食堂に武器など持って来ている訳がない。


 背を向けて逃げようとする幹部の背中に刃を突き立て止めをさす。



「な、何してるんだ、早くこいつを取り押さえろ!!」


 残った幹部がパニック気味に大声で騒ぎたてる。


(残りは1人……もう俺の手元に武器は無い。もちろんわざとだ)



『チェンジ!!』


 ただ一人残った幹部と身体を入れ替える。


 すぐさま幹部の死体に刺さっていた短剣を抜きとり、周りの構成員と押し合いへし合いしているケビンの急所をひと突きする。まさに死人に口なしってね。


 

「すまねえ……殺すべきじゃなかったのかもしれないが、どうしても許せなくてな」


 これだけの事件を起こしたのだ。その場に異を唱えるものなどいなかった。


 これで主要な幹部は消えた。


 新しい身体は、コロンバス。新大陸でも発見しそうな太り気味の中年幹部だ。


 一番弱そうだったから残したんだけど、やはり身体が重いな。


 おまけに酒に酔っているからふらふらする。


 

 だけど、ようやくボスの詳しい情報が手に入った。

 

 次の標的はボスに決定だ。 



*************************************

【 14話終了時点での主人公 】


【名 前】 ケビン → コロンバス

【種 族】 人族

【年 齢】 19 → 47

【身 分】 チンピラ → 組織幹部

【職 業】 チンピラ → 組織幹部


【スキル】 チェンジ 総合剣術 夜目 身体強化 御者 統率 強脚 狼語 見切り 奴隷契約 カリスマ 索敵 槍術


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i566029
(作/秋の桜子さま)
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