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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第六章 王都への旅路 ~S級冒険者イソネ

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コルキスタ出航~船旅終着の地へ~


「イソネさま〜、どうかご無事にお戻りお待ちしております〜!!」


 出航を見送るために港に集まった大勢の人々。この街にこんなに人が居たんだと思うほどで、コレじゃあ足の踏み場も無いんじゃないの?


 セレブリッチ商会の人たちを始め、ネイビス侯爵家、帝国、スタック、トラキア両王国の別邸関係者、冒険者ギルドの職員たちはまあわかる。


 でも……その他の人たちは何? 



「たくさんお買い上げありがとうございました~!! またのご来店お待ちしております~!!」



 ……なるほど、理解した。そういえばここ数日、ずっと買い物三昧していたっけ。


 ま、まあ、お金は腐るほどあるし、経済を回すのは持つ者の務めだからね。


「リズ……買った物ってどこにあるの?」


 素朴な疑問だ。少なくとも馬車に積める量ではないはず。


「え? ああ、大半はスタック王国の別邸に置いて行くわ。これからはあそこが私たちの家なんだから」


 ああ眩しい笑顔が愛おしい。そうか、あそこは俺の家なんだね。なら絶対に帰ってこないと。



「ところで……シアンさんとマゼンタさんがなんでこの船に乗っているんですか?」


 気付いたら二人が船に乗っていたので驚いた。お仕事は? まさか職場放棄?


「あはは、違いますよ~。一連の事件の報告で王都へ行かなければならなくなりましたからね。アスカ殿にお願いしたら快くOKしてもらえたので、王都までよろしくお願いします、イソネさま」


 悪い笑みを浮かべるシアンさん。ああ、仕事ならしょうがないね。


「……どちらかといえば、寿退職の報告がメインだというのは内緒……」


 ……マゼンタさんっ!? 聞こえているんですがそれは……?



「イソネ、この船は素晴らしいな!! 帝国は海に接していない内陸国だから、ろくな船が無いのだ。スタック王国を攻めたのも、カルヴォナ海に面した港が欲しかったからに他ならないのだが……」


 珍しくはしゃいでいるリアン殿下。こうしてみると年相応の美少女にしか見えない。


 でもそうだよな、たしかに世界に覇を唱えるならば、海路を掌握するのは最優先事項だろう。


 どういう形でスタック王国を復興させるにしても、まずはリアン殿下を帝位に就けることが必須条件。でも、そうなると俺が皇配に……うわぁ……間違いなく大変だろうな……。


 うん、今は考えないようにしよう。そうしよう。必殺問題先送り!!



「ねえ、リアンさま、お茶ご一緒しませんか?」


「おおっ、アズライト。それは良い。案内頼む」



 意外なことに、アズライトとリアン殿下は、会ってすぐに仲良くなった。


 アズライトにとっては祖国を滅ぼされた仇敵の皇女なんだけど、本人たちは気にしていないようだ。むしろ似たような境遇ゆえの孤独とか共感意識もあって、すでに十年来の友人のように振舞っている。まあ殺し合いとか始められても困るし良かったよ。


「……殿下はご友人がおられませんでしたから……」


 静かに涙を流すヤミ。うん、悲しくなるから止めてください。



 

 次の目的地は、王領臨海都市トライデン。


 いよいよ長いような短いような船旅も終わりが近づいてきた。


 トライデンは、コーナン王国の海の玄関口で、その重要性から王領直轄地となっている。


 ポルトハーフェンとコルキスタを足したような規模の巨大な臨海都市で、トライデンから王都までは街道と宿場町が整備されているため、常に旅人や荷馬車が行き交う経済の要。


 また王国にとっては、王都防衛の前線都市でもあり、軍事拠点としての側面も備えている。



 思えばずいぶん遠くに来たし仲間も増えた。主に……婚約者が。


 ついこの間までリズと二人きりだったのに……。


 なんでこうなった? ……俺のせいでした。  


 



「え? お父さまたちの情報がわかったの!?」


 目を輝かせるリズ。


「ええ、冒険者ギルドのデータベースにアクセスして、入手した情報だから間違いない」


 こともなげにそんなことをおっしゃるリッカさん。


 ……あの、それは……そんなことして大丈夫なんでしょうか? 


「大丈夫、元々ギルドのシステム作ったのうちのマスターだからね。最初からシステムにリンクしているの。受付嬢のスリーサイズや個人情報まで丸裸よ?」


 マジですか……? 全世界の男が憧れる重要機密じゃないですか……いでででっ!? リズ、刺さないでっ!!


 うう……死ぬかと思ったよ。まあでもリッカさんがヤバいことには変わりないけど。


「心配する必要はない。私に政治的な欲求は一切ないから」


 たしかにリッカさんがその気になれば、今頃影の女王として君臨することも可能だったはず。情報うんぬん関係なくめっちゃ強いし。


 それに……今はそんなことよりも、父さんたちの行方の方が大事だ。



「……記録によると、ゼノンとカインのパーティーは、王都でしばらく滞在したのち、国外へ移動している」


「「国外っ!?」」


 それは想定外だった。てっきり王都へ行けば会えるかもしれないと思っていたのに。


「リッカさん、それで……父さんたちはどこへ?」


 場合によっては、今後の旅の目的地が変わるかもしれない。



「……目的地は、商業国家クリスタリアね」



「「……クリスタリアってどこ?」」


 リッカさんの口から出てきたのは、聞いたことが無い国の名前。いや待て、最近聞いたような気が……?


「ここからはるか西にある国よ。トラキアからでもかなりの距離があるから、この辺では商人以外は知らないかもしれない」


 ……西か、となるとカケルくんのテリトリーだよね。あっ!! 思い出した!! カケルくんのお嫁さんで、リズに似た雰囲気の人がたしかクリスタリア出身だったような? うーん、でもなんでまたそんな遠くまで?


「依頼内容はわからないんですか?」


 リズがたまらずにたずねる。


「残念ながら、そこまでは。ギルドを通した依頼だったらわかるんだけど、そうじゃないみたい。ギルドを利用しているのは、道中のついでに依頼を受けたからね」


 たしかに冒険者として移動するなら依頼を受けながら移動するのが常識だ。


 目的がわからなかったのは残念だけど、少なくとも手掛かりは見つかった。後はカケルくんに頼んだ方が早そうなのが残念というか申し訳ないけど。



 日が沈むまでには王領臨海都市トライデンに到着する。


 トライデンから王都までは、陸路で三日ほど。


 ようやくここまで来たんだな……。何事も無く旅が続けられれば良いんだけど、俺って巻き込まれ体質だからさ……。



 街道は整備され、強力な魔物はもちろん盗賊や山賊の類も出ない安全安心のルートなのだが、なぜか嫌な予感がするイソネであった。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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