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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第六章 王都への旅路 ~S級冒険者イソネ

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マインちゃんと大臣の贈り物


「闇のクロロでございます」

「紅のアカネです」

「色欲のマインです」


 この三人に風のフウカを加えた四名が御庭番衆四天王らしい。うん、なんかカッコいい!! 御館さまとしてのテンションが爆上がり。

 

 だが待ってほしい。ひとりだけサキュバスが混ざっている件。



「マインちゃんはサキュバスなのか?」

 

 ここは聞かざるを得ない。あくまで学術的な興味であって、それ以上でも以下でもない。それにだ、部下のことを把握するのは、御館さまとしての務めであろう。


「……なぜ、ちゃん呼びなのでしょうか?」


 くっ、痛いところを突いてきやがった。スルー出来ないとは、やはりヒトデナシ公爵は最低だな。


「知り合いにマインとマインさんとマインさまがいるのでな。呼び方が被らないようにあえてそう呼ばせてもらった」


 もちろん知り合いにマインなんていないが、咄嗟についた言い訳にしては上出来だろう。ふふふっ。



「……そうですか。はい、おっしゃる通り、私はサキュバスです。ですが、エッチな任務は苦手です」


 何……だと……!? 色欲のサキュバスがエッチが苦手? ギャップが良い、最高だよマインちゃん。 



「でもなんでそんな二つ名……?」


 あくまで学術的な興味であって……以下略。


「あのエロ公爵が勝手に付けたのです。私がサキュバスだからって……」


 悔しそうに涙をにじませるマインちゃん。くっ、許さんぞヒトデナシ公爵っ!!



「もう大丈夫だマインちゃん。君には新しい二つ名を授けよう!!」


「ほ、本当ですかっ!! ありがとうございますっ!! それで、新たな二つ名は?」


 期待に瞳を輝かせるマインちゃん。



「ギャップ萌えのマイン……これで行こう!!」


「……ギャップ萌え? それは一体……?」


「ふふっ、異世界の上級言語だ。異世界人でも、英雄クラスでないと理解できない崇高な概念だと思ってくれれば良い」


「ははっ……そのような素晴らしい二つ名を……畏れ多くて震えてしまいます」


「うむ、その名に恥じぬよう精進せよ!!」


「ありがとうございますっ!! 早速、今宵夜伽に……」


 マインちゃんお前もかっ!? だから間に合ってるって……。




「――――というわけで、みんなにはスタック王国の別邸に行ってもらおうと思っているんだ」


 話はセザールさんとついているから、問題はない。



「かしこまりました。ですが、私はイソネさまに同行させていただきます」

 

 意外なことに、クロムウェルが一緒に同行したいと申し出てきた。たしかに筆頭執事が二人もいらないよね。別邸にはセザールさんがいるのだから。


「わかった。それじゃあ頼むよクロムウェル」


 旅のメンバーも増えたし、そろそろ執事が欲しかったところなんだよね。ふふふ。


「同行をお許しいただきありがとうございます。こちらのことは、弟子たちに任せれば良いでしょう」


 クロムウェルの部下である執事たちが頭を下げる。



「ふふっ、当然我ら御庭番衆は、御館さまについてまいりますゆえ」


 えっ!? 君たちついてくるの? ま、まあたしかに別邸に残してもやることないだろうし……。


 思ってない……もしかしたら夜伽のチャンスが……なんて思ってないからっ!?



******



 使用人たちと別れた後は、みんなのところへ戻って今日のことを説明した。


 ウルナさんのことは、みんな今更? っていう感じで、無反応だったけど、御庭番衆に関しては、執拗なジト目包囲網にさらされた。


 ちょっと待ってくれ、誤解だ、マインちゃんは、サキュバスだけど、エッチは苦手なんだよ?



「ふーん……イソネ、ちょっといい?」


 リズが甘えるようにもたれかかってくる。どうしたんだろう。もしかして相当怒っている?



「……カケルさまの加護、進化しているわよ」


「……は?」


 たしか以前見てもらったときは、『ハーレム帝の友』とかいう加護だったよね? え……進化って何!?


「あのね……加護が『ハーレム貴族』になってる……」


 ……それは、進化……なのか? ま、まあ前はただの友だったから、ランクアップしたと言えなくもない。もしかしてこのまま進化すると、ハーレム王とかになっちゃうの? こ、怖っ!?



「最近おかしいと思ってたんだよね、気付いたらまるでカケルくんになったかのような言動していたりするし……まさか加護が進化した影響だったなんて……」  


「……困ったわね。さすがにこれ以上は増やしたくないわ」


「心配するなリズ。俺がしっかりしていれば済む話なんだからさ。もう増やさない」 


「……」


 くっ、何というジト目なんだ……1%も信じていないと顔に書いてある。


 そんなに俺が信じられないのか? 悲しいよリズ。



「イソネさま、ネイビス侯爵よりお届けモノです」


 セレブリッチ商会のメイドさんが知らせてくれる。ああ、そう言えばそんなことを言ってたな。



「イソネ、ネイビス大臣から何かもらったの?」


「ああ、なんか御礼の品を受け取って欲しいってさ」


「へえ~、大臣気が利くじゃない。美味しい海の幸とかだったら嬉しいんだけど。あ、宝石サンゴとかパールもいいわねっ!!」


 ふふっ、良かった。すっかりご機嫌になったよ。ナイスタイミング!! よっ、海軍大臣!!


 さ~て、箱の中身は何かな?


 届けられた箱はかなりのサイズだ。これは期待できるかもしれない。




「イソネさま~、お受け取りありがとうございます~!!」


「…………」

「…………」


 届いた箱を開けたら、中から大きなリボンを身体に巻いた侯爵令嬢コーラルさんが飛び出してきた。しかも裸にリボンとか、色々危ないんですけど……ていうか、コーラルさんってこんなキャラだっけ?


「……イソネ、どちら様?」

「えっと……ネイビス大臣のご令嬢のコーラルさん」


「ふーん……で、何で裸にリボン巻いてるの?」


 いや……俺が聞きたいんですけど……。


「えへへ……私が贈り物だからなのです。もう私はイソネさまのものですよ」


 なるほどっ!! こりゃあ一本取られたなあ……あはは。


「イソネ、さっきもう増やさないって言ったわよね?」


 イイマシタネ……舌の根も乾かぬうちってこのことなんだね。勉強になるなあ。



「で、でもさ、今更返品とか出来ないし……困ったな」


「……はぁ、仕方ないわね。今回は仕方がないから特別よ。でも困ったわね。もう馬車に乗れないから、もう一台増やさないと……」


 あ……増えたら困るって、そっちのことですか、そうですか……。  



 新たな婚約者も加わり、今日も平常運転のイソネ一行であった。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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