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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第六章 王都への旅路 ~S級冒険者イソネ

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不名誉な二つ名?


「ヒトデナシ公爵、今のうちに降伏したほうがいいよ?」


「無礼だぞ、誰だ貴様は?」


 ……さすがは王族、強い。何かのスキルを使っているみたいだけど……。



「俺はイソネ。S級冒険者です。ヒトデナシ公爵、貴方のやってきたことは全てバレています。証拠も押さえましたので、言い逃れは出来ませんよ?」


「チッ……S級冒険者だと? そんな話知らんな。だが、バレているなら、貴様はここで消えてもらわねばなるまい……死ねっ!!」



 速い……ヒトデナシ公爵の信じられないほどのスピード、普通なら、やられてしまうであろう必殺の一撃。だけど……残念ながら相手が悪かったね。


 見切りを発動して、初撃をかわすと、無防備なボディに死なない程度に拳を叩きこむ。



「グボヘッ!? ば、馬鹿な……!?」


 へえ……これでもまだ喋れるんだ? すごいタフだな……。


 それじゃあ、遠慮なく。


「ち、ちょっと待っ……ぐほっ!?」


 おらおらおらおらおらっ!!


「あばばばばばばばばっ!!」


 ええぇ……まだ意識あるんだ? 


 面倒になってきたので、頸動脈を締めて意識を奪う。



「ふう……これで、一件落着♪ あ……もう一人いたね」


 四つん這いになって逃げようとしていた伯爵の首根っこを掴んで持ち上げる。



「ひ、ひぃっ!? わ、私は悪くないっ!! ヒトデナシ公爵に言われて仕方なく……」


「はいはい、わかったから、言い訳はたっぷり署で聞かせてもらうよ」


「……署?」

 

「……ゴロツキー伯爵を捕らえろっ!!」


「い、嫌だあああああっ!!」


 ゴロツキー伯爵は海賊団に取り押さえられ連行されてゆく。



 主催者であるヒトデナシ公爵、取り巻きのゴロツキー伯爵を始めとした貴族たち、そして違法な取引だと知りながら顧客となっていた貴族や商人たちも全員身柄を拘束して騎士団と海軍に引き渡されることになった。


 人数も多いし、仮にも王族が関わっているこの一連の事件、全容解明には時間がかかるだろうし、最終的に国がどんな判断を下すかはわからないけど、俺にできるのはここまでだ。


 また、商品として、さらわれてきた人々は、事情を聴いたうえで、全員故郷へ送り届けられるそうで、少しだけ安心した。もちろん心の傷は消えないだろうし、家族が殺されているケースもある。俺には、この先の人生に幸せがあることを願うことしか出来ないけれど……。




「イソネ殿、本来ならばもっと早く私が解決せねばならなかった事件だ。君には感謝してもし切れないな……」


 一味は捕らえたものの、実際はここからが本番だ。仕事とはいえ、正直同情いたします。絶対に大変だろうな……。


「そんなことないですよ、ネイビス大臣、だれの責任でもありません。俺が関わったのも、きっと女神さまの導きに過ぎませんよ」


 その点、俺は気楽な冒険者だからね。ふふふ、自由万歳っ!! 面倒なことはお役所に丸投げですよ。


「そうなのかもしれないと、今はそう思うよ。そうだ、イソネ殿、何も出来ないが、せめて御礼をしたい。どうか受け取ってはもらえまいか?」



 うーん、正直自分の都合で関わっただけだし、御礼をもらうのも気が引けるんだけど、向こうとしたら、それじゃあ気が済まないんだろうしな……。


「……分かりました。そこまで言われては断れませんね」


「おおっ!! そうか、そうか、それでは、後ほど、イソネ殿の元へ届けさせるようにしよう。楽しみにしていてくれ」


 え? なんか大げさにならないと良いんだけど……。


 なんだかネイビス大臣の笑顔が気になるんだよね……?



******



「イソネさま、こちらがクロムウェル、ヒトデナシ公爵家別邸の筆頭執事だった男よ。戦闘から家事雑用、礼儀作法、その他なんでも知っている有能超人なんだから」


 調査騎士団のシアンさんに紹介されたのは、ヒトデナシ公爵家を解雇されたという執事のクロムウェルさん。ロマンスグレーの控えめな壮年の男性で、見るからにただ者ではないことがわかる。さすがは公爵家筆頭執事だね。なんでシアンさんが自慢げなのかはわからないけど……?



「はじめまして、イソネです。シアンさんからすでに話を聞いているかと思いますけど、もし良ければ、他の使用人の皆さまも含めて、雇いたいのですが……?」


「……お初にお目にかかります。クロムウェルと申します。正直、こうしてお会いするまでは、迷いがあったのですが、一目見て、決心がつきました。どうかよろしくお願いいたします。この先、どこまでもついてまいります」


 良かった……これで、お屋敷を手に入れても安心だよ。っていうか有能過ぎて、俺なんかが雇ってしまって申し訳ない気分になるよ。


「……ですが、少々心配なことがございます」


「心配なこと? 遠慮しないで何でも言ってください」


 気持ちよく働いてもらうには、どんな小さなことでも気を配らないとね。


「実は、当家のメイドは、全員結婚しておりまして、平均年齢も高めなのです……」


「へ? それが何か問題でも?」


「いえ、『女殺しのイソネ』さまにお仕えするにはやはり若くて未婚のメイドの方が良いのかと……」



 ……その不名誉な二つ名、誰が広めたんだろう……まあ、事実とはかけ離れてはいても、客観的に否定できないのが悲しいよね。


「あははははははっ、何回聞いても笑えるね、イソネさまっ!!」


 ……シアンさん、笑いすぎなんですけどっ!?


「いやいや、大丈夫ですからっ!! 俺、別に女好きとかじゃないですからっ!!」


「それを聞いて安心いたしました。それで、我らはどうすれば良いでしょうか?」


「実は、ちょっとした当てがあってね。明日の夜、俺が宿泊しているセレブリッチ商会の宿に来てくれると助かります」


 

 実は、屋敷に関しては、スタック王国、つまりアズライトの別荘があるはずなので、そこを拠点にしようかと思っている。


 現状、どうなっているかわからないので、明日確認に向かうつもりなんだけどね。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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