表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第六章 王都への旅路 ~S級冒険者イソネ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/144

海軍大臣ネイビス


「はっ……わ、私は一体……!?」


 長い間、悪い夢を見ていたようで記憶が曖昧だ。


「……大丈夫ですか、ネイビス大臣?」


「君は……誰だったかな? すまない、記憶が曖昧なんだ……」 


 白に近いグレーの髪はこの辺りでは珍しく、令嬢や女騎士たちがうるさく騒ぎ出すであろう整った容姿。一度見れば忘れるはずは無いのだが……?


「初めまして。俺はイソネ、S級冒険者です。貴方は、隷属の首飾りによって、操られていたのですよ」


 なっ!? れ、隷属の首飾り……だとっ!?


「それで記憶が曖昧に? だがいつの間に……」


「帝国のオンナズキー侯爵が犯人です。心当たりは?」


「オンナズキー侯爵っ!? くっ、あの時か……私としたことが……なんたる不覚……」


 まさかそんなものが実在していることも驚きだが、堂々と私の屋敷で仕掛けてくるとは……いや、仮想敵国である帝国に対して認識が甘かったのだ。はっ!? そうだ、コーラル!?


「イソネ殿、すまない、娘のコーラルを知らないか? よりにも寄って、あのクソ野郎へ嫁に出すことに――――」


 だんだん記憶が戻ってきた。うぅ……私は何ということを……。


「ご心配なく、俺に依頼してきたのは、そのコーラル嬢ですからね。帝国の計画と海賊団は完全に潰しましたから、もう大丈夫です」


「は? 海賊団を潰した!?」


 ここには悪名高い七武幹のうち、四名が集まっていたはずだ。ん? 待てよ……イソネ? 何処かで聞いたはず――――あ、クラーケン殺しの英雄かっ!!


「もしかして、君がクラーケンを倒したという、あの『女殺しのイソネ』なのか?」


「……そんな不名誉な二つ名は知りませんが、クラーケンを倒したのは確かに俺です」


 なるほど……ふざけた男だと勝手に思っていたが、噂はあてにはならないものだな。モテるのは間違いなさそうだが。 


 イソネ殿のおかげで、危機的状況はひとまず脱したようだが、それでは済むまい。



「イソネ殿、私はこれから王都へ向かい、事の顛末を報告しなければならない。操られていたとはいえ、国を失う一歩手前であったのだ。責任をとらなければ示しがつかない」


 おそらくは死罪であろうが、それもやむなし。


「その必要はありません。ネイビス大臣は、俺に秘密裏に依頼をして、帝国の陰謀を見事に打ち砕いた。これまでの行動は敵を欺く為の演技。それが真相ですからね!」


 いたずらっぽくウインクするイソネ殿。ありがたい提案だが、いくらなんでもそれでは……


「大丈夫ですよ、幸い実害は出ていませんし、証拠もバッチリ。真相を知るものは俺の仲間とコーラル嬢だけです。それに、貴方が失脚することが、帝国の狙いなのですから、国を思うなら、この程度呑み込んで下さい」


「ぐっ、たしかに……」


「ただし、たっぷり協力してもらいますからね? とりあえずは、今夜の晩餐会をしっかり開催お願いします」


「? それは構わないが、何か意味があるのか?」


 元々開催予定だった晩餐会だから、協力と言われてもな?


「ああ、晩餐会は、仲間が楽しみにしているからですよ。協力していただきたいのは、その背後で行われている闇取引の方です」


「……なるほど、しかし、裏取引は海賊団が仕切っているのではないのか?」


 さきほど海賊団を潰したと言っていたようだが……。


「いいえ、裏取引を仕切っているのは、ヒトデナシ公爵家です。海賊団は、商品の提供をしているだけですね。まあ、今回に限っては、内戦計画のために結集していたわけですが……」


 なんと……まさかあのヒトデナシ公爵家が……!? 道理でこれまで尻尾がつかめなかった訳だ……。


「むむっ……だが、イソネ殿、さすがに公爵家の敷地内には、理由なく踏み込むことは難しいぞ」


「そこはご心配なく、証拠ならここに。それに、お忘れかもしれませんが、俺はS級冒険者ですよ?」



 手渡された証拠の数々は、嫌疑を証明するのに十分過ぎるものだ。これで、今夜現場を押さえれば、さすがに言い逃れは出来まい。それに……S級冒険者には貴族特権は通用しないからな。



 しかしイソネ殿はすさまじいものよな。結局、我が侯爵家の危機を救ったのも彼、帝国の謀略と海賊団を未然に潰したのも彼だ。そして今夜、このコルキスタの長年の懸案であった闇取引も潰そうとしている。


 これが本物の英雄と言うものか。


 大いなる力を持つものが英雄なのではない。正しき力の使い方を知り、国の命運すら変える者こそ、真の英雄なり……だな。



「海賊団には、予定どおり闇取引の警備を担当させますので、そちらも予定どおり晩餐会を開催してください。俺の目的は、黒幕であるヒトデナシ公爵と、その顧客の両方を潰すことです」


 ははは……もう何も言うまい。きっと彼は有言実行で成し遂げるだろう。何も心配はない。後は私がやるべきことをしっかりやらねばな。


 今夜は忙しくなりそうだ。牢屋の数を臨時で増やしておかねばなるまいて。


 



「お父さまっ!! もう大丈夫なのですかっ!!」


 イソネ殿が帰った後、コーラルが部屋に飛び込んできた。娘にはひどい仕打ちをしてしまったな。



「……コーラル、すまなかった。操られていたとはいえ、お前にはひどいことを……」


「良いのです。私はお父さまが元通りになってくれさえすれば……」


 この子には、母が早逝してからというもの、ずっと淋しい思いをさせてしまった。だからこそ人一倍幸せになってもらいたいのだよ。



「早速で悪いが、お前にぴったりの婿候補を見つけたのだが……」


「やっと縁談が流れたと思ったら、すぐにそれですか? 私は……」


「そうか、イソネ殿なら……と思ったのだが、お前にはまだ早かったな……って、うわっ!?」


「お父さまっ!! その話、ぜひ、いいえ、絶対に進めてくださいね? もし失敗したら、二度と口を利いてあげませんからっ!!」



 下手な口笛を吹きながら、スキップで部屋を出てゆくコーラル。


 やれやれ……私から提案したとはいえ、これは厄介なミッションが追加されてしまったのかもしれないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ