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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第六章 王都への旅路 ~S級冒険者イソネ

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ゲルマニアの暗黒皇子


「……それで? 作戦の進捗はどうなっている?」


「はっ、一部報告が遅れているグループがありますが、影響はございません。殿下もたまには晩餐会でおくつろぎになってはいかがでしょう」


「……そうか。くれぐれも気を抜くないように。失敗は許されないのだから」


「は、はっ、重々承知しております……では、リアン殿下、のちほど」




「……ようやく兄たちに反撃できる材料が揃いつつあるな……」


 副官のギースの報告では、作戦は計画通り順調に進んでいる。


 帝位争いはますます激しくなってきた。元々後ろ盾が弱く、三人の兄がいる時点で非常に不利ではあるが、完全実力主義の帝国法のおかげで、私にもまだ挽回のチャンスはある。


 すでに兄たちは、周辺の小国を落としていい気になっているが、あんなものは物量差でゴリ押ししただけのもので、戦略も何もあったものではない。味方の被害も大きかったし、何より、相手国の中枢を破壊してしまっては、その後の復興と統治に致命的な障害を抱えることになる。


 そんなこともわからない兄たちが帝位に就いたら、帝国民たちは長く苦しむことになる。何としても阻止しなくては。


 帝国の次なる大目標は、地域経済大国である、コーナン王国の攻略だ。


 兄たちは、相変わらずの脳筋ぶりで、積極開戦を主張しているが、まともにぶつかっては、いかな帝国といえども、必勝とはいかない。コーナン王国は強力な海軍を持ち、貿易の要衝としても交易港を多数有している。陸戦だけで圧倒出来たこれまでとは違うのだ。



 だが、私のクーデター計画ならば帝国の兵を消耗することなく、コーナン王国内部勢力によって、親帝国国家へと移行させることができる。上手く行けば、コーナン王国の兵力と帝国を凌駕する莫大な経済力を無傷で我が手札へと変えられるというものだ。


 兄たちは実現不可能と、一笑に付したが、父である皇帝陛下は、面白そうだと、私に作戦の責任者としての全権を与えてくれた。

 

 戦争は出来ることなら回避した方が良いに決まっている。これは決して感情的なものではない。国家経営として、長い目で見ても有益なのだ。



******



 リアン殿下……恐ろしいお方だ。


 最初、対コーナン王国クーデター作戦を聞いた時、そんなことが出来るわけないと誰もが思った。


 そう……ただひとり皇帝陛下をのぞいて。



 作戦は綿密に計画され、実際、本当に無血開城が実現できた可能性は高い。実行責任者として携わった私にはわかる。そのまま実行されていたらの話だが。



 ですが、残念でしたな。私が第一皇子のスパイでなければ、貴方の目論見は成功していたことでしょう。


 成功されては困るのですよ。そのために長年我々は工作を続けて来たのですからね。


 それに、我々の重要な収益源である海賊事業の本質に、殿下は気付かれておられるようだ。やはり消えてもらわなければ実に厄介なことになる。恨むなら、その優秀な頭脳を恨むのですな。




「ギース殿、まさか信頼する副官に裏切られるとは、リアン殿下も浮かばれませんな……」


「……ふふ、オンナズキー侯爵、貴殿こそ、コーナン王国の秘宝と名高いネイビス侯爵令嬢を側室として迎えるそうではありませんか。まったく羨ましいことで」


 私が言える筋合いではないが、本当のクズだな。貴重な隷属の首輪をまさか女を手に入れるために使うとは……。まあ、味方としては利用価値の高いクズだからな。



 とはいえ、今夜の晩餐会で、その役目も終わる。殿下もろともお前も始末するように言われているとも知らずに……せいぜい最後の晩餐を楽しむことだなオンナズキー侯爵。



 それにしても本当に恐ろしいのは、第一皇子殿下だな。利用できるモノは、敵味方なく利用し、用が済めば、肉親だろうが容赦なく切り捨てる。クククッ、だからこそ仕え甲斐があるというもの。せいぜい切り捨てられないように気をつけねば……。



******



『……殿下、ただいま戻りましてございます……』


 影の中から、声が聞こえてくる。


「ヤミ……報告を聞こうか」


『はっ……。殿下の危惧されていた通り、やはりギースは第一皇子派のスパイですね。今夜の晩餐会に参加するオンナズキー侯爵は言うまでもありませんが……』


 やはりそうか……中々しっぽを出さないので泳がせていたが、さすがにこのタイミングでは馬脚を現したか。逆に言えば、もう隠す必要がなくなったとも言えるのだろうが……。



「ヤミ、おそらく連中は、今夜の晩餐会で一気にケリをつけるつもりだろう。こちらも対抗したいところだが、私には手駒が少ない。現状では、優秀な冒険者を雇うしかないか……」


 第一皇子派は、間違いなく広域海賊団を使ってくるだろう。状況次第だが、他国への亡命、もしくは身を隠す必要もあるかもしれない。業腹だが、大人しく殺されてやるつもりはないのでね。

 

『……かしこまりました。早速ギルドに行ってまいります』


「頼んだぞヤミ、報酬に糸目は付けなくとも良い。お前の鑑定眼を信頼している」  


 

 うまく優秀な者が見つかれば良いが……。


 さて、私は最後まで足掻くとするか。もはや作戦は当初の構想から大きく外れてしまっているが、私を甘く見るなよ兄上……いや、暗黒皇子ギリム。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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