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泣き虫お嬢様と呪われた超越者  作者: 覚山覚
第二部 躍動する海龍

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五七話 未明の出立

 日も昇らぬ未明の森。


 この近辺には外灯的なものが存在しないので真っ暗ではあるが、暗闇に目を慣らしてしまえば夜の森を進むことにも支障はない。

 居心地の良かった龍の里ともこれでお別れだ。


「もう帰っちまうのかよ。ビャクもこの村に住めばいいじゃねぇか」

「酒も美味いし温泉もあるしで快適な村ではあるが、俺には名探偵の仕事がある。まだ隠遁生活を送るには早過ぎるな」


 カンジの魅力的な提案を鋼の意思で断った。

 昨晩はカンジと飲み明かした事もあってか別れを惜しんでくれているようだが、その提案に乗るわけにはいかない。


 カリンのおかげでホームページのアクセス数が跳ね上がっているので、そろそろ名探偵としての仕事が増えてくるような気がしているのだ。


 実際のところ、この村を離れがたく思っているのは否定できないところだ。


 なにしろ村人たちの気質が良かった。

 田舎の集落にありがちな『余所者は殺せェッ!』といった排他的な思想はなく、ルカやカンジのようなサッパリとした気質を持つ人間ばかりだったのだ。


 しかも生活面も想定より文明的だった。

 夜間でも発電可能な最新鋭のソーラーパネルを設置しているので普通に電化製品が使えるばかりか、人工衛星を利用した衛星電話まで存在していたほどだ。


 ちなみに海龍家にも当然の如く衛星電話が存在していた。かつてルカに『家に電話なんてあるわけないだろ!』と怒られた記憶があったのでモヤモヤ案件である。……まぁ、ルカだから仕方ないと言えば仕方ない。


「それよりカンジ。この村の居心地が良いのは分かるが、一度くらいは外の世界を見てみるのも悪くないぞ。嫁を探す必要もあるんだろう?」


 街に誘うつもりが村に誘われていたのでカウンターを返しておく。

 カンジは資産家の家に生まれているので働く必要がないのは事実だが、この若さで悠々自適な生活に染まっていては心配だ。


 カンジは自然な流れで結婚出来ると思っているようだが、このままでは中年になってから『もうオレに結婚なんざ無理さ』と言い出すに決まっているのだ。


「ビャクは親父みてぇなこと言うよなぁ……」


 どうやらカンジの父親も、ニートの息子に対して苦言を呈していたようだ。

 しかし……ルカにも『ビャクは親父みたいだな!』と言われた記憶があるが、俺は孤児院で子供の面倒を見ていたから保護者気質が染み付いているのだろうか。

 というか、この村は放任主義の傾向があるので小言を言われるのは余程の事だ。


「じゃあな親父!」

「うむ」


 ルカ父娘の別れなどは淡白なものだ。

 野生児の自由奔放ぶりからしても放任主義で育てられていた事は間違いない。


 見送りに来ている父親などは上等な方で、母親に至っては見送りにすら来ていない。次にいつ会えるのかも分からないのにグッスリである。

 

 まぁしかし、まだ朝も早いので仕方ない面はある。ルカも強引に起こさなければ起きなかっただろうし、幼女なカリンも眠そうにしているのだ。


「んん、なによ……」


 俺の視線を察したのか、ルカに背負われながら眠そうな声を出すカリン。

 もう少し寝ていろという気持ちを込めて頭を撫でると、いつもと違って文句の一つも言わずに目を閉じかけている。


 子供に無理をさせるのは心苦しいが、今回の旅行プランはカリンの希望に沿った形なので温かい目で見守るしかない。帰宅早々に学園というハードスケジュールが待っているとしても不屈の精神で乗り切ってほしい。


「ところでラスは眠くないのか? 俺とカンジの酒盛りに付き合っていたから寝てないだろう。眠たかったらカバンに詰めて運んでやるぞ」

「オレ様は二日三日寝ないくらいでパフォーマンスを落としたりはしねぇぜ」


 とても鳥類とは思えない発言だが、ラスに嘘や強がりを言っている気配は無い。

 この旅行中は俺の肩を定位置にして自由に振る舞っていたので心身ともに充実しているのかも知れない。人目を気にしなくていいという意味でも龍の里を訪れたのは正解だったと言えるだろう。


 もっとも――今回の旅行の主目的である『能力者を見分ける能力への対策』に関しては、特に成果が挙がっていない。


 カリンの安全の為には能力者である事を秘匿する必要性があるが、それをルカの父親に相談しても『秘匿は困難』という事実が改めて分かっただけだ。


 光人教団に居た者は視覚で能力者を判別していたらしいので、最悪はカリンに着ぐるみでも着せれば大丈夫かと思っていたが……事はそれほど単純でもなかった。


 ルカの父親から得た情報によると、対象の声を聞いたり匂いを嗅いだりして超能力者だと判別する者もいる、という話だったのだ。

 これでは超能力の完全秘匿は難しいと判断せざるを得ないだろう。


 ちなみに龍の里にも嗅覚で超能力者を判別する者がいるらしいが、残念ながらタイミング悪く村を離れていたとの事で面会は叶わなかった。

 参考がてらカリンを嗅いでもらいたかったが、こればかりは諦めるしかない。


 結果的に旅行の目的は達成出来たとは言えないが……カリンたちは一様に満足そうなので、村を訪れた甲斐はあったのだろうと思う。


明日も夜に投稿予定。

次回、五八話〔新たなる妹〕

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