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泣き虫お嬢様と呪われた超越者  作者: 覚山覚
第六部 終わりの千道

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百六十話 樹海迷宮

 樹海の中心にある深部と呼ばれる大穴。その最奥部、神王樹の存在する場所にカリンたちが運ばれるという事が分かっていた。


 だからこそ、俺は深部を踏破する必要性があった。理想としては深部に突入される前に捕捉したいところだが、広大な森の中で標的と遭遇するのは極めて難しい――それ故に、相手の目的地に先回りして待ち伏せするという訳だ。


 ここで重要なのはスピード。それでなくとも敵の方が早いスタートを切っているので、後発の俺としては最短のルートを選ばなくてはならなかった。


「……どうなる事かと思ったが、初めてのパラシュートでも何とかなるものだな」


 俺は思わず安堵の息を吐く。森の中にパラシュート降下で突っ込むのは初心者向きではなかったが、幸いにも大きな怪我を負うことなく大幅なショートカットに成功していた。……だがしかし、これは最低ラインに過ぎない。


「カァッ、敵も同じルートだったみたいだな」


 目敏いラスも敵の動きに気付いていた。

 ヘリからパラシュートで降下中、真新しいパラシュートが木に引っ掛かっていたのを視認している。まず間違いなくカリンたちを攫った不埒者の痕跡だろう。


「空路で先行するのが理想だったが仕方ない。こうなれば神王樹までの途上で追いつくまでだ。――ラス、ここから先の道案内は任せたぞ」

「カァッ」


 高層ビルのヘリポートで合流したラス。本来ならラスを荒事に巻き込むわけにはいかないところだが、それでもラスの力に頼らざるを得ない事情があった。


 なにしろ深部は『樹海迷宮』と呼ばれるほど複雑な構造だ。ルカの父親から深部の地図を見せてもらってはいるが、とても一度見ただけで覚え切れる内容ではなかったので、記憶力に優れたラスに道案内を任せざるを得ないのだ。


「……っと、ここが樹海の深部か。まさか単身で突入する事になるとはな」


 樹海に空いた大きな穴。本来の予定では龍の一族や自衛軍と突入するはずだったが、このような事態になってしまっては是非もない。

 ツバキが食糧なども手配してくれたので腹を決めて単身で攻略するまでだ。


 正直に言えば……あの場に居たライゲンにも同行してもらいたいところだったが、ツバキの他の護衛たちが機銃掃射の被害を受けていたので難しい話だった。


 ツバキはお家騒動の直後という不安定な立場であり、この機にツバキを消そうと考える輩が現れても不思議ではない。ツバキの身に何かあったらカリンの帰る場所が無くなってしまうので、ライゲンを護衛から外すわけにはいかなかった。


 それでも俺は現状を悲観していない。

 神王樹側の戦力としては先の『危険察知の能力者』がトップクラスだと確認しているので、あの男が上限という事なら俺だけでも対処出来るはずだろう。


「カァーッ、相棒は一人じゃねぇぜ」

「そうだったな。俺が単身とは失言だった。――では、深部のナビを任せたぞ」


 そして俺たちは深部に足を踏み入れた。

 光の届かない洞窟であっても壁面のコケが光っているので視界は悪くない。ヒカリゴケなどは僅かな光を反射する特性を持つが、光の届かない場所でも明るいので樹海特有のコケなのだろうと思う。光源を持ち運ぶ必要がないので好都合だ。


「……まったく、これは中々の悪路だな」


 深部を疾走しながら思わず悪態を呟く。

 樹海迷宮とは、言うなれば巨大な洞窟だ。当然のように足場はゴツゴツしていて走り辛く、地中深くへと進んでいるので段々と暑くなってきている。嫌がらせのように分岐路も多いので、道順が分からなければ途方に暮れていた事だろう。


「カァッッ、悪路であっても未知の生物と会敵してないだけ上等だろうぜ」

「遭遇したところで基本的には相手をするつもりはないがな。……しかし、こんな場所に神王樹が居るのは良かったのか悪かったのか」


 神王樹がドレインで超能力者を吸収する際には、深部の奥に存在している神王樹本体で吸収する必要があるとは聞いていた。これで神王樹が都心に生えていれば短時間で運ばれていたはずだが、アクセス面に難があるので時間的猶予はある。


 ちなみに……最初に話を聞いた時には意識を失った超能力者を運搬するものと思っていたが、神王樹の『分体』という能力の汎用性を知ってしまえば、超能力者を分体化して自律的に向かわせれば事足りる話だと分かった。


 ただ、今回の場合はそのまま神王樹の元に運搬するものと判明している。

 神王樹がドレインの能力を与えている分体が少ないという事と、今回に限っては時間を掛ければ追手が掛かると判断したからのようだ。


「……それにしても、ルカがカリンを庇ったのは不幸中の幸いだった。この件が片付いたら存分に褒めてやらねばなるまい」

「カァッ、まったくだぜ。ルカの嬢ちゃんが居なけりゃ詰んでたからなあ……」


 カリンたちは箱使いの能力者に囚われているが、神王樹に吸収させる際には箱から一度出さなくてはならないと分かっている。


 これがカリンだけならともかく、ルカも一緒であれば箱から解放された瞬間に抵抗してくれるはずだろう。今回ばかりはルカに頭が上がらないというものだ。


あと二話で本作は完結となります。

明日も夜に投稿予定。

次回、百六一話〔君臨する覇王〕

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