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泣き虫お嬢様と呪われた超越者  作者: 覚山覚
第六部 終わりの千道

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百五八話 刻まれた記憶

 政府関係者との会食場所は天上の地。高層ビルの五十階、貸し切りの展望レストランだ。会食に伴ってビル全体が休館という形で貸し切りになっているが、神桜家当主と政府関係者の会食ともなれば致し方ないところだろう。


 ただ、舞台が大仰でも堅苦しい会食ではない。政府関係者と神桜姉妹だけがテーブルにつくというわけではなく、海龍家の兄妹なども会食に加わっているので、言うなれば小規模な決起集会のような様相だ。……しかし、一部では例外もある。


「――――」


 相変わらず口数が少ない神桜ツバキ。

 ツバキは必要な言葉だけを発する傾向があるが、それは政府関係者との会食においても例外ではなかった。周囲の同席者はツバキの威圧感に呑まれ、平社員が社長と同席しているかのような様相を呈していた。


 明らかにツバキは会食向きの性質ではないと言えるが……そんなツバキが会食を承諾したのは、おそらくカリンの為なのだろうと思う。


 犠牲にしようとしていた子供の儚さを知ってもらう事には意味があるし、政府関係者に顔を売っておけばカリンの未来に役立つかも知れないという事もあるのだ。


「……ちょっとルカ、オマール海老はちゃんと殻を剥いて食べなさいよ」


 そのカリンにも若干の緊張が見られるが、自由奔放なルカの世話を焼いている内に調子を取り戻しつつあるようだ。この調子ならいつものように『ガハハ、海老のお代わりを頼むで!』と言い出すのも時間の問題だろう。


 ちなみにカリンが緊張しているのは姉のプレッシャーだけが原因ではない。

 事前に話を通していたとは言え、カリンは家族の葬儀にも参加していないし、それ以外にもカリンはツバキに後ろめたい感情を抱いていた。


 なにしろ今回の件で『カリンが超能力者』である事が共通認識になった形だ。


 実際には前々から神桜家の幹部はカリンの事を把握していたらしいが、カリンはツバキに超能力の事を話してなかったので勝手に罪悪感を覚えていたのだ。……もっとも、それは俺から言わせれば不必要な罪悪感だ。


 そもそも神桜家は超能力者の家系という話であり、それに関してカリンは知らされてなかったので、超能力の秘匿に関してはお互い様だと言えるのだ。


 まぁしかし、神桜姉妹は不器用でもお互いに悪感情を抱いてはいない。二人の関係は口を挟むまでもないので、俺は俺のやるべき事をやっておくとしよう。


「――なるほど。ここに居るのは全員が『ギフト持ち』なのか。大した数だな」

「はっはっはっ、私のギフトなどは些細なものだ。実際に役立つものではない」


 俺は軍務大臣と交流を深めていた。

 自分のギフトを謙遜しながらも自慢げなのは気になるが、カリンへの悪意は見えないので問題は無い。この様子なら自衛軍が敵に回ることは避けられそうだ。


「しかし話には聞いていたが、まさか『丸薬』のようなものを飲むだけでギフトを得られるとはな。改めて当事者から聞いても信じ難い話だ」


 樹神教団から貰った丸薬を飲むだけで超能力を得られるという事実。他者に超能力を付与するという一事だけでも異常なのに、経口摂取でお手軽に超能力者になれるとは想像を絶している。俺の知る超能力とは別物だと言わざるを得ないだろう。


「そうなると神王樹には恩義があるんじゃないのか? それに神王樹を倒すとギフトを失うという可能性もある。そこのところはどう考えているんだ?」


 俺は遠慮なく核心を突いていく。

 いざという時に心変わりされても困るので、この機会に懸念をぶつけて反応を見なくてはならないのだ。そんな俺の質問には、同席している自衛軍の男が答えた。


「確かにギフトは有用ですが、人類が植物に支配されている現状は健全ではありません。あの海龍の力を借りられるなら、叩ける時に叩いておくべきでしょう」


 この年配の男は特殊部隊の隊長。おそらくは強力なギフト持ち――神王樹から大きな恩恵を受けているはずだが、それでも神王樹を撲滅する事に迷いは無いようだ。これまでは仕方なく現状に甘んじていたという事なのだろう。


「そうかそうか、自衛軍が全面的に協力してくれるのは心強いな。……それにしても、海龍は自衛軍の中でも有名だったのか」 

「そうですね。海龍家の当主には反政府組織の鎮圧に協力していただいた事がありますので、私の世代であれば知らない者は居ないはずです」


 基本的に国家権力に屈しない一族なので意外に思ったが、なんでも神桜家の女帝が自分の護衛を――ルカの母親を反政府組織の鎮圧に貸し出してくれたとの事だ。


 鎮圧作戦では素手で大地を割って建物を陥没させていたらしいので、当時の関係者が海龍を畏怖しているのも無理からぬところだろう。……あの母親は急所を見抜く能力を持っているので大地の急所を突いたものと思われる。


「まさか海龍との合同作戦が実現するとは想像もしていませんでした。これも橋渡し役となってくれた千道さんのお陰です」

「……海龍家は国の協力要請を拒絶していたと聞いたが、それは使者に問題があっただけだろう。真摯に頼めば二つ返事で引き受けてくれたはずだからな」


 俺の立場は『海龍家との橋渡し役』という事になっているが、龍の一族は決して気難しい集団などではない。むしろ限りなく真っ直ぐな気質なので、実直な使者であれば門前払いになる事もなかったはずだろう。


 なんにせよ、自衛軍の協力が取り付けられたとなれば隙はない。作戦決行時には自衛軍の超能力部隊も協力してくれるし、俺とルカの不在時に自衛軍が敵に回らない事も確認出来た。……あとは作戦決行日を、神王樹の終焉日を待つばかりだ。


明日も夜に投稿予定。

次回、百五九話〔動き出した絶対者〕

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