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泣き虫お嬢様と呪われた超越者  作者: 覚山覚
第六部 終わりの千道

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百五五話 願うべき協力

「深部の中は相当に入り組んでると聞いたが、進捗状況はどんな感じなんだ?」


 樹海の深部は『樹海迷宮』と呼ばれるほど複雑な構造になっているという話だ。

 各国の調査団は未知の生物に苦戦しながら迷宮攻略を進めているらしいが、幸いにも龍の一族は生物的障害をクリアしている。現在は樹海迷宮を攻略中だと思われるので、今後の為にも現在の進捗状況を確認しておきたい。


「確かに深部は迷宮と呼べるものであった――が、()()()()()()()()()()()

「……最深部に辿り着いたのか?」


 予想外の答えに、思わず聞き返した。

 龍の一族なら未知の生物を倒せるとは言え、樹海迷宮は広大で複雑な造りだと聞いている。その樹海迷宮を踏破しているとは尋常ではなかった。


「これが深部の地図だ」


 深部踏破の証拠とばかりに手製の地図を出してくれた。びっしりと書き込まれた密度の濃い地図。ゲームに実装したらクソゲー認定されかねない複雑な地図だ。


「本当に複雑な迷宮だな……。これはあんたが自分で描いた地図なのか?」

「いかにも。儂が手掛けたものだ」


 全体的にアバウトな龍の一族が作ったにしては精巧過ぎると思ったが、やはりルカの父親の手によるものだった。この父親は細かい作業が得意そうなので納得だ。


「カァーッ、樹海迷宮の地図とは大したもんだ」

「ふ~ん、悪くない出来ね……」


 子供たちも興味を持ったのか深部の地図を覗き込んできた。

 カリンに至っては上から目線で地図の出来栄えを評価している有様である。……それでもルカの父親が満足げに頷いているのは、周囲に地図を褒める人間が居なかったからなのだろう。龍の一族に地図を見る習慣があるとは思えないのだ。


「それで……迷宮の最奥部にある広い空間、ここに神王樹は存在していたのか?」


 樹神教団の幹部の供述通りなら、迷宮の最奥部に神王樹が存在している。であれば、ルカの父親は神王樹を目の当たりにしたという事になる。

 その質問には肯定の頷きが返ってきた。


「そこには桁外れの巨木があった。おそらく樹海の核となっている木であろうと推測していたが、お主の話を聞く限りでは『神王樹』で相違あるまい」


 深部の最奥部に存在している大木という事で、ルカの父親も『樹海の核』だと見当をつけていたようだ。場所的には地下空間という事になるので植物としては不自然だが、金属を捕食する植物が存在しているくらいなので今更の話だろう。

 しかし、そうなると疑問が残る。


「樹海の核らしき存在を把握しておきながら、その大木を倒さなかったのか?」


 龍の一族の目的は樹海の消滅。

 そんな彼らが怪しい大木を倒していないのは不自然と言わざるを得ない。だからこそ、最初に話を聞いた時には樹海迷宮で手こずっている最中だと考えたのだ。


「倒さなかったのではなく、()()()()()()()()

「龍の一族が、木を倒せなかった……?」


 そこで返ってきたのは意外な答えだった。

 多くの超能力を持つ神王樹が手強いことは予想していたが、それでも龍の一族が総出で掛かって倒せないほどだとは思えなかったのだ。


 しかし……詳しく話を聞いてみると、神王樹の打倒は容易ではないと分かった。


 チェンソーなどの文明の利器を使わずに倒さなくてはならないのは当然として、神王樹は頑健性が高いばかりか強力な自己再生能力まで持っていたとの事だ。


「神王樹にダメージを与えた直後には回復していくのか…………いや、ちょっと待て。ルカの母親の能力ならうってつけではないのか?」


 話の途中でルカの母親の能力を思い出した。海龍家の先代当主を務めていたルカの母親、その能力は『対象の急所を見抜く能力』だったと記憶している。


 大岩であろうとコンクリートであろうと急所を見抜く。その場所を軽く攻撃するだけでターゲットを破壊出来るという超攻撃な能力だ。

 まともな攻撃が通じない相手を倒すには最適な能力と言えるはずだろう。


「ここだって場所は分かってんだけどね。奥深くにあるから手が届かないんだよ」


 俺の疑問に答えたのは当人だ。

 どうやら弱点は判明していても巨大過ぎて急所にまで攻撃が届かないようだ。さぞ歯痒いことだろうと思ったが、意外にもルカの母親に悲壮感は見えなかった。


「なぁに、もう大分慣れてきたからね。今年こそはあいつをブッ倒してやるさ!」


 ポジティブな一族だけあって一度や二度の失敗ではめげないらしい。なんでも龍の一族は毎年の恒例行事として深部の大木に挑んでいるらしく、今年も近い内に深部に潜るつもりだったとの事だ。深部攻略がイベント感覚とは流石と言えよう。


 しかし、それにしても……海龍家の協力を仰げば神王樹の打倒も夢ではないと考えていたが、過去の攻略戦が失敗に終わっているとは想定外だった。


 次回の攻略戦には俺も参加する予定とは言え、龍の一族でも屈指の破壊力を誇る攻撃――カンジの鉄拳でも倒せなかったらしいので不安が残る。もしかすると俺のサイコパラドックスでも仕留め切れないかも知れない。


「俺たちだけでも神王樹を倒せるかも知れないが……だが、今回は是が非でも成功させたい。今年の攻略戦は『国』にも協力してもらうべきだろう」

「それって、国の特殊部隊のこと?」


 カリンが即座に察してくれた。

 国の特殊部隊。これもカンジの父親からの情報だが、国は超能力者の存在を認知しているだけでなく、超能力者を集めた特殊部隊を設立しているとの事だった。


 近年では超能力犯罪もあったので国も秘密裏に動いていたという事なのだろうが、国の特殊部隊に協力してもらえれば足りない最後の一手になるかも知れない。


「でも、特殊部隊って樹神教団と繋がりが――」

「――それは分かっている。たしかに樹神教団を経由して超能力を得た人間が多いらしいが、それでも全ての人間が樹神教団の教義に忠実とは考えられない」


 ネガティブな意見を断ち切って話を進める。

 カリンは『超能力』という恩恵を受けた人間は裏切らないと考えているようだが、俺はそれほど人間の義理堅さを信じていない。


 現状では神王樹に従わざるを得ないから従っているだけであって、高名な龍の一族が協力するとなれば樹海の撲滅に協力してくれる公算はある。


 たとえ自分に超能力を与えてくれた存在であっても、植物に支配されている状態に不満を持っていないはずがないのだ。


「いつまでもカリンに疎開生活をさせるわけにはいかんからな。もし国の協力が得られなくとも、その時には俺たちだけで解決するまでだ」

「っ、もごごっ……」


 まだ何か言いたそうだったカリンの口に草餅を押し込んでおく。過去の攻略戦は失敗に終わったようだが、カリンの身の安全が掛かっているとなれば、龍の一族もこれまで以上の力を発揮してくれるはずだ。俺も全力を尽くすので勝算はある。


 そして可能ならば神桜家の協力も得たい。

 龍の一族との共同作戦を政府に提案するにしても、神桜家から働きかけてもらえれば実現性が高まる。カリンの心情的にも実家が味方なら心強いはずだろう。


 問題は、神桜家の出方が読めない事だ。

 おそらくカリン引き渡しの件で家族会議が開催されるはずだが、神桜家の中枢たちがどのような判断を下すのか全く読めない。


 もしも今回の撲滅計画が失敗してしまったら、現在は共生関係にある神王樹を敵に回すという形になる。そのリスクを恐れてカリンを引き渡すことにするのか、はたまた人道的判断で家族の一員を守ろうとするのか、家族会議に参加しているメンバーの人間性を知らないので判断が難しいところだ。


 家族会議の参加者として面識があるのは神桜ツバキ。今回の件についてはライゲンにメールで伝えているので、ライゲンのプライバシー管理を欠かさないツバキも事態を把握しているはずだが、今のところは何もアクションがない。


 ツバキは感情が読みにくいので行動が読めないが…………いや、ライゲンが惚れる相手が家族を見捨てるはずがないか。龍の一族は人物眼に長けているので大丈夫だ。少なくとも神桜家の全てが敵に回ることは無いはずだろう。


「もうすぐ龍の一族が集結するんだったな? 正確な日程が分からないのは残念だが、その時までに攻略戦の話を詰めさせてもらうぞ」


 全国各地に散っている龍の一族。その面々が毎年恒例の深部攻略戦の為に集結するという話だ。ライブ感を大事にしている一族なので日程は不明だが、それほど長くは掛からないという言葉を信じて待つしかない。


「やっぱ親父の作る草餅は美味いなっ!」


 今回はルカも参加するという事でやる気に満ちている。ルカだけでなくルカの父親も『必ず神王樹を倒すッ!』とばかりに小さく頷いているので、このモチベーションの高さなら神王樹打倒も絵空事ではないはずだろう。


明日も夜に投稿予定。

次回、百五六話〔紫電のライゲン〕

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