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泣き虫お嬢様と呪われた超越者  作者: 覚山覚
第六部 終わりの千道

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百五四話 灯台もと暗し

 カリンに現状説明を終えてからの動きは早い。

 入院中の雨音にしばしの別れを告げ、その翌日には龍の里へと旅立っていた。


 現在は政府で話が止まっている段階だが、遠からず神桜家にカリン引き渡しの要請が舞い込みかねない。その要請に神桜家が従うかどうかはともかく、このままではカリンの安全が脅かされる可能性が高い――だからこそ、龍の里だ。


 龍の一族は正しい心を持っているし、カリンは先代当主であるルカの母親のお気に入りでもある。カリンの安全を確保するには絶好の場所だと言えるだろう。


「――というわけで、しばらく俺たちは海龍家に滞在させてもらうぞ」

「うむ」


 諸々の事情を説明して滞在許可を求めると、ルカの父親は迷うことなく二つ返事で了承した。母親に至ってはロクに説明も聞かずに「もごごっ」とカリンを甘やかしている。どうやらカリンが滞在するという事実だけで満足しているようだ。


「こらこら、カリンの口に草餅を押し込むのは止めるんだ。……まぁなんにせよ、カリンの学園の事もあるから時間を費やすつもりはないがな」


 この幼女に限っては学園を休んでも学力的な支障は無いが、このまま自主休校を続けるわけにはいかない。一応はスマホで連絡を取り合っているとは言え、現状が長引けばユキも寂しがるはずなので早々に片を付けなくてはならないだろう。


 俺が目指すところは神王樹の撲滅。

 樹神教団は再緑化の為にカリンの身柄を求めているが、諸悪の根源さえ撲滅してしまえば全ての問題が解決する。そして、その為の道筋は既に見えていた。


「それにしても、まさか龍の一族が『深部』の探索を進めていたとはな……。カンジの父親から世間話で聞かされた時は耳を疑ったぞ」


 樹海の中心に存在している大穴。その大穴の中が深部と呼ばれる場所であり、俺の撲滅目標である神王樹が存在している場所でもある。


 樹海の深部には手を焼きそうだと考えていたが、龍の一族が深部探索を進めているなら心強い味方になってくれるはずだろう。


 ちなみに、深部の詳細は一般には知られていない。深部の最奥に神王樹――巨大な木が存在している事も樹神教団の幹部から聞くまでは知らなかったほどだ。


 大厄災の原因を探る上で重要な場所である事は明白だが、世界のどの国でも深部の調査には手間取っているのが現状だった。


「カァッッ、深部には()()()()()が存在するってのは本当なのかよ?」


 未知の生物。その存在こそが深部調査を阻害している最大の要因だ。

 謎の生物的にはラスの存在も中々のものだが、しかし樹海の深部に存在すると言われる生物は遥かに常識を外れていた。


「双頭の蛇、三つ首の犬……幻想上の生物のような存在か。深部に足を踏み入れた人間の証言として聞いた事はあるが、その話の真偽には俺も興味があるな」


 なんでも全長十メートルを超える生物も存在していたとの事で、それらの怪物に襲われて各国の調査団は壊滅的な被害を被ったという話だ。

 にわかには信じ難い話なので当事者から実情を聞きたくなるのも当然だろう。


「いかにも。そのいずれも交戦した事がある」


 あっさりと肯定するルカの父親。

 神話に出てくるような生物なので眉唾物の話だったが、それらの生物を目撃したばかりか交戦経験まであったようだ。そしてルカの父親は衝撃的事実を告げる。


「――その座布団。それが双頭の蛇の皮だ」

「そ、そうだったのか……」


 まさに灯台もと暗し。遠い世界の話をしているつもりが、知らない間に未知の生物を尻の下に敷いていた。この蛇革の座布団カバーは激レア品だったのだ。予想外の珍品なのでカリンが「えっっ!?」とお尻を浮かせているのも無理はない。


「このサイズとなると結構な大物だな……。やはり手強い相手だったか?」

「単独で相手取るには骨が折れる相手であろうな。さりとて、村の衆で囲んでしまえば問題にはならぬ。むしろ与しやすい相手だと言えよう」


 なるほど、戦闘一族によるチームプレイか。

 樹海には銃火器を持ち込めないので巨大生物は絶望的な相手だが、肉弾戦を得意とする一族で袋叩きにすれば問題無いという事なのだろう。


「しかし、なぜ樹海の深部などを訪れているんだ? ここの連中の腕が立つのは知っているが、それでも危険と隣り合わせの場所だろう」


 定期的に樹海の深部を訪れているとの話だが、樹海の深部に出向いたところで益があるとは思えない。国の樹海調査に協力しているわけでもないらしいので尚更だ。そんな俺の疑問に、ルカの父親は予想外の答えを返した。


「儂らが深部に赴く理由は、()()()()()()()()


 樹海の撲滅。龍の一族らしからぬ理由だ。

 俺の目的と合致しているので好都合ではあるが、龍の一族は樹海に好意的な感情を持っているイメージがあったので意外な感がある。……深部に出向いている動機も『強敵と戦いたい』『未知の生物を食べたい』などの理由を想像していたのだ。


 だが、不思議に思いながらも思索していると、龍の一族が樹海に悪感情を抱く理由に思い至った。これはおそらく――――『仇討ち』だ。


 ルカの母親の護衛対象だった女帝、その女帝は緑化によって命を落としたと言われている。かつての主従は家族のような間柄だったらしいので、ルカの母親が樹海に悪感情を抱いていても不思議ではない。龍の一族は仲間意識が強いので樹海が一族共通の敵になったという事なのだろう。


「……なるほど。あんたたちも樹海の撲滅に動いていたとはな。今回の件で神王樹打倒の協力を頼むつもりだったから好都合だ」


 龍の一族が樹海を敵視する理由には触れることなく話を進める。それなりに自信がある推測だが、古傷を抉りかねない話題を掘り下げるつもりはないのだ。


明日も夜に投稿予定。

次回、百五五話〔願うべき協力〕

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