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ネカマの吸血鬼が異世界転生しました。  作者: 隣の斎藤さん。
第二章 灰被りの魔女。

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第95話/波(吐)動砲にはご注意を。


ちょっと文体を変えました。


=====


隠れダンジョンの奥へ行くと、花から人の上半身が生えた魔物娘ちゃんがゴブリンに襲われていた!


 

 ゴブリンの襲撃&退治やクイーンちゃんの成長によるぴっちぴち制服事件(アクシデント)があったものの、少しして落ち着いたところでオレ様達はそこら辺の腰掛けられる場所でお互いの状況を話し合う。


 ダンジョン喰らい(イーター)を倒したところを話すと、魔物娘ちゃんは笑いながら手を叩いて喜んでいた。


「あの憎ったらしい白キモイ化け物を倒してくれたとですか。どおりでアビー様はあんなに強かったとですね。こっちもマスターから別れてからは大変だっとですよ」


 魔物娘ちゃんが言うには、植物系の特性でもある株分けという方法でダンジョンコアとクイーンちゃんを切り離し、ダンジョン喰らい(イーター)の目を欺いたのだとか。

 大半の力を失いながらも身を潜めていると、突然ダンジョン喰らい(イーター)がいなくなり、多少の力が戻った時点で姿を現したところ散発的にゴブリンがやってきたのでそれを迎撃していたらしい。

 ただ今日はいつもよりかなり数が多くて苦戦していたらしく、結構危ないところだったようだ。


「それで? マスターはこれからどうするとです? リンクして少しは力を取り戻したとはいえ、また王国を作るにはまだ足りないとですよ?」

「な、なななにを言っているのです! そんな巨大な誤解を与えるような発言は辞めるのです!!」 


 慌てたクイーンちゃんが魔物娘ちゃんの口を塞ごうとするも残念ながら背が足りず、ぴょんぴょん跳ねてる可愛い姿を見せるだけだった。

 確か前にクイーンちゃんの見せてくれた記憶だと、いろんな種族が暮らす国の女王みたいな立場だったんだっけ?

 魔物娘ちゃんもそれを知っているようだ。


「でも実際はどうするとです? どうにかしないと、ダンジョン化は止めれないとですし、今度はダンジョンを求めてゴブリンの代わりに人間がくるとですよ?

 マスターと共有した知識に冒険者はダンジョン大好きとそうあったとです」


 魔物娘ちゃんは魔力を同期しただけでなく知識も共有していたらしい。

 そして魔物娘ちゃんの指摘ももっともであり、町からそう遠くない森の中にダンジョンが出来たとあれば冒険者たちが来ることは間違いない。

 下手をすればダンジョンコア破壊(討伐)待ったなしである。


「そ、それをどうにかしてもらう為にアビゲイルに協力をお願いしたのです……」


 実はノープランだったいうクイーンちゃんが口をとがらせてそっぽを向く。

 うんうんいいんだよそれでも。オレ様に任せたまえ。その前に仕草がちょっと可愛いから頭を撫でさせて。


「も、もう、子供扱いはしないで欲しいのです。そ、それで……なにか考えはないです?」

「え? このまま本格的にダンジョンにしてしまえばいいのでは?」

「そ、それだと冒険者がやってきてダンジョンコアが危なくなるのです!」


 あっけらかんと返したオレ様にいきり立つクイーンちゃんだけど、そう答えたのにはちゃんとした考えがあってのこと。


「だーじょぶじょぶ。国やギルドがダンジョンをどうこうしようっていう状態は、極端に危険だったり無益だけど放置できないって場合がほとんどだったはず。

 だったらその逆をいけば最低でもすぐさまダンジョンの破壊、っていうのはなくなると思うわけよ」


 ギルドで読んだ冊子<はじめての冒険者&ギルド案内>にそんな記載があったのを覚えている。

 要は利益と危険のバランスが大事なわけで。


「た、確かにそれができるなら最悪の事態は避けれるかもです」

「でしょう? それじゃ早いとこそういう風にダンジョンを作り替えて――――」

「あのー、二人とも盛り上がってるところ悪いとですが」


 話に勢いが乗ってきたところで割り込むように片手をあげる魔物娘ちゃん。なんぞや?


「ダンジョンを作り替えるのはいいとですが、肝心の作り替えるのに必要なポイントが足りないとです」

「「ポイント?」」

「ですです」


 そこから魔物娘ちゃんに教えてもらったのは、ダンジョンを拡張したり改造したりする際にはダンジョンポイントなるものが必要なのだとか。

 それはダンジョンに潜ってくる冒険者や魔物等から得られるものだったり、地脈から流れてくる魔力等から得られるものらしいのだが。


「残念ながらダンジョンとしてまだ機能してないうえに、近くに有益な地脈も通ってなさそうなのでポイント自体が手に入らないとです」

「残念。クイーンちゃん、ダンジョン存続の道は閉ざされてしまったようだ」

「うええええっ!? 協力してくれるって言ったのにですー!?」


 肩にポンと手を置いて残念そうにオレ様から告げられたクイーンちゃんが半泣きで声を上げた。


「まあ冗談はさておいて」

「質が悪いのです!?」


 泣いたり驚いたり表情がコロコロ変わって可愛いくて見ていて飽きない。

 もっと見ていたいけど、あんまり弄ると怒りそうなのでここら辺から真面目に話をした方がよさそうだ。


「魔物娘ちゃん……というか名前をつけた方が呼びやすいな。えーっと、ラフレシアっぽい花だから……ラーシアとかどうよ?」

「ラーシア……なかなかいいとです。気に入ったとです」

「……私のネーミングの時より捻ってるです」


 ……クイーンちゃん、そこは気にせずいこう?


「じゃあラーシアってことで。ダンジョンポイントっていうのは、つまり冒険者や地脈の魔力、ひいては魔物とかの亡骸とかから賄えるってことだよね?」


 オレ様の質問にラーシアがこくこくと頷く。

 よしならば問題はほとんど解決しようなもんである。


「それならオレ様の魔力を直接ダンジョンポイントに変換すれば、少しは足しになると思うんだけども?」

「確かにそういう方法もなくはないとですが、人一人の魔力なんて高が知れると思うとですが」


 どことなく渋い反応。でもまあ、オレ様ってレベルカンストのMP寄りの吸血鬼だからそこそこいける自信はあるんだけども。 


「物は試しってことで、ちょっとやってみない?」

「うーん、まあ今は少しでもポイントは欲しいとです。じゃあワタシの手を握って魔力を流してほしいとです」


 ラーシアちゃんから差し出された薄緑色の手を握り、感覚的に下級魔法一回分くらいの魔力を流し込んでみる。


「お、おおおお。こんなに濃くて上質な魔力なんてはじめて……え!? この一回で千ポイント超えたとです!」

「じゃあこの調子でもうちょっと流してみるか。いっくぞー」


 どうやら思った以上に変換率がよかったらしい。これなら割りと早めにダンジョンポイントが溜まるかもしれないという期待を込めて、今度は大魔法二回分くらいの魔力を流し込んでみようか。


「これはまたさっきよりも……え、あれ? ちょっとこの量は……! うぷっ」

「ちょ、なんかラーシアの様子がおかしいです!」


 急にラーシアちゃんが空いてる手で口元を押さえたのを見て、クイーンちゃんが慌てた声を上げる。

 いったいどうしたというのか。


「急にどうし、あ……」


 オレ様も気になって声をかけた瞬間、繋いでいた手に思わずグッと力が入ってそれと一緒に魔力をグッと多めに流し込んでしまった。

 あれ? なんかラーシアちゃんの顔色が赤くなって青ざめて白くなっていくんだけど?


「ラーシアどうしたのです!? 大丈夫なのです!?」

「ちょ、まっ、いま胴体を、揺らされたら、ヤバい、とです……」


 心配したクイーンちゃんがゆっさゆっさとラーシアちゃんの下腹部ともいえる花びらの部分を揺らすのだが、ラーシアちゃんからは虚ろな言葉しか返ってこない。


 おやー? これはもしや。


 ふと過去の飲み会で同じような答えを返してきた同僚のことを思い出し、嫌な予感がしたオレ様は繋いでいた手をそっと離して少し距離をとった。


「ラーシア! ほんとどうしたのです!? さっきのゴブリン達にどっか怪我でもさせられたのです!?」

「いや、ほんと、やめ…………もう、限界…………だとです…………」

「え? 急に無表情になってどうしたので――――」

「おぼあっ! オロロロロロロ!!」


 クイーンちゃんが顔を上げて発した言葉は最後まで届かず、上から降ってきたラーシアの盛大な真っ白なゲロ(シャワー)によってかき消された。

 うん、離れていて正解だったようだ。

 ほどなくしてそれは収まったのだが、残されたのはぐったりと横倒しになったラーシアちゃんと、全身真っ白な液体まみれとなって呆然と佇むクイーンちゃんというシュールな光景。


 …………これは一体どうしたらいいんだろう。


 飲み会でやらかした人を介抱するとかいうレベルを超えてるんだけども……。

 考え込むオレ様だったが、しばらくしてクイーンちゃんが上げた『にゃあああああっ! あおくちゃいいいいいいいっ!!』という悲鳴を聞いて、とりあえず無属性魔法で生み出した水をぶっかけることにしたのだった。




ブックマーク・いいね・感想などをお待ちしておりマッスル(古い)。


======


作者が若い社会人だったころ、飲み会でつぶれた新入社員の女性(20代前半)をおぶっていた男性同僚が「役得だぜ!」とか喜んでいたのだけど、その数秒後に背中におもいっきりゲロを吐かれて言葉にならない悲鳴を上げていたのを思い出しましたまる。



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